表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

第6話『きっとシルクのレース』

 こんばんは。

 今夜も月が大きくて潮風が涼しい、とても素敵な夜ね。

 でも、どうしましょう。

 今夜はとても眠いわ。

 昨日の今日で連続徹夜だなんて。

 でも今日こそ必ずICカードとやらを頂くわ。


 昼間、調査した結果。

 そのICカードとやら結構な人数の職員が持っているらしいの。

 教師でしょう? 書庫係でしょう?

 長く勤めている用務員も持っているらしいわ。


 そのうちの一つを拝借すれば良いだけ。

 想像よりも簡単ですわ。


 それで誰をターゲットにするかだけど、これは用務員の一択ね。

 書庫係は既に帰宅しているし、教師から拝借するのは困難。


 すると用務員の他にいないわけ。

 だから食堂前に集合したのよ、宿舎が近いから。

 それに相手は魔法が使えない一般人。これは良い鴨ね。

 ちょっとお待ちなさい。

 宿舎にはわたくしが向かうから、あなたは先生が来ないかを警戒していて。


 ——。


 ほら御覧なさい!

 これが禁書庫のICカードなのでしょう?

 ……そう、そうなのね。

 わたくしクレジットカードというものを使ったことがないの。

 間違えてしまったわ、ごめんなさい。


 なあに?

 早く返さないと警察沙汰になるですって?

 可笑しいわね。ICカードについて、わたくしなりに古い文献も読み漁ってみたのだけれど、どうやら理解が足りなかったようね。

 カードというのは、とても恐ろしいものだわ。


 なんてことなの!

 こんなにもICカードを手にいれることが大変だったなんて。

 大人は不思議ね。

 ポイントカードにクレジットカード……一体どういうことなのよ?

 極東のイラストカードに熱中する初等部の男子のようだわ。


 わたくしはベストを尽くした。

 次はあなたの出番よ。

 期待しているわ。


 ——。


 ようやく禁書庫に入れるのね。

 あなたが余りにも遅いから、とても待ちわびたわ。

 でも良いの、目的の第一段階はクリアしたのだから。

 あなたも禁書庫から好きな本を借りて行くと良いわ。

 せっかくの機会だから遠慮はしないことね。

 遠慮は時に、人の気分を害するという事を覚えると良いわ。

 では手分けして、十分後に集合よっ!


 ——。


 残念だけれど。

 大陸浮上に関する魔導書は見つからなかったわ。

 沈める方の書物は沢山見つかったけれど、一体こんな魔法をいつ使うのかしら。

 考えた方もだけど、使う方も使う方よね。

 まったく気がしれないわ。

 そして重力に逆らう事が困難だということは理解出来た。


 でも代わりに良い本を見つけたわ。

 この記載された革新的な魔法の数々、期待が持てるわね。

 加えてその内容は、授業で配布される教本が三流ゴシップ誌に思える程の濃密さ。

 そして、この黒い装丁は未知の高分子で出来ている……

 いいえ、適当なことを言ったわ。

 触ったことのない感触だったからつい。

 とてもヌメヌメしているのに、ほら濡れていない。

 それに紙も上質よ。

 20cmくらいの厚さに3万ページって、これ本当に紙なのかしら。


 誰の著作かは明記されていないのだけれども……

 もしかして、このハイスペックが名前なのかしら。

 項目の一つかと思ったわ。可笑しな名前ね。


 御覧なさい、この惑星改変魔法という項目。

 相当な極大魔法だということは術式からも明らかね。

 そして、この記述が重要よ。

「既に存在する物体に加わる力の方向を変えることは、魔力の最も得意とする本質の一つである」と書いてあるわね。


 魔法の基礎さえ習得出来ていれば、この術式を自分の杖に印字するだけで発動できるらしいの。

 にわかに信じられないけれど、コピー機で印刷しても有効らしいわ。

 何故これらの魔法理論が世に知られていないのか。

 これは禁書になるはずよね。

 誰も努力しなくなる一方で、世界は滅茶苦茶になる。

 扱う人間の倫理観が問われるわ。


 なぁに?

 まだわからないの?

 つまり計画を少し変更して、地球の軌道そのものを弄るのよ。

 大陸は持ち上がらないんだから仕方がないじゃない。


 楓さんのショーツだけを空間座標固定して、『その他』を動かす。


 本当に重要なのは、その後よ。

 脱げたショーツにはそのまま宇宙へとご退場いただいて、困っている彼女に手を差し伸べるだけでも良いのかもしれない。

 そう、わたくしは考え始めた。


 だって365日待てば、地球は同じポイントを通過するでしょう?

 その時に回収すれば良いのよ!

 流石はわたくし、もしかしたらアインシュタインの生まれ変わりかしら。


 そして、そのショーツとは一年越しの再会になるわね。

 その頃には既に、わたくしと楓さんの関係は蜜月となっているでしょうけど。

 ふふっ、なんて完璧な作戦かしら!


 だからショーツにかける魔法の種類が肝心なわけ。

 綺麗に切れ込みを入れるのか、それとも両足から透過させるのか。


 それで、その後の保存状態に関わるから。

 まあ一年後のわたくしと楓さんは蜜月関係のはずだから、いつでも新鮮なショーツが手に入るかもしれないわね。

 その場合、切れ込みがあっても構わない。

 でも楓さんの性格が、とても照れ屋だった場合。

 ショーツの贈与を恥じらって、数量を得られないかもしれない。

 その場合、思い出の品として切り込みが無い方がいいわ。


 この拘り、理解できるかしら。

 違いの分かる大人をあなたも目指すと良いわね。

 このわたくしのように。


 さあ、エキサイトしてきたわ!

 禁書を手に入れたお陰で作戦も現実味を帯びてきたし、きっと今夜も眠れないわね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ