第十七話 拠点作成
リディアと話していた時やって来たのは知り合いだったので、対応してさっさとお帰り願った。しつこかったが、ちょうど母さんがやってきたのでそちらを優先させてもらった。ある意味では助かったが、問題は母さんが持ってきた大量の見合い写真だ。
母さんの言い分も理解はできる。だが、俺にはリディアがいるので当然断るのだが、それでは母さんも納得しない。だから、最終手段にでた。まずは結婚を前提に交際している人がいることを明かし、後日、会わせる約束をして、別れる。そして、その日に都合が入ったことにして、男の俺はいけないことにした。かわりにネージュに転身して母さんにあって少し話してからさっさと撤退した。話した内容は俺だとバレる可能性があるので、リディアに話す内容をお願いしてことなきをえた。
さて、母親からの煩わしいお見合いのことは一応、かたがついたのでロシアへと向かう。
ロシアにあるヤクーツク郊外でブローカーから注文しておいたスノーモービルを20機と追加の銃器の部品、それに弾薬とガソリンを大量に仕入れる。支払いは現金ではなく異世界の海底からサルベージした金銀財宝だ。
「注文の品は全て揃えてあるはずだが、確認できたか?」
「問題ないよ。注文通りだ」
「それは何よりだ」
倉庫の中にあるスノーモービルと大量の箱を確認し、銃器の部品もしっかりと確認する。中には
「しかし、対戦車ロケットランチャーや迫撃砲なんて何処と戦争する気だ」
「知らないほうがいいこともあるよ」
「まあ、そうだな。消されたらかなわんからな」
「そういうこと」
相手のブローカーは俺のバックにでかい組織があると思っているだろうからな。リディアが手に入れるために邪魔しようとした連中をあの手この手で対処してブタ箱に入れてしまった。そのため、かなり恐れられている。
「報酬はこれでいいかな? ちゃんと鑑定書つきだから、心配しなくていい」
「我が国とジャパンの鑑定書か」
「あれだったら現金の振り込みでもいいけれど、足のつかない方法で頼みたい」
「もちろんだ。こちらとしてもこれの方が助かる」
「じゃあ、後は量だが……こちらは交渉だな」
互いにある程度譲り合って次も頼むということで決着がついた。ブローカーが帰っていくのを確認してから品物をウロボロスの倉庫に収納していく。全てを収納してから外に出てしばらくゆっくりとしながら雪の降る空を見上げながら歩いていると、周りに複数の車が走りよってくる。
車は横を通ってさっきまでいた場所に入ってから、こちらに人を寄越してくる。それは私服の警官か軍隊のようなのでマフラーと帽子を深く被る。
「子供がこんなところで何をしているんだ?」
「街から遊びにでたら、道が分からなくなったの。夜になったら、街の光がみえたからそっちに……」
「なるほど。では少し待っていてくれ」
彼は良い人だった。何処かに連絡を入れてから街のホテルまで送ってくれた。しかし、流石に留まるのはまずいのでサンクトペテルブルクに移動して観光する。
サンクトペテルブルグにある大聖堂などを見学し、湾岸施設を見学してからお土産として大量のお酒を買って次はドイツに移動する。ベネツィアでしばらく滞在してネージュとリディアの分、二つの国籍をいろんな手段を行使して習得し、日本に帰国した。
日本に戻ってからリディアと交代する。リディアには母さんの対処など色々とお願いしたいし、シフトは何度も使わないと成長しないので、俺達がもう一度で会うためにはやらないといけない。
さて、入れ替わる前に必要な機材を買っておく。除雪剤や除雪機とか、大理石とか接着剤とか、窓枠とガラスとか色々と用意する。それにお土産として生菓子を購入する。とりあえずケーキでいいかな。ああ、発電機も買っていかないと。石窯の作り方とか色々と本も買って……忙しい。
数日後、日本での準備が終わってシフトを行った。シフトではリディアと会えるので、膝の上に乗せて色々と話す。
「そちらの近況はどうだ?」
「アリアにはばれていました。やはり姉妹ですから、無理があったようです」
「そうだろうな。俺も結構、ボロをだしていたらかな」
「そうですね。ばれてしまったのはアレですが、やはり嬉しいです。私のことをちゃんとみていてくれたのですから。それと他の子には黙っておくようには言っておきました。不安がられるでしょうから」
リディアは精神的主柱になっているだろうから、迂闊に別人だといえない。もしもの時、何かあれば困るからな。
「リディアのふりをしておくのが無難だろう。それで城の修理はどうだ?」
「お城の城壁は終わりました。城下町はそのままにして防壁の修理に入っています」
城下町は市街戦の訓練所になっているし、今は仕方ないだろうな。
「防壁にも隙間がありましたが、全面をモルタルで隙間なく埋めましたので強固になっていると思います。薫さんが言った通りに屋根のある見張り台も直しておきました」
「わかった。そこに迫撃砲を置くから……」
「迫撃砲はよくわかりませんが、防衛や軍事関連はお任せします。交渉事は任せてください」
「頼む」
俺とリディアは担当する分野を別けるほうがいいだろう。読むことに関しては未来すら読むリディアの右にでるものはいない。適材適所にしておいたほうがいい。
「それと色々と買っておいたからそっちも確認してくれ。日記をつけてあるから、それに詳しく記してある」
「わかりました。確認しておきます。っと、そろそろ時間ですね。妹達のことをどうかよろしくお願いいたします」
「任せておいてくれ」
「はい。いってらっしゃい」
リディアが口付けをしてくる。すぐに離れたリディアの表情は恥ずかしそうに照れた表情だった。
目を開けると知らない天井があった。いや、正確には知っているだろうが、様変わりしている。断熱材が敷き詰められているのだが、これくらいは序の口だった。壁や天井の方には可愛らしい絵や髪飾り、花が飾られている。棚には動物のぬいぐみが沢山置いてある。完全に女の子の部屋に変貌している。部屋の中には他にプラスチックでできた服掛けなどが置かれている。そこには可愛らしい女の子のコートなどが掛かっている。
視線をそらせばベッドの横にあるサイドテーブルには着換えの入った服が二人分置かれている。
「ん~お姉ちゃん……」
隣を見れば青みのかかった銀色の長い髪の毛をした女の子が、俺が着ているネグリジェの裾を掴みながら猫のように丸まって眠っている。この子はリディアの妹であるアリアだ。久しぶりにみたが、やはり可愛らしい。更に反対側ではショートヘアの綺麗な黄金のような髪の毛をした幼い女の子、ペリトも眠っていた。どちらもネグリジェで透けていて、下着がみえている。
そもそもこれらはリディアに送ったものなのだが、アリア達も気に入ってしまったようだ。だが、男の俺がこれを着ているのはなんというか想像したくない。いや、リディアの身体なのだからなんの問題もなく可愛らしくて似合っているのだが……やっぱりない。と、思ったが可愛いは正義だ。ゲームの感覚でいけば問題ない。
「さて、と」
二人が握っているネグリジェを脱いで、布団から下に潜って外にでてもう一度掛け直す。二人は互いにリディアの服を握りながら眠っている。俺はサイドテーブルに用意されているリディアの服に着替える。
青のチェック柄の上着にセミロングのスカート。下はタイツを履いてからガーターベルトにニーソックスをしっかりと吊るす。肌の露出はできる限りしない。そんな恰好で外にでたら軽く死ねるからだ。ただ、スカートは止めるつもりはない。保温クリームと貼るカイロで凌げばいい。何度もいうが、可愛さこそが大正義なのだ。回復魔法もあるし、俺が使ってる分には問題ない。ちなみに下着はレースの奴でチェック柄のティーンズ用。
着替えが終わったら鏡をみつつ肌に保温用のクリームを顔に塗り込んでコートと日記を持って外にでる。部屋の外も中の部屋と同じで温かい。廊下も保温素材が敷き詰められていて、焚き続けている複数の暖炉の温もりが伝わってきている。外壁に近付けばかなり寒いが、中だけなら問題ない。それとちゃんと火の番を置いて管理している。
廊下を歩きながら日記をペラペラと速読で読んでいく。リディアの読む事に関するスペックは本当に出鱈目なおかげですぐに理解して覚えられた。
「モンスターの襲撃に対する訓練は問題なし、と」
銃によるペイント弾と実弾を使った訓練もしっかりとやっているようだし、本番はウロボロスもだして海上から支援射撃を行う準備もしておく。いざとなればやってくる森ごと消滅させればいい。幸い、環境破壊に関する法律はないのだから気にしなくていい。やりすぎるのは駄目だろうが。まあ、まずはウロボロスが停泊できる港区を作らないといけない。荒っぽい方法で作るつもりだが、大丈夫だろう。
「まあ、今は発電機ですね」
城の地下に移動し、広い倉庫を一つ使うことにする。そこにガソリンを使う発電機を出してセッティングを開始する。電気を貯蓄する大型のバッテリーも設置し、続いてパイプを壁に設置していく。
隣の部屋には大きなボイラーを置いてパイプを通して温かい湯を城全体に届ける。特に風呂は何時でも入れるようにしたいので、優先的に設置する。循環形式にするが、後で増やせばいい。使ったお湯は汚れるのでいくら美少女のお湯とはいえ普通なら捨てる。しかし、俺は普通ではないし、変態紳士といえる。なので、浄化して再利用する予定である。そのまま利用すると思った?
流石にそれはない。病気が蔓延したらかなり困るし不潔なものは排除する。故にここは女神フェルトの力を持って浄化と再生、保温、肩こりなどなどから染みやそばかす、ニキビにいたるまで全てをきれいさっぱり消すお湯を作る。可愛いは正義であるので美容やアンチエイジングは子供のころからしっかりとすることが大事だ。我が妻と妹達のためにも妥協はしない。女神フェルトの全力を持って行う。
や・り・す・ぎ・た。
お城が白亜の城となり、神々しい光を放ちだしてしまった。聖域どころか、神域に近付いたのかもしれない。この世界に女神フェルトを信仰する存在がいればここは間違いなく神々の住まう場所、ヴァルハラといえるだろう。そうなると妹達は戦乙女になるのだろうか?
まあ、気にしないでいいだろう。例え、お城に戻った瞬間怪我とかが勝手に全快したり、数か月間置いたら物が勝手に加護が与えられる程度である。
大丈夫、大丈夫。きっと、たぶん。さて、発電機があるので電力がある。それはつまり配電盤と送電ケーブルを用意すればテレビなどが使えるということ。っと、まずは連絡のための無線機が先だった。お城の中だけでしか使えないけれど無線機は便利だし、使えるようにする。戦闘や戦争では情報が命なのだから。そういう意味ではパソコンを導入し、艦載機からの映像を受信できるようにするのは必須だ。俺がいればいいが、リディアの時は絶対にいる設備だろう。
「本当にやることはいっぱいある」
インフラを整えてさっさと航海にでたいものである。モンスターの襲撃まで猶予は残り微か。皆には頑張ってもらおう。