第三話 デザイアの街での暗躍
さて、入港できてしまったのはどうしようもない。まずは艦内放送で港に到着したことを知らせる。その後、これからの事を船内を歩きながら考える。
まず、現状を確認する。リディアとアリア達は奴隷にされるために海賊に運ばれていた。海賊はラザニック商会からの依頼を受けていたそうだ。ラザニック商会は二人が居た孤児院の院長から買い取っている。
ここで問題になるのはラザニック商会が海賊の正体を知っていて輸送を依頼したかどうか。それと院長とラザニック商会の取引に違法性があるかどうかだ。
前者は知らなければ罪には問えないだろうし、後者はリディア達その者が問題になり、身柄を引き渡さなければいけない可能性すらある。それに異世界だからこそ、犯罪歴を調べる魔法や何かがあれば大変だ。
「お姉ちゃん、これでみんなにあえるよね?」
「アリアは会いたいのですか? このまま人を降ろしてから別の街に行った方が安全でしょうが……」
「うん。だって、他の子達が心配だし、友達もいるから……」
「ふむ」
確かに逃げられたのはリディアとアリアの二人だけ。残りは売られたのだろうし、どうにか残っている子達だけでも助けてないのだろう。
「私はアリア以外、助ける気は有りません。なので、どうしてもというのなら代償を支払ってもらいます」
「おねえ、ちゃん……?」
「ギブアンドテイクといきましょう。これから私の言う事を必ず聴くと約束できるのなら、助けてみせましょう」
「うっ、うん……それでお願い」
「では契約成立ですね。私の言う事をしっかりと教えてくださいね」
さて、これで助ける理由ができた。色々と面倒なのだが、仕方ない。おっと、目的の場所に到着しました。
中に入ってから助けた人達を連れて外に出て、タラップを降ろして桟橋に降りていく。流石に周りに人が集まっているが、これからやることを考えて帽子を深く被る。
「アリア。貴方はここで待っていてください。絶対に降りないで姿も出さないでください」
「え?」
「約束ですよ。いいですね」
「うっ、うん……」
さて、アリアを残して下に降りていく。既に時刻は日が沈んで夕方になってきている。
「ようこそデザイアの街へ。来訪目的はなんでしょうか?」
降りて来た俺達に近付いてきた男が丁寧に対応してくる。不思議に思っていると、当然の事だった。あちらからしたら、どこかの国からやってきた使者かもしれないのだからな。
「彼女達は海賊に捕まっていたところを救出しました。私達はこれで帰りますのでお気になさらず。行きますよ」
「えっ?」
「いいから帰りますよ」
上がっていくタラップに飛び乗って船の上に戻っていく。
「おっ、御待ちください!」
「すいませんが、また後程きますので今はいかせてもらいます」
回収の途中で船を発進させる。そのまま沖へと出て陸地から見えない位置まで進ませる。
「お、お姉ちゃん……助けてくれないの?」
「このままいっても鬱陶しいですからね。それにあの状態だと……いえ、なんでもありません。別の手段で陸地から街に入ります」
予定していることをすると疑われる可能性が高い。疑われてもどうとでもなるだろうが、面倒なのは避けたい。
「別の手段?」
「はい。明日まで待っていてください。今、出しますから」
ウロボロスを操作して甲板の天井を左右に開かせる。するとできた穴からせり上がってくるのは翼を折りたたまれた小さな艦載機。
「鳥さん?」
「ええ、鳥さんですよ。さあ、乗りますよ」
「う、うん」
艦載機のコクピットに乗り込む。一人乗り用だが、小さな身体の私達なら問題なく入り込める。シートに座って膝の上にアリアを乗せてシートベルトを着用する。
「システムチェック、オールグリーン。Gキャンセラー、ステルス、光学迷彩起動。コントロールをオートに設定。電磁カタパルトの起動を確認。さて、飛びますよ」
「と、飛ぶの?」
「はい。少し衝撃がきますが問題ないので怖ければ目を瞑っていてください」
こくりと頷くのを確認してから発艦させる。翼を広げて準備ができたので電磁カタパルトで射出する。電磁カタパルトによって一気に加速して空へと飛び立つ。Gキャンセラーのおかげで多少身体が押さえられる程度の感触で、高速飛行へと移った。
コクピットの中から外の光景がしっかりとみられ、アリアは釘付けになっている。その間に沖へと飛んで20キロほど飛んでから進路を右に変えて大きく迂回して陸地に戻る。
艦載機はウロボロスから半径50キロの範囲までしかエネルギー供給を受けられない。その後は貯蓄された非常用のエネルギーで飛ぶしかない。
「すごい。空、とんでる……」
「はい。ゆっくりと楽しむのはまた今度にして、今は陸地に戻ります」
自動操縦に設定して大回りで陸地に戻る。地上に誰もいないことを確認してから近くの森の中へと重力制御による垂直着陸を行う。
デザイアと呼ばれた街の近くにある森の中で今夜は過ごす。
「さてアリア。喉が渇いたでしょう。これを飲んでください」
「ありがとう」
出したジュースを疑いもなく飲んだアリアはすぐに眠りにおちた。睡眠薬入りというわけではなく、疲れたからだろう。眠ったアリアを抱いて外に出る。それから艦載機とウロボロスの召喚を解除する。これで超弩級魔導戦艦は亜空間にあるオフィスのプライベートエリアに戻った。
外に出た俺は海賊の物資から手に入れたぶかぶかの服を着てから、アリアを抱えて歩く。マップを頼りにして街まで戻り、外壁を四連装機関砲を召喚することで足場にして街の中に侵入する。
この街は夜でもその手の店が営業している。その中で大通りにある宿屋に入る。
「いらっしゃい。こんな遅くに子供が二人でどうしたんだい? 親は?」
カウンターで作業をしていた男性の店員が対応してくれる。
「二人だけです。親は死にました」
「それはすまない」
「とりあえず妹が眠っているので、部屋を二日でお願いします」
海賊からもらった慰謝料の銀貨を適当に掴んでカウンターの上に置く。
「お釣りだ。食事は朝食と夕食だけだけど、夕食はどうする?」
「一応、用意しておいてください」
「わかった。これが鍵だ。二階右の四つ目の部屋だよ」
「はい」
鍵を受け取って階段を登って部屋に入る。ベッドが二つだけの質素な部屋だ。さて、リディアを寝かせてから下に降りる。一階の食堂は酒場になっているようで、そちらにいって鍵をみせて食事を二人分もらう。
やはり日本と違ってあまり美味しくない。適当に自分の分を食べてからアリアの分を近くの人にあげる。アリアにはもっと美味しいのを用意してある。具体的にはウロボロスのお弁当だ。
「これ、よかったらどうぞ。」
「お、いいのかい?」
「はい。お酒も奢りますから、その代わり少しこの街について教えてください」
「構わないよ」
酔っ払いの人に話しを聞いて、知りたい情報に誘導していく。無事にこの街のことを聞けた。この街は商人の街で、金があれば大抵のことはどうにかなるらしい。それに貧困層と裕福層でかなりの差ができているようだ。その中でもラザニック商会はかなりあくどいことをしている。肝心な孤児院は可愛い女の子や綺麗な女の子を合法非合法問わずに集めた孤児院の名を騙った奴隷養成所とのことだ。だから、リディアとアリアが居た孤児院は女の子専用の場所だったらしい。そして、運営しているのはラザニック商会と複数の商会が金をだしてやっているようだ。その場所もしっかりと聞いた。
さて、聞きたいことを聞けたのでお暇する。部屋に戻って鍵をかけてから窓からお出かけだ。
聞いた場所にお出かけしてお礼にギフトを持って挨拶にいく。
「こんにちは」
「なんだお前?」
「餓鬼がこんなところに……」
「さようなら」
召喚した四連装機関砲でぶん殴る。そう、殴る。これこそ一番火力の低い手段だった。鋼鉄か何かでできている金属の塊である。十分に鈍器として役に立つ。砲塔とはいえ旋回能力も高いからな。
「きっ、きさまっ……」
「ああ、さっさと死んでくださいね。気持ち悪いので」
まだ慣れないけど仕方ない。害虫退治は大事だ。というわけで、財産を持って逃げようとする人達を的確に潰してその財産を根こそぎ頂いてから、一部死体を回収して火事にしてあげる。
孤児院に関わっている他の商会も同じようにしてあよう。
次は孤児院に向かって委員長先生と穏便に話し合って、快く孤児院を譲ってもらうことにした。その後、院長はどこかに走っていったが、その先で火事に巻き込まれてなくなったそうだ。
その日の夜は複数の商会が燃えたり爆発したりで、商会長をはじめとしたたくさんの人達が亡くなってしまうという事件が起きたとあとできいた。