第1話 『きっと純白』
わたくしフリエラ・ディエラ・ユグトゥース・ディアンナは、聖ハイデトワール魔法少女学園の通う。
普通のお嬢様でしてよ。
そうね。
成績優秀、超絶技法、容姿端麗。
スクールカースト最上位ではあるけれど、大したことではないわ。
誰かが座らなければならない席で、偶然それに当てはまっただけ。
家系は代々、貴族院所属。
父はロンドン魔術学会の役員で、母はアドリア海で一番の美女。
その令嬢たるわたくしが座るべき席だった……ということ。
そんなことより。
わたくし、いま気になるお方がいますの。
まあ大人と遜色ない程度には成熟した内面を持つわたくしでも、気持ちが逸る瞬間ってあるじゃない?
あるのよ。
そうあれは学園の船着き場、桟橋での出来事。
海風に踊る長い黒髪が印象的でしたわ。
三春楓
彼女は、極東から転校して来た魔女の卵よ。
まあ悪くないんじゃないかしら。
桟橋に佇んで麦わら帽子を被り、白いワンピースに身を包む、あの娘。
あまり値段のする服装では無いけれど、一つの絵になっていた。
黒い髪は艶々だし。
パッツン前髪の下、笑った顔は素朴で可愛いし、手首が細くて、頬っぺたがプニプニしてそうで、腰もふにふにで、首筋から良い匂いがしそうだけど……
だだの普通の女の子よ。
寧ろ、そこが良いとも言えるわね。
なぁに?
そんなに気になるなら、お友達になれば良いですって?
あなたの頭は、マラカスか何かなのかしら。
脳みその代わりに星の砂でも入っているのね……きっと。
立場の違いをお分かり?
私は貴族令嬢なのよ?
貴族! にして令嬢!
ですのに一般市民とお友達になるなんて。
一族の顔に泥を塗る結果にでもなったらと思うと、どうしても踏み出せないわ。
責任ある立場という、自覚がわたくしにはあるの。
それにスクールカーストの最上位は誰にでも平等であるべきでなくて?
そうでなくては階級制度を、わたくしは肯定できません。
ノブリスオブリージュの時代は遥か昔に滅びましたのよ。
まぁ向こうが、どうしても……
どうしてもというのなら?
お友達になってあげても、よろしいけれど。
それから一緒にお昼を食べて。
一緒にショッピングにも行って、夜は勉強を教えあったりして……
そういう想像だけは、膨らんでくのよね。
でも彼女が転校して来てから、かれこれ3ヶ月は経ってしまったわ、これが。
3ヶ月起きないことは、6ヶ月経っても起きないということよ。
それを繰り返してたら3年間の内に接点は無いかも……
そう考えたら絶望ね。
膝から崩れ落ちそうだわ。
たかが数百しか生徒数がいないのに、一体どういう確率になってるのかしら。
神の振るサイコロも悪戯が過ぎるわね。
授業はともかく書庫や廊下で、いつしかの接点ができると思っていたけれど。
少しばかり……少しばかり!
行動することも必要かなって。
そこで決めましたの。
わたくし、あの娘のショーツを手に入れますわ……