第十五話 地球でのひと時
ロシアから日本に戻ってアパートの自宅に戻ると、沢山の手紙がポストに入っていた。中はほとんど寄付をお願いする内容と、知らない友達と名乗る人や見合いの写真。どうやって調べたのかはしらないが、リディアは結構ハデに稼いでいたようなのでこれも仕方のないかもしれない。
部屋の中に入ってみると、泥棒に入られたようだ。色々となくなっているが、増えているものもある。それはリディアの日用品だ。コップとかそうだな。
しかし、これは問題がある。パソコンもなくなっているし、やばい気がする。まずはリディアに連絡をとる。スマホを耳にあてながら心の中でリディアを思い浮かべながら声をかける。
「リディア、聞こえるか?」
『薫さん、どうしましたか?』
「そっちは大丈夫か?」
『防寒具や暖を取る物もありますが、やはり食料が問題ですね。今は余裕がありますが、少したりません』
「了解。また足りない物があったら教えてくれ。それと家が荒らされていたんだがわかるか?」
『いえ、わかりません。ですが、必要な物は全て持っていっていますから、大丈夫だと思いますよ。アタッシュケースにノートパソコンも通帳やハンコも入っていますよ』
確かにそれらは入っていた。つまり、盗まれても問題ないものばかりとなる。一応、警察に届けてから不動産屋に向かう。アパートじゃ、リディアを呼び寄せた時や、変身した時に色々と追及されたら困るからだ。それにお金もあるんだからしっかりとしたセキュリティのとこに住んだ方がいい。
一戸建てかマンションかで悩むが、マンションなら人が多いからばれる可能性は多少あるが買い物が楽だ。いや、一戸建てでもかわらないか。田舎や遠い場所で作ればいい。しかし、それだと購入するのが面倒だ。
「もっとセキュリティの良い場所に引っ越そうと思う」
『確かにその方が良さそうですね。その辺りはわからないので全てお任せします』
「了解。できる限りいいところを選ぶ。お金は結構使うと思うが、大丈夫か?」
『ええ、問題ありませんよ。かなりの量を稼ぎましたから。しかし、不思議なシステムです』
「まあ、リディアからしたらそうだろうな」
FXと株式とかよくわからないだろう。宝くじはどうにか理解していそうだが、稼げる手段と理解してやっているだけだろうしな。
「じゃあ、こっちで買うからそっちは頼む」
『こちらは廃城の修理をして生活環境をあげます。最終的にはそちらに頼らずに食料品を量産できたらいいんですが……ウロボロスも私ではまともに扱えませんから』
「それだと厳しいだろうな。まあ、しばらくはこっちから食料供給だな」
『できれば肉類と野菜をお願いします』
「任せてくれ」
魚だけじゃ栄養が偏るし、いろいろと持っていかないとな。まあ、先にいいマンションを買おう。さっそく不動産屋にむかって、滅んだ村の土地をまとめて山ごと購入する。山の中にある村ならどうとでもなるからだ。もっとも、すでに家も朽ちてるらしいので作るしかない。なので最速で家を作ってもらう。
それから家に戻って荷物をまとめて移動する。この時、念のために盗聴器発見のアプリを使うと結構設置されていた。逆探知などできないし……いや、ウロボロスならできるかもしれないが、面倒ではある。とりあえず見つかったものは廃棄しておく。
リディアの分の荷物も含めてダンボールに込めて引っ越しをする。大家さんに連絡しておく。
諸々の手続きと作るまでの数ヶ月はセキュリティのいいマンションを借りて住むことにした。流石に盗聴されて荒らされた部屋にいたくないし、向こうが完成するまではそれでいいからだ。つまり、しばらくはマンションで一人暮らしとなる。
こちらに戻ってから数日。借りているマンションで寝起きをしている。起きてから洗面所で顔を洗うと、設置されている鏡に綺麗な美しい白銀色の髪の毛に赤い瞳の少女が写る。
「吾輩は美少女である」
140前後の少女の可愛らしい唇が動いて、綺麗な声を紡ぐ。内容がかなり微妙だが。さて、なぜこの子の姿で生活しているかというと、簡単なことだ。男の姿でいるといろいろ我慢しきれなくなる。そもそも、ここで秘蔵の品を用意したり、やったりしたらできない。リディアに筒抜けになるのだ。そうなればとてもではないが、起こられるだろう。いや、大丈夫かもしれないが、心の中でどう思うかなんてわからない。
本人は気にしないとはいっていたが、やはり気分が悪いだろうしな。なにより心の中を読まれるから隠し事もできない。そして性欲を持て余すので女の子の身体になれば大丈夫だと思う。まあ、身体が小さいせいかもしれないけど。
とりあえず、この身体のスペックを確かめるために色々としてみた。彼女のスペックは吸血鬼化していた影響か、身体能力がかなり高かった。それに女神フェルトの加護があるのかもしれない。あと記憶能力とかもすさまじいので勉強とかもこっちでしたほうがいい。
どちらにしろ、かなりのスペックがあった。まあ、ウロボロスを常に装備しているせいかもしれないけどな。
こんなことを考えながら寝汗をシャワーで流してから長い髪の毛を乾かして、ポニーテールにする。服装は白色のフリル入りのシャツに黒色の大きなリボンと裾に膨らみのあるバルーンスカートとニーソックス。
着替え終えると完全に美少女が目の前の鏡に写っている。ポニーテールにしたから首元や項がしっかりとみえる。
リディアの姿で過ごしていたからか、女の子の身体に女の子の服装すら違和感がなくなってきている。
「私、スノウ、10歳の女の子♪」
うん、ないな。年齢的に魔法少女を名乗れそうだが、そちらも微妙だ。というか、名前も聞いてなかったし自分で決めないといけない。だから、単純にスノウにしてみたが、いまいちだ。ネージュにしておくか。こちらも雪と同じ意味だしな。
「さて、勉強しにいくか」
すくなくとも運転免許証とか、フォークリフトとかの免許は欲しい。色々と欲しいのがあるので本当に助かる。他には危険物取り扱い免許とかも欲しい。購入できる薬品とか変わってくるしな。
それに向こうの世界でも使えそうな本や知識は蓄えておくにこしたことはない。ああ、雪国だしスノーモービル数台は欲しいな。資金稼ぎと並行して買う用意もしておこう。
まあ、今はとりあえず鞄に本を数冊入れて、近くの雰囲気が良くてコーヒーの美味しい喫茶店へと向かおう。




