表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

悪夢

作者: 空箱

 最近私は怖い夢を見る。

 ここ十ヶ月の間、ずっと同じ夢を見続けていた。


 その夢には毎回同じ少年が現れる。

 色白で、艶やかな髪を持った少年だ。特に特徴的なのは、光がない黒い瞳だ。

 その少年の目を見ると、深い闇に吸い込まれたような気分になる。


 夢の中でその少年は私の前に現れては、家族、友人を次々と殺していく。

 決まって私は一番最後に殺されて、目を覚ますのだ。

 ある日は、包丁で。またある日は銃で。殺す手段は様々であった。


 そんな夢を見続けて、また今日も少年が出てきた。

 私の目の前で、両親の首を絞めている少年。少年の顔はこの状況にも関わらず穏やかだった。


 気味が悪い……。


 そう思いながら私は右手にあるものをぎゅっと握りしめ、少年に近づく。

 何度もこの悪夢を終わらせようとした。

 お母さんを庇おうとしたり、みんなで逃げようとしたりした。

 無理だった。必ず最後に私が殺される。誰一人として生き残らないのだ。


 もう、この手段しか残ってなかった。


 私は少年の背中にナイフを突き下ろした。

 少年は不思議そうな顔で、自分の服に広がる赤い染みを眺めた。

 しばらくそうしていたかと思ったら私を見て、にこりと笑った。


 そこで私の夢は途絶えた。私が死ぬことなく、夢は終わったのだった。


 その夢を最後に悪夢は見なくなった。

 でも、あの少年にナイフを突き刺した、あの感触と笑った顔が忘れられないままでいた。




 それからしばらくして、私は病院にいた。

 私に弟ができたのだ。今日、初めて顔を合わせる。


「あら、お姉ちゃんが来たわよ」


 お母さんが微笑みながら腕の中にいる我が子に話しかける。


 私はわくわくしながらお母さんの腕の中を覗き込んだ。


「ひっ……」


 思わず小さな悲鳴が出る。


 赤ちゃんは、光がない黒い目を私にまっすぐ向けて笑った――。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 読ませていただきました。 主人公は怯えながら毎日を過ごすことになりそうですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ