川上さんと私②
あの日以来、髪の長いウィッグは被っていない。
なぜなら学校を辞めたから。
「蓮くん次はね……」
仕事に専念することにしたんだ。
元々学校行っててもついていけなかったし、杏とも顔合わせたくないし……。
「鈴音さんっ。」
「は!……ん…」
こうやって事務所にいる間他の人にバレないようにイチャつくのも悪くないし!
「……」
ただ……私、川上さんに隠してることがあるんだ。
「鈴音さん?」
「川上さん、突然だけど自分辞めようと思うんです。」
「え?なにを?」
「この仕事を。」
「え?!?!」
「まぁ、この話はまた今度しますよ。じゃ俺行ってきますね♪」
きっと隠してそのままこの仕事やってたらバレた時なんて言われるか。
「きっと、怒鳴られるんだろうな〜」
なんて、すこしニコニコしながらドラマの撮影をする。
川上さんが遠くで困った顔をしてみている。
ごめんね、川上さん。
****
あれから一週間後。川上さんの誕生日。
今日は仕事が休みなので川上さん家に来ている。
「川上さん誕生日おめでとー!」
「ありがと〜」
ケーキを手作りして持ってきた。
「はい、じゃあこれ。プレゼント」
いつも携帯で時間を確認していたから、腕時計をプレゼントした。
「わ、いいの?!こんな高そうなヤツ!」
「いーのいーの!」
「ありがと鈴音さん!」
「いえいえ〜。ケーキ食べよ?」
「そうだね〜」
私たちはケーキを食べ始めた。
「にしても川上さん27かぁ……」
「鈴音さんやっと20歳だもんね。」
「どっちみち7歳差は変えられないのか……」
「あはは。そこは変えられないよ。
てかこのケーキ美味しいね。」
「ほんと?ありがと。」
ケーキを食べ終わったあと、私たちは寝っ転がっていた。
「ねぇ、この間の芸能界辞めるって話……なんで?」
「え?あぁ、それか。気付かなかった?」
「え?なにが?!」
「赤ちゃんが出来たの。私と川上さんの。」
「えっ!?」
「だからお仕事やめます。」
「うん、辞めて!」
「ちなみに男の子だそうです。」
「おおおおお!」
川上さん、これから一緒に楽しく暮らそうね。