表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/12

第4話『きっと猫のシルエット』

 あら、遅かったわね。

 わたくしを待たせるなんて、あなたも良いご身分ね。

 でも良いの、大丈夫よ。

 ホウキ実習のお片付け、ご苦労さま。

 ちょっと意地悪したかっただけよ。


 さて、本題に入るわ。

 昨日の天才的な閃きについて、昨夜ベッドで改めて考察したのだけれど。

 やはりあの作戦には、問題があるわね。


 そうよ。

 やはり楓さんのショーツを消滅させるのは勿体な……

 いいえ、倫理に反していると思うのよ。

 わたくしは道徳観とエコロジーの精神を尊重したいの。

 地球の資源は有限よ。


 地球が埋蔵している金の総量をご存知かしら。

 掘り出した量はオリンピックプールに換算して、およそ3.5杯。

 未だ地中にあるのは、1杯分くらいだと言われているわね。

 金って魔術の素材によく使われるけれど、それよりも電子回路に使用したほうが、わたくしは有用だと思うの。

 だって人種、性別、年齢を問わず、使用できるでしょ?


 楓さんのショーツを消滅させるという行為は、そういった地球上の金をすべて金箔にして、パフェやスープでもかけて食べてしまおうという暴挙と同じだと思うのよ。


 決して楓さんのショーツが惜しいとか、やっぱり手に入れたいとか、そういう事ではないの。

 これは地球環境と未来の子供達に残せる資源の話なのよ、うん。

 流石はわたくし!


 だから空間座標固定魔法、大陸浮上魔法、これに続く第三の魔法を選別しなければならないわ。

 そして、それら問題を一気に、簡単に、あっといまに、お手軽に、解決する方法を思いついたわ。

 大丈夫、絶対に安全だから安心して!

 あなたは何も心配いらない、わたくしに全幅の信頼を預けて付いてきて良いのよ。

 

 今日は書庫に付き合ってもらうわ。

 そこで調べ物をするの。

 そうよ、まずは大陸を浮上させる極大魔法を調べるの。

 加えて、そんなにも高度な魔法が記載されている本ならば、ずり下ろしたショーツを無傷で手に入れる方法だって見つかるはずよ。

 確かに相手の足も上げずに、パンツだけを抜き取るなんて最高難度の知恵の輪のような気もするけれど。


 先人達の誰かは考えついたはずよ。

 例えば、こういう魔法の記載があったら応用して実現できるはず。

 金庫から中身だけを取り出すとか、人間から心臓だけを抜き取るとか。

 この世界は、そういう邪な人間だらけなのだから。


 ふう。

 わたくしは書庫によく来るのだけれど、あなたは初めてかしら。

 中央の白い大木を囲み、立ち並び、積み上がる本棚。

 まるで巨大な電子基板の森にでも迷い込んだみたいでしょう。


 勝手にふらふらして迷わないで頂戴。

 探す方の身にもなって欲しいわ。

 ちょっとここで、お待ちなさい。

 禁書庫から、参考になる本を借りてくるから。


 ————。


 結論から言うと、ダメだったわ。

 あの書庫係、非常勤の新人かしら。

 わたくしのことなんて知らない。

 禁書庫の書物を借りたいなら、学園長から許可証を貰ってから来いだなんて。


 あなたも分かっているでしょう?

 魔法学園の学長なんて役職の人は大抵。

 映画の本編に絡むほど、無駄にアクティブにアドベンチャーして、悪のラスボスよりも強くて、肝心なときにいない。

 そういう存在だってこと。


 まあ良いわ。

 向こうがそういう態度をとるなら、やることは一つよ。

 夜こっそり忍び込むしか無いわね。


『闇に紛れし黒曜の甲虫』

 この魔法を使うわよ。


 なあに? 

 そんなに高難度の魔法が使えるのかですって?


 あなた、わたくしのことをパスタで出来たカカシだとでも思っているのかしら。

 クリームソース以上に甘い考えね。

 いつかディナーの材料にして差し上げます。


 それに、このくらい上位の魔法でなければ夜回りの先生にすぐバレてしまうわ。

 そうなれば、一族の顔に泥を塗ることになる。

 それは嫌だと申し上げたでしょう?


 あなたは、ここでお待ちなさい。

 上位魔法の書庫から、参考になる本を借りてくるから。


 ————。


 結論から言うと、ダメだったわ。

 あの書庫係、やはり非常勤の新人かしら。

 上位魔法の書物を借りたいなら、高等部になってから来いだなんて。


 実力でいえば当然わたくしは高等部でも最高クラスの魔女の卵ですのに。

 年齢が不足しているだけでダメだなんて。


 あまりに不当な扱いを受けた気がするわ。

 大人になって権力を手に入れた暁には、真っ先にあの書庫係をわたくしの椅子係にでも任命しますわ!


 いいえ……

 やはりヤメておくわ。


 あの方は学園のルールに従っただけ、咎める謂れは無いわよね。

 己を行為を顧みるわ。

 人の上に立つ者として自制も出来ないようでは、わたくしはわたくしを肯定できない。


 それに未来のわたくしの側にいて欲しいのは、やはり楓さんなのだから。


 でも楓さんの椅子にならなってあげてもよろしいわ。

 いいえ、是非ともわたくしに座って欲しい。

 ああ、膝に乗せる方ね。

 四つん這いの方じゃ無いわよ?


 楓さんのお尻の感触を味わえるVIP特等席ともいえるわね。

 特に太ももは撫でがいがありそうね。


 ふふっ如何かしら……楓さん、わたくしの座り心地は?

 ふふふっ、また楽しみが一つ増えたわ。


 なあに?

 え?

 これって特殊性癖なのかしら。

 いいえ!

 あの娘の為なら椅子になっても良い。

 これは尊い自己犠牲。

 神も認めになられる立派な行為よ。


 それに、これは無償の愛なのだから!

 見返りなんて求めていないでしょう?


 なあに? 役得?


 それってどういう意味かしら?

 ふんふん、ふむ……ふむふむ。


 なるほど……これが役得なのね。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ