仲睦まじい親子
「今日は家に居るようだね、いつも狩りに行ったりでよく留守にしてるから無駄足になる事が多いのは実に嘆かわしい事だと思うよ!全く!」
木漏れ日の中から霊体である理はその土地に似つかわしくない古風な民家の様子を覗き込む
「お母さん、今日の具合はどうかな?悪くない?」
と肌の色も髪の色も目の色以外全体が真っ白な少女
「んー?いつも通り良くもなく悪くもなくって感じだね。悪いね今日も面倒かけちゃって」
と子持ちとは思えない程若々しい少女の母親と思わしき人物
「まぁ悪くないなら良いんだよ!それより今日の晩御飯はこれだよー」
近隣の川で取れたと思われる魚を季節の野菜と一緒に蒸し焼きにしたボイル焼きと民家の地下室で作った味噌をベースに昨日仕留めたイノブタを薄くスライスしたバラ肉と畑で取れた野菜を入れた豚汁がテーブルに並んでいた
「相変わらずあんたは料理が美味いね…家庭料理の枠内なら私が教えれる事はもうないんじゃないかな?」
と、母親が言う程少女の料理の腕はピカイチであった
「比べる対象が私にはお母さんしかいないから其処のところよく分んないけどね。
私もいつか街に行ってもっと本格的な料理とか習ってみたいな…」
と少女は街への想いを馳せる
「別に私なんかほっといて街に行きたきゃ行けば良いのに…」
とゴチる母親だが娘の夢を叶えてやりたい気持ちは親の身なら痛いほどよく分かる…
しかし娘は母親の気持ちを理解しながらもここで癇癪する
「何言ってるの!お母さん!そもそも私が料理を習いたい理由ってのもお母さんにもっと美味しいご飯を食べて欲しいってのが理由なのに!お母さんを放っておいて街に何か行けるはずがないでしょ!バカ!!!」
「…」
娘の気持ちも痛いほどよく分かるので私としてはどっちも悪くないんだからヤキモキしてしまう…
そもそもこの親子が山の中で2人ひっそり暮らしている原因はこの理にあるのだ…