川上裕樹②
次の日私は学校に来ていた。
「鈴音昨日どうしたのよ。」
「具合悪くて……」
「え、大丈夫!?」
「大丈夫大丈夫」
「ねぇ鈴音」
「ん?」
「昨日鈴音がいない間に決まったんだけど、来週研修旅行だってさ。」
「はぁ!?」
「それの参加の有無の紙渡しとくね」
「ありがと。」
今更だけど、この子は芦原蓮の大ファンの内海杏。
「ねぇねぇ鈴音!!」
「今度はどうしたの。」
「あたしね、好きな人が出来たんだ。
それでね、相談があるんだけど……」
好きな人……かぁ。
「〜ってのはどうかな!?」
来週の研修旅行の時に告白をしたいそう。
「いいんじゃないかな?」
「頑張ってみるね!!」
杏は専門学校に来てから初めて出来た友達。
幸せになってもらいたい。
****
家に帰った後、私は川上さんに電話をした。
『もしもし?』
「あ、芦原です。」
『あ、はい鈴音さんね。』
「来週研修旅行があるらしいんですよ。」
『お、まじすか。』
「それが2泊3日らしくて。」
『ふむふむ、ちょっと待ってて。メモるから』
電話越しでガサガサと物音が聞こえた。
『お待たせ。やっぱりその研修旅行?には行くんでしょ?』
「私あんまり行くきないですけど……」
『せっかくの機会だし行っておいで。いつも仕事ばかりじゃ疲れちゃうよ?』
「それは川上さんも言えることじゃん。」
『僕はそれが仕事だからね。大丈夫だよ。』
「……ばか。」
『うるさいな。じゃあ僕仕事戻るね。』
「うん。頑張って」
『ありがとう。』
電話はほぼ同時に切ったと思う。
****
とうとう研修旅行の前日になってしまった。
いつも通り仕事は入っている。
でも川上さんが気を使って雑誌の撮影のみにしてくれていた。
「お疲れ様。」
車の中で紅茶をもらった。
「ありがとう」
「明日からだよね。研修旅行」
「……うん。」
本当は、行きたくない。
「気を付けてね。怪我してこないでよ?」
「大丈夫だってば。」
「でもあれだよね、旅行ってことは男もいるのか。」
急に何を言い出したと思えば……
「まぁ、共学ですしね」
「……」
「川上さん?」
「何でもないよ〜明日どこ集合?」
「一応学校ですけど…」
「送ってくよ。何時に来ればいい?」
「……じゃあ6時」
「了解。じゃあまた明日ね。」
「はい。」
私は車から降りた。明日も会えるのか。
そんな喜びに満ちていた。