めでたしめでたし
不毛地帯で4つの人影と形容しがたい…正に魔獣と表現すべき獣が舞う
1人はフルプレートの甲冑を着込み勇猛果敢に魔獣に斬りかかる
魔獣は弱点を突かれ動きが緩慢になる
もう2人は一見身動きが取りにくそうなローブを着込み魔法を唱える
その魔法はあたり一面に吹き荒れる嵐そのものであり雷が魔獣に降り注ぐ
そしてもう1人は厳かでありつつも禍々しいを2本の聖剣を両手に掲げ魔獣にトドメを刺す瞬間であった
「…」
辺りが静寂に包まれる中…聖剣を腰に携えた青年が歓喜の声を上げる
「やったぞ!皆んな!遂に俺たちは覇王を討伐したんだ!これでこの世界に平和が訪れる!やったんだ!俺たちは!」
正に世界に平和が訪れた瞬間であった…めでたしめでたし…
と行きたいところだが私はそうは行かない…
勇者達が無事に覇王を討伐し世界に平和が訪れたのは私に取っても大変喜ばしい事だ!
訪れ序でに私も長期休暇と洒落込みますか!と行きたい処なのだが残業がたんまりある
「いやはや…本当に覇王をあの子達が討伐しちゃうとは思わなかったよ、人間の成長って本当に予想が付かないね!喜ばしい誤算とは正にこの事だよ」
そう誤算なのである…勇者達の歓喜の輪の中に混じりたい気持ちを抑えつつ私はとある地へと向かい転送を開始したのであった…
ワサワサと木々たちが揺れる音が心地よい…
転送から目を開けると其処は森林、人が住むには余りに不便な土地である事に変わりないが先ほどの不毛地帯と比べたら雲泥の差と言えよう
「ふむ…無事成功と言ったところかな?転移魔法は霊体なら消費MPも少なく効率的な魔法と言えるだろう」
ニシシと得意げな笑みを浮かべる少女
そもそも転移魔法など使えるモノなど存在しない言っても過言ではないのだがこの霊体はそう言った枠組みから外しても良い存在…
この霊体の主こそがこの世界の神と言っても等しい存在「理」であった