鈴音の覚悟①
川上さんはロビーで電話をしている。
私は疲れて先に眠ってしまった。
「……ごめんね、鈴音さん……」
次の日、私と川上さんは一緒にお出かけをしていた。
「川上さん見てみて!」
「わぁー、凄い。綺麗な景色だね」
「川上さんもたまには息抜きしないと!」
「えへへ、ありがと。」
やっぱり、川上さんの顔は見れない。
「鈴音さん」
「はいっ?」
カシャッとシャッター音が鳴った。
「ちょ、川上さん?」
「せっかく旅行(?)に来たんだから思い出の写真撮らないと。ね?」
「うー…」
私な川上さんに一体何枚撮られたのだろう。
「鈴音さんイイ笑顔してる。」
「そんなことないですよ。」
「蓮の時じゃ絶対見れない。」
蓮……か。あ、そうだ。いいこと思いついた。
****
また仕事が始まった。
社長が芦原蓮にアイドルとして活動させたいらしい。
「ってことなんだけど……蓮くん。」
「いやいや、突然過ぎません?」
川上さんと旅行に行った日以来、川上さんの前で"松原鈴音"を見せていない。
「アイドルってことはダンスや歌うってことだよね?」
「そういう事だね。蓮くんどうする?一応試しって言うのがあるらしいんだけど。」
「試しがあるなら、やってみる。そっから考えるよ」
「分かった。じゃあ連絡してくるから待ってて!」
「おう。」
川上さんは事務所から出ていった。
「……蓮くん……か。」
川上さんのことは好きだ。でも、迷惑かけられない。
だから、私は……俺は"芦原蓮"として生きるんだ。
「蓮くんOKもらったよ。早速だけど行こう!」
「え、あ、うぃっす。」
私たちはスタジオに来た。
そこで説明を受けて、やることにした。
最初は基本の発声練習。
そこから色んな先生からの個別指導。
気が付けば夜になっていた。
「蓮くんおつかれ。送ってくよ」
「あざっす。」
必要以上に川上さんと関わりたくない……
"好き"って気持ちが膨らんでいく。
「ねぇ、蓮くん…。いや、鈴音さん」
「……っ。」
私は息を飲んだ。
「この間はごめんね。ホテルでのこと。」
「あ、いいですよ。俺の方こそ迷惑かけて……」
「迷惑だなんて思ってないよ。」
「ありがとうございます。じゃ、お疲れ様でした、」
私は車から降りて、マンションの中に入っていった。