表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

現代病床雨月物語 第6話 「ナバホの願い」 秋山 雪舟(作)

作者: 秋山 雪舟

私の脳に人の足音が聞こえてきた。そして私の近くで立ち止まり、その人物が話しかけて来た。

 彼は、アメリカ先住民のナバホ族の人であると私に伝え、「君は、日本人なのでこれから私が語る事を聞いてほしい。私の名前は日本人には覚えにくいので日本人が知っている名前を仮の名前にしておこう。そう『アテルイ』としておこう。」

 ナバホ族の『アテルイ』は、もう亡くなっていると言って、彼の生前の出来事をはなしはじめました。

 彼は、第二次世界大戦で海兵隊の通信兵としてガダルカナル作戦に従軍し「ナバホ語」を利用した暗号通信を行っていた。このガダルカナル戦によりアメリカ海兵隊は、“From that time on‘United States Ma❘ーrines were invincible”(このとき以来、アメリカ海兵隊は向かうところ敵なし)

と言われるようになった。彼はこのガダルカナル戦が従軍の最初であり沖縄戦が最後の従軍であったと話した。

 彼にとっては沖縄戦がどうしても忘れられない記憶として心に深く残っていると話した。

沖縄戦はもじどうり一方的な戦いであり、ガダルカナル戦は兵士対兵士であったが沖縄戦では一方的な虐殺と住民の自殺をまのあたりにして、『アテルイ』は昔ナバホの老人から聞いたヨーロッパから来たアングロサクソンによるアメリカ先住民の虐殺と同じ光景が自分の目の前で起こっているので本当に息が苦しくなった。その日以来『アテルイ』はよく夜中に沖縄戦を思い出し目が覚めると言った。

 次に『アテルイ』は、ハワイを中心にした「日系二世部隊」の話をした。彼によれば第二次世界大戦で最も犠牲をいとわず勇敢に戦ったアメリカ軍最強の部隊であり「パープル・ハート賞」をもらっていると言いました。

 『アテルイ』は、沖縄戦と「日系二世部隊」

も共に日本人の血が大量に流されていたことになんともアメリカ先住民として共感する悲しみをナバホも日本人ももっているとし私の前にあらわれたと言いました。

 『アテルイ』はアメリカの地に渡って来た、

イングランド人・ウェールズ人・スコットランド人・アイルランド人・オランダ人・フランス人・ドイツ人・イタリア人・ユダヤ人そしてつれてこられた黒人、またアジアからのチャイニーズ・コリィア、そして日本人等が来ているが日本人が一番おとなしくて真面目でモデル・マイノリティーだったと話しました。『アテルイ』から言わせるとアメリカは暴力と暴動を起こす民族や人種が大統領の座につくといい、だから日系人はとうぶんハワイや他の州の知事にはなれてもアメリカ大統領にはなれないだろうと言いました。『アテルイ』は、ハワイがアメリカの50番目の州になったのは日系人とハワイ先住民の共同の力であると言いました。

 私は『アテルイ』が話し終わると尋ねました。「なぜ、こんな色々な事を私に語るのですか。」『アテルイ』は言いました。「沖縄戦の後に私は日本の歴史に興味を持ち学びました。日本人は縄文時代から続く1万年以上の歴史をもっている。また信長・秀吉・家康のいた戦国時代に西洋と接触してすぐに鉄砲を自分達で創り最強の部隊をつくった。しかし江戸時代には鉄砲をほとんど使わず廃れさせた。私はそこに日本人が平和を創りだす文明を持っていると感じたからだ。アメリカを見たまえ、神から与えられた我々ナバホ族や他の先住民の土地を奪い虐げ世界最強の軍隊にはなったがアメリカ社会では生活の中に銃が蔓延し銃を捨て去ることができない、日々武装した生活が平和や文明的とかはいえないではないか、日本人は武器を捨て去ることのできる文明をもっているからだ。ナバホの願いも同じ平和だ武器で勝ち取る平和ではない、ただ神が与えしアメリカの大地で生まれ生きこの大地で死ぬことがナバホの願いだ」そう

言いナバホ族の『アテルイ』は足音を残し去って行きました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ