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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

「転生しても私は私」

退位魔王・ルシフルの婿入り

作者: 柳銀竜

転生しても私は私の婿入り話。

第二段です!

今度は元魔王様です!

 


 アンフェール大陸。


 魔王国の港で、魔王ルシフルが甥っ子であるラジールに詰め寄られていた。


「叔父様!本当に行くんですか!!」


 ルシフルはユリナが国に帰った後。

 国中に水を作る装置を設定し終えて、新たな旨い肉を探す傍ら、臣下に嫁いだ妹の息子を、行儀見習いの名目で城に招いた。


 そしてルシフルは甥に、笑顔で圧力をかけながら養子縁組の書類にサインをさせた。


 後で妹に怨まれたが(彼は長男だった)目的の為には、血の近い成人男性が必要だったのだ。


妹の下の息子は、まだ未成年だったので直ぐに即位はさせられない。


 無理矢理。次期魔王にされたラジールが、文句を言いながらも帝王学を学んでいる間に、ルシフルは貴族達に根回しをし、無事にラジールを即位させる事に成功した。


 一年で良くできたと、自分を誉めてやりたい。


 しかしラジールは、相談役としてルシフルが国に残ると思っていた。


 だがルシフルは、ラジールが即位すると、大量の肉と金貨を魔術で作った袋に入れて、旅支度を始めたのだ。


 そして、何故か国を出ると言い出した。


 ルシフルから、そっくりそのまま引き継いだ側近達は、やっぱりな・・みたいな顔をして止める気配がない。


 ラジールは、元主を引き留めもしない冷たい側近達に憤りを感じながら、ルシフルに残ってくれるように言い募るが、彼は全く聞き耳を持ってくれなかった。


「では、私は行くとしよう。側近達は優秀だから問題があれば彼等を頼れ。元気でな」


 ルシフルは、ヒラヒラと手を振り船に乗り込んだ。


「叔父様!」


 その日・・・


港には新魔王の悲痛な叫び声が、悲しく響いた・・・






 それから数日後。


 ゼルギュウム国にある。ウイング伯爵領の領主の屋敷に、一人の男性が訪ねてきた。


 元魔王。ルシフルだ。


 屋敷のベルを鳴らすと、玄関からではなく、庭から赤毛の男が出てきた。


「誰だ?この国の者では無いな・・その目・・魔族か?」


「確かに私は魔族だが、お前 こそ誰だ?ユリナは?シュエとグレルはどこにいる?」


 ルシフルが炎華に聞くと、炎華は胸を張って挑発的に笑いながら、ルシフルに言い放った。


「俺は炎華!ユリナ・ウイングの夫だ!」


「?シュエとグレルが夫だろう?」


「三番目だ!」


 ルシフルはユリナが伯爵となり、重婚の資格を得て、シュエとグレルの二人と婚姻を結んだのは知っていた。


 だが、他にも求婚者が居たとは・・・


「・・そうか・・出遅れたな。私はルシフル。ただの魔族だ。ユリナ・ウイング伯爵はいるか?」


 ルシフルがそう聞くと、炎華は立ちふさがるように入り口の前に移動する。


「ただの魔族に合わせる必要は無い!」


 炎華がそう叫んだ瞬間。騒ぎを聞き付けたユリナが、ヒョコッと窓から顔を出してきた。

そしてルシフルを見つけると、ニパッと懐かしそうに笑い、話しかけてきた。


「あ!魔王様!お久しぶりです。」


 自分の顔を、覚えていたのは嬉しいが、あの顔は・・・


あの時。舞踏会に出てくれと言うルシフルの頼みを承諾したにも関わらず、舞踏会をすっぽかし逃亡したくせに、その事実をスッカリ忘れているらしい(彼女は顔に出るから覚えているなら、顔色を変えるはずだ)


 謝りもしないと言うより、覚えてもいなさそうな彼女に、多少・・・いやかなり腹が立つ。


 だから、多少の意地悪は許してほしい・・・・・・


「ユリナ!危ないから・・え!魔王!!」


「(元)だ。今は退位して甥に位を譲っている」


「へー。炎華と一緒ですね彼も(元)竜王なんですよ」


 なんと、この男も元王らしい。


 まあ、そんな話しはどうでも言いが。


「そうか。所でユリナ、少々頼み事があるのだが」


「頼み事?まあ、話だけなら聞きますよ。シュエ!グレル!お客様にお茶出して!」


「「分かった」」


 ユリナが。部屋のなかに引っ込んで大声を出すと、男二人分の声が聞こえてきた。


 どうやら、二人は室内にいたらしい。


 そしてユリナが玄関を開けると、ルシフルと炎華を引き連れて、貴族が来た時の為にゼルギュウム式に作った応接室にルシフルを招いた。


 部屋に入ると、シュエとグレルがお茶と菓子を持って入って来る。


 ルシフルを椅子に座らせ、ユリナが向かいに座り、シュエとグレルと炎華がユリナの背後に控えると、ユリナは口を開いた。


「で?頼み事とは何ですか?」


「その前にこれを見てくれ」


 ルシフルはそう言うと、魔術で作った袋から麻袋を取りだし、ユリナに差し出した。


 ユリナが中を見ると・・


「お肉ですか・・・うわっ!凄い霜降り!!」


「田舎の村で飼育されていてな。食べてみろ」


「炎華!これ焼いて!!」


 炎華はブレスを、最小出力で口から吐き(炎華は今まで、そんな風にブレスを使った事は無かったが、ユリナの為に頑張った)茶菓子用に、多目に持ってきた皿にのせて肉を焼く。


 炎華はコンガリと両面を焼くと、ユリナに差し出した。


 ユリナはそれを、菓子用のナイフとフォークで食べる。


「うわっ・・・柔らかい!!口の中で蕩ける・・・」


「旨いか?」


「死ぬほど美味しい!!」


 ルシフルが微笑みながら言うと、ユリナは子供のように笑った。


「その魔牛は少数部族が飼育していて、かなり珍しいモノだ。これから量産していくが今は、まだ輸出出来ない。百頭も居ないからな」


「え!どのくらい待てば、輸入出来るんですか!」


 ユリナがそう言うと、ルシフルはニヤリと悪戯っぽく笑った。


「敬語を止めたら答えてやろう」


「いつなの!魔王様!」


「私はルシフルと言う。名前で呼べ」


「いつなの!ルシフル!」


 ユリナがやけくそ気味に叫ぶと、ルシフルは満足げに微笑んだ。


「七年はかかるな」


「・・七年・・長い・・」


「私なら、定期的に手に入れられるがどうする?」


「お願い!ちょっとだけ分けて!」


 ユリナがね?ね?とルシフルにすがるように身を乗り出す。背後の三人は、ユリナと距離が近いルシフルに若干殺気だっていた。


「無償で提供は、出来ないな」


「お金?」


 ユリナがそう聞くと、ルシフルは艶かに笑った。


「いいや。私を貰ってくれればいい」


「は?」


 ユリナがポカーンと口を開ける。


 え?・・・貰えって言った?いやいや・・・・聞き間違い・・・ひやっ!!え!!


 ルシフルは混乱するユリナの手に、自分の手を重ねながら、悲しげに上目遣いでユリナを見上げる。


 勿論。以外とお人好しな彼女を、落とすためだ。


「ユリナ・・私では駄目だろうか?」


「え・・でも・・」


 彼女の顔を見ると、焦って居るのが分かる。

 必死に隠してはいるが、目が泳いでいた。


 暫くの間。ルシフルがじっとユリナを見ていると、彼女は言い訳が何も思い付かず無かったらしく、根負けした。


 そして意を決して、最後の手段とばかりに口を開く。


「・・・私は今伯爵で、シュエとグレルと炎華の三人と結婚してるんだ。今私と結婚すると、四番目の夫になるんだよ?嫌でしょ?ね?ね?」


 ユリナがそう言うと、ルシフルはクスクスと可笑しそうに笑い、ユリナの手の指に自分の指を絡ませる。


「いや。全て知っているから構わない。まあ、炎華殿が居るのは予想外だかな・・私は、君と生きていけるなら三番目でも四番目でも構わないよ・・他に問題があるか?」


「・・・無い・・」


 ユリナが不貞腐れた様に言うと、ルシフルはニヤリと笑い、ユリナの唇を奪った。


「これから宜しく。我が妻よ」


 こうして、ユリナは四人目の夫を手に入れた。


 因みに無断でユリナの唇を奪ったルシフルは、この後。

 シュエ、グレル、炎華の三人に殴られたりするが、魔族はかなり丈夫なのでなんの問題も無かった。

 そしてせっせとユリナの為に、オカマの美食家に習った(退位準備で忙しい中。時間を捻り出して教えもらった)料理の腕で、シュエと共にユリナの舌を生涯楽しませた。




元魔王様でした。

彼はユリナに。小さな嫌がらせとして、夫と言えど、恥ずかしがりやの彼女の唇を人前で奪いました。

しかし、他の四人はカンカンに怒り、結構ズタボロになるまで殴られたりしています。

しかし、彼のユリナに対する奉仕精神を認められ、段々と食事の支度や子守り担当要員となっていきました。

炎華とグレルは、ちょっと色々雑なので・・・・・


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