第十四話 お城の改造1
目を開けるとそこは暖炉の灯りで照らされた知らない場所で、天井の端には蜘蛛の巣があり、お世辞にも綺麗だとはいえません。硬いベッドから身体を起こして周りをみると、石造りのお城のようでした。
どうやら無事に薫さんと入れ替わって元の世界へと戻れたようです。ベッドからでて靴を履き、身体を動かして確認します。
少しして特に問題なく動くことが判明しました。そのタイミングで私の姿が勝手に変わって軍服姿になりました。
どうやらあちらで薫さんが変身したせいみたいです。丁度いいので色々と使える戦力を確認します。
するとウロボロスの限定召喚は可能でした。ですがフィールド系統や自動操縦、機関砲以外の主砲などが使用不可でした。つまりまともに動かすことができそうにありません。それに倉庫にアクセスもできます。まあ、まずは拠点の整備が必要ですからね。
こんなことを考えていると、部屋の扉が開いて冷たい風が入ってきます。
「お姉ちゃん?」
「はい。お姉ちゃんですよアリア」
「お姉ちゃんっ!」
アリアが私に抱き着いてきました。久しぶりに出会ったアリアは温かく、私にとっては大切な人だと改めて確認できました。しっかりと守らないといけません。それにスキルを得られないとのことですしね。
「どうしましたか?」
「お姉ちゃんだ、前のお姉ちゃんだ……」
「気付いていたんですか?」
「うん。だって、たまに言葉使いとか、ふとした時の仕草とか違ったよ?」
「まあ、それは仕方ありませんね。元々知り合いでもありませんでしたしね」
私は一方的に知っていますが、薫さんは知りませんからね。でも、これなら説明しないといけないですね。
「あの人は薫さんといって私の夫です。だから、アリアからしたらお兄ちゃんになりますね」
「お兄ちゃん……」
「仲良くしてあげてくださいね」
「うん、優しい人だから、よろしくしてあげてね」
「アリアを守ってくれたから……」
「よかったです。でも、気を付けて……」
「?」
「なんでもないです」
アリアには後で寒冷地仕様のハンドガンを渡しておかないといけませんね。ですが、その前にやらないといけなことがあります。
「アリア、私はここで少し作業をするので明日まで部屋を暖めてゆっくりと休むようにいっておいてください。それと燃料がたりなくなったら、こちらを使ってください」
ウロボロスの倉庫にアクセスして目的の木箱を取り出してアリアに渡します。
「この箱の中網は木炭です。暖炉に入れてください。こんな風にすればいいですから」
箱を開けると中身は木炭が入ったダンボールがあります。そこから中身をトングを取り出していれていきます。火はすぐの木炭に移っていきます。
「わかりましたか?」
「うん、まかせて」
アリアに任せた後、私は別の箱から画用紙とペン、それに製図機を取り出してセットする。ベッドに座りながらこの城の構造や内部情報を読み取りながら画用紙に書き記していきます。
危険な生物はいませんが、鼠や虫は微かにいます。これの排除は後回しですね。
隠し通路や破損している場所などを何枚かに書き終えたら気付けば結構な時間が過ぎていました。
「お姉ちゃん、一緒に寝よ」
「そうですね。一緒に寝ましょう」
その日は久しぶりにアリアと一緒に眠りました。
次の日、目覚めたら皆を集めて薫さんが購入してくれた沢山の服を皆に渡します。
「はい。寒いので暖かい服を用意しました。好きな物を着てくださいね」
「「「は~い」」」
大量に送られてきた服を皆で好きに選んでいきます。私も下着を変えてワンピースとコート、それに帽子をかぶってブーツを履きます。一つの部屋で着替えていますが、ここに男性はいないので気にしません。
皆が好きに選んでいる間に私は廊下にでてインスタントセメントに水を入れてモルタルを作ります。その後、書いた図をみながらコテで隙間風の部分をしっかりと埋めていきます。
「お姉ちゃん、アリア達も手伝うよ」
「ありがとうございます。温かい服装でお願いしますね。それと手袋は必須ですよ」
「了解。それじゃあさっさとやっちゃおう」
「そうですね」
バーベキュー用のコンロを複数だして、そこに木炭をいれて火をつけて暖をとりながら作業をします。扉には断熱剤のシートを貼り付けていきます。
小さな子供達には箒とちりとりなどを渡して灰を集めてもらいます。これは結構ありますからね。
「リディアお姉ちゃん、天井はどうする?」
「リュミドラでも届かないでしょう。これを使ってください」
複数の脚立を取り出して渡しておきます。これで高いところも大丈夫でしょう。
「ついでだから天井の汚れも落とすね」
「そうですね。綺麗にしましょう」
「がんばる」
全員でかかっても綺麗にするのに数日では終わりませんが、送られてきた物資のおかげで快適です。特にマットと寝袋は最高でした。後はハンモックとかも人気です。お城のほとんどをまだ使っていないのですが、最低限トイレとお風呂を使えるようにしました。といっても、お風呂はアウトドア用品の奴ですけどね。木炭は便利です。
調理はカセットコンロを使ったり、バーベキュー用の奴を使ったりしています。薫さんが日本に戻ったのか、カップ麺やレトルト食品、お菓子をはじめとした食料品も沢山送ってきてくれます。
子供達には一日一個のお菓子をあげて、頑張って手伝ってくれた子達にはご褒美としてもう一つあげて労働意欲を高めました。
有る程度部屋が使えるようになれば交互にバルサ〇などを焚いて虫を一掃しておきました。ウロボロスの倉庫は生物でも関係なく移動できるようなので、鼠対策に猫を複数購入してもらって送ってもらいました。その子達は元気に暖炉の前で丸まって子供達にモフモフされています。どうしてこうなったんでしょうか?