芦原蓮②
「すみません川上さん、遅くなり……」
ドアを開けるとソファーの上でだらしなく座り寝ていた。
「……お疲れ様です。」
私はコーヒーを買って、川上さんの机の上に置いた。
「じゃあ私帰りま……」
事務所のドアを閉めようとした時だった。
「ん…?あ、松原さんごめんなさい…僕寝ちゃってたみたいで……」
川上さんの事起こしてしまったようだ。
「あ、ごめんなさい。川上さん起こしちゃいました?」
「んーん。送ってくよ。」
川上さんは立ち上がった時に机の上のコーヒーに気が付いたようだ。
「これ松原さんが買ってくれたの?」
「え、まぁ、はい。」
「ありがとう。いい眠気覚ましになりそうだよ。」
川上さんは早速コーヒーを飲んだ。
「さて、行こうか。」
いつも通り川上さんの車に乗る。
「七瀬さん、どんな人だったんですか。」
「ん?小篠くん?彼は僕とは違ってモテる男だったよ。ノノカとMOEに取り合いされていたからね。」
「ノノカさんって、亡くなったあの……?」
「そうそう。今はMOEと結婚して子供出来たそうだよ。女の子で名前はノノカと一緒だった気がする。」
「そうなんですか。」
「松原さんと同い歳くらいじゃないかな、確か。」
「え?!」
「小篠くん手放したのはちょっと悔しかったけど…今それと同じくらいの存在が出来たからね。」
「……え?」
「今の松原さんはあの時の七瀬と同じくらい。
応援してるよ。蓮くん。」
「……はい、」
「はい、じゃあついたよ。おつかれさま」
気がついたら、私のマンションの前だった。
「……」
「松原さん?」
「……帰りたくないです。」
まだ、まだ川上さんと居たい。
「……仕方ないなぁ。じゃあどこかご飯食べに行こうか。」
川上さんは苦笑いして近くのファミレスに車を止めた。
「小篠くんにもこんな事したよ笑」
「川上さん、七瀬さんの事好きですもんね。」
「そりゃあ僕が初めてスカウトした人だからね。
でもね、松原さん。」
「ん?」
「七瀬や君のおかげで、僕マネージャーの中ではトップなんだよ?」
「そうなんですか?」
「『川上さんがスカウトする子はいつも大人気だねぇ。今後も期待してるよ。』って。」
「……(////∧////)」
「あれ、松原さん顔真っ赤だよ?」
「う、うるさい!」
川上さん、仕事の話してる時の顔すごく真剣。
でも、私に対する時はいつも天然。
これが川上裕樹さんのいいところなのか。
****
ファミレスでご飯を食べて車に乗っていた。
「さて、これでちゃんと帰ってくれるかな?」
「……」
「松原さん?」
「……川上さんは彼女作らないんですか」
って何聞いてんだ私!!
「僕なんて誰も好きにならないよ〜」
「そんなことないと思いますよ。川上さんいい人ですもん。」
「ありがとう。じゃあ家まで送るね。」
「はい。」
私のマンションの前に車を止めた時だった。
「あ、れ、?」
川上さんが驚いて車を降りた。
私も、降りていった、
「小篠くんじゃないか!!」
川上さんが声をかけた人は、元佐藤七瀬の小篠翔太さん。
「川上さんっすか!?」
「久しぶりだねー元気だった!?」
「まぁ、この通り!希風も2歳になったし!」
「MOEさんもお久しぶりです。」
「お久しぶりですっ。あの、後ろの子は?」
「あ、ごめんごめん。松原さんこっち来て!」
川上さんに呼ばれ、隣に並んだ。
「この子、今僕がマネージャーやってる子なんだ。」
『え!?』
「さて、どの芸能人か当ててみてね♪」
「あ、え?MOE分かる?」
「わかんない〜」
「ヒントは小篠くんみたいなことしてる。」
「もしかして……男装?」
私は頷いた。
「川上さんってばそーゆー趣味なんですね……
俺に女装させてこの子には男装とか……」
「ち、違うもん!」
「あ、しょーちゃん。希風泣き出したからそろそろ戻ろ?」
「そーだな。川上さん、あー、えっと。」
「松原です。」
「松原さん、頑張ってね。」
小篠さんとMOEさんはマンションの中へ入っていった。
「小篠くんまだこのマンション住んでたんだ。」
「え、私もこのマンションなのに!?」
「えへへ……」
小篠さんとMOEさん……お似合いだったな。
「まぁ、じゃあ気を付けてね。今日はおつかれさま」
「……はい。おつかれさまです。」
私は川上さんにお辞儀をして、マンションの中へ入っていった。
「……はぁ…松原さんと居るとおかしくなりそー…」