第十一話 海の恐怖
さて、食事を主計科の炊事係の子達と一緒に作る。内容は魚介スープとサラダ。それに海の塩を振りかけた串焼きと焼き魚の骨なしムニエル。頑張って抜いた。
タルタルソースがあれば最高だったが、まあそれは仕方ない。大量の食事に皆が満足しているが、どうしても野菜が残っているので、次に街に寄港したらプレートを購入して全部食べ切るまでお代わりとデザートの凍った果物はなしにしてやる。
食事が終われば艦長室に併設された部屋でアリアと風呂に入る。アリアの柔肌を堪能しながらしっかりと洗って、こっちも洗ってもらう。その後、二人で抱き合いながら眠りについた。
さて、意識が覚醒したらアリアを置いてシャワーを浴びて着替える。それから艦内の洗濯物を回収して洗濯機にかけて、甲板にでる。外は快晴で肌の天敵である太陽が爛々と輝いていて、手で光を避ける。これは洗濯が渇きそうだ。甲板の落下防止柵から砲台とかに紐を伸ばして洗濯物を干す場所を用意し、洗濯機から回収して洗濯物を干していく。
女性用の下着とかもあるし、とてもあれな光景だが……さすがに興奮はしない。リディアの身体だからだ。一人暮らしが長いとはいえ、色々と身体に引っ張られているところもあるかもしれない。
「朝から精が出ますね」
「メリルさん、おはようございます」
「おはようございます。炊事係の子達が起きてまってましたから、こちらは任せていってください」
「わかりました」
メリルさんに後を任せて炊事場に移動する。そこで皆で朝食を作っていく。朝食が完成する少し前には艦内放送で起床を促す。
寝ぼけている子達にシャワーを浴びせさせてから食堂で集まり、皆で一緒に食べる。普通はこんなことできないだろうが、この船はオートメーション化されているので可能だ。
食後は甲板にでて柔軟体操を行う。皆は不思議がっていたが、身体を柔らかくしたりして動きやすくなるのでしっかりとしてもらう。後、目覚めるのに丁度いいからな。
「今日の予定は潜水や水中呼吸とうの祝福を持った者以外は艦内で自由に遊んでいてください。残りの子は私と一緒に海に入ってもらいます」
指を鳴らして変身を行う。海モードの旧スク水に軍服コートという恰好に変わる。するとウロボロスも少し振動して一部が変化した。
「潜水艇を出すのでそれに乗り込んで色々と引き上げてもらいます。リュミドラは私と一緒に先に安全確認です」
「おっけー」
指示を出して、皆に格納庫から海モードで追加された潜水艇で海にでてもらう。まずはフィールドを安瀬のために停止して俺から柵を越えて海の中に飛び込む。
すぐに視界が泡と水に包まれる。上を見上げれば海面を照らす太陽の光がまるでカーテンのように綺麗な光景を作り出している。
しかし、海底をみるとそこには大量の死骸があり、魚がつついて食べたりしている。先は渓谷のようになっていて先はかなり暗くなっている。
そちらをみていると、リュミドラや潜水艇が次々とやってきた。改めてデータを確認するけれど問題ない。地形データなどは事前に音響探査などでしっかりと調べてある。それをもとにモンスターを探知したけれど確認できていないから予定通りに行動する。
リュミドラには沈没船の探索を頼み、潜水艇と一緒にいってもらう。俺は潜って岩の影とかを調べる。すると目的のものが見つかった。
岩に擬態しているような貝殻と岩の間にナイフを入れててこの原理で取り外す。手に入れたのは巨大アワビだ。いままでモンスターの楽園だったので、かなり養分を蓄えて成長しているらしい。それに真珠も結構みつかった。
逆にリュミドラの方も複数の沈没船がみつかり、ウロボロスのアンカーを取り付けて引き上げていく。更に奥にも色々とあるみたいなので、何人かに協力してもらって沢山回収したらそちらにいってみる。
両足を動かして水を掻き分け、奥へと進んでいく。深海の方へと進んでいく。視界はレーダーの情報を表示してある。
しばらく進むと海底に大きな穴があった。そこから無数の触手が伸びてきて、逃げる暇もなく足を掴まれて身体中を拘束され、ぬるぬるぬめぬめの体液塗れにされる。それにぬめぬめの触手とは別の触手の吸盤が身体に吸い付いて、かなりまずい状況だ。
その状態で深海へと連れ込まれていくのだからこのままでは死んでしまう。四連装魚雷を召喚してぶっ放す。近場の敵に放つとか正気ではないけれど、死ぬよりましだ。
相手は触手で迎撃してきた。触手が命中すると爆発して触手が千切れ、身体が急激に浮上していく。しかし、それでも触手を俺に伸ばしてくる。
対抗してこちらも無数の重力機雷をプレゼントするが、重力機雷をすり抜けたり迂回したりして触手を放ってくる。ウロボロスの本体が遠くなのでどうしようもない。
下で起こる爆発の衝撃での急速浮上は身体にかなり応える。何度か血を吐きながらもなんとか水面近くに到着する。
下からはまだ大量の触手が迫ってくる。身体に力が入らなくなってきた。身体が沈みそうになると誰かに捕まれる。上をみるとリュミドラが掴んで引き上げてくれていた。どうやら、心配してきてくれたようだ。
リュミドラが指さすとそちらには複数の潜水艇がきていた。
急いで潜水艇を操作して複数の魚雷を放たせる。同時に一機はこちらにこさせて捕まって逃げる。相手は様々な種類の魚雷を大量に受けてるくせに全然平気そうだ。むしろ、全て触手に迎撃されて本体に届いてすらいない。
そのままウロボロスに戻ってから、急速発進して逃げる。
機雷を投入して海域の離脱を助ける。次に魚雷を放って……と思うと相手は一定の深度からでてきていない。どうやら別のダンジョンになっていたのかもしれない。だからこそ大穴がレーダーに映らなかったのかもしれない。どちらにしろ、このままではまずい。
「お姉ちゃん大丈夫?」
「ええ、なんとか……」
「そうなんだ……だったらお風呂、いったほうがいいよ?」
「え?」
「その……」
「凄く臭いからね」
「っ!?」
改めて意識するとまるで……やめておこう。急いで風呂に向かって走ってシャワーを浴びて身体を綺麗にする。シャワーを浴びていると死にかけた恐怖を思い出して身体が震えてくる。それと同時にリディアの身体を穢してくれた怒りも湧いてくる。思わず鏡を殴りつけてしまうぐらいに。
「フォートレス・タートルを簡単に倒せたらから、この世界の海をなめていた。所詮は表層にいるただのフロアボス程度を倒していいきになっていただけと……よろしい。レベルを上げて出直してやる」
ゲームでよくあることだ。勝てないのなら、レベルを上げて装備を整えればいい。この世界でならレベルは祝福であり、装備はウロボロスだ。
「って、痛いっ!」
赤くなった手をフーフーしながら艦載機で得た情報と商人達の話をもとにして陸地を目指す。目指す場所は中立地帯のトレマという所だ。そこから少し離れた場所に停泊して潜水艇で浜辺に上陸し、地上から街に入る。船を持つ祝福持ちはそれだけで価値が高いそうだから、船でも入らない。ウロボロスで動くのは色々とリディアと準備してからだ。




