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歌好き少年と大粒の涙《上》

作者: 赤ずきん

 ある町に小さな少年が居ました。


 小さな少年は歌うことが大好きです。


 少年はいつも歌っています。


 ほら、今でも聞こえてくるでしょう?


 少年の歌声が、耳を澄ませてみてください。


 それはとても高らかで、そして楽しそう。


 少年は歌うことが心底好きなようです。


 でも少年は実はここだけの話


 とっても、とーっても音痴なのです。


 それでも少年は歌うことが大好きなのです。


 少年は朝から眠るまで歌います。


 町の人達も少年の歌声をよく聞きます。


 ある日この町の領主様のおうちで、領主様の娘の誕生日パーティーが開かれることになりました。


 少年が歌いながら町を散歩していると、噴水の前ではそのビラ配りで人がわんさかと集まっています。


 少年は親から話は聞いていましたが、ビラには目もくれず、その場を通り抜けようとします。


 正直に言うと、領主様にもその娘にも彼には興味の無い話です。


 そんな所に行くよりは、町にいて歌を歌っていた方がまだましだ。


 と内心思っていました。


 ですが通り抜けた後、風で飛ばされてきた一枚の紙が少年の顔に張り付きました。


 少年は驚きながらも顔についた紙を取り、内容を読みました。


 それは先ほど噴水の前で配られていたであろうビラで、少年は辺りに捨てようとしましたが、一番下の欄に目を奪われます。


 なんと、一番下のスケジュールのところには食事の最中、子供限定のこの町で一番歌が上手い子供を決める大会が開かれると書いてあるのです。


 もしも優勝したら賞金がなんと、1000ゴールドも貰えるのです。


 それだけ貰えたら、なんだって買える、欲しいものは全部手にはいる。


 ですが少年は違いました。


 僕も大スターみたいに舞台に立って歌を歌えるんだ!


 少年の目は輝いていました。


 裏には切り取りで応募用紙があり、少年は急いで家へと帰り、自分の名前を書いて城まで行きました。


 城には話を聞き付けて子供たちがわんさかと集まっています。


 一人一人箱に自分の名前が書かれた用紙を入れていきます。


 少年も急いで箱の中に紙を入れ、ちゃんと入った事を確認すると意気揚々と大きな声で歌いながら家へと帰りました。


 それから一週間、彼はずっと歌の練習を続けました。


 雨の日も風の日も、暖かい日も寒い日も、ずっと歌い続けました。


 その頃お城では子供たちの歌う順番を決めるため用紙を見返していました。


 ですがその用紙は少年の所で止まります。


「この子供は町では音痴で、有名らしいぞ?」


「外しとこう。そんな歌声を娘に聞かせる訳にはいかん」


 そういうと少年の名前が書かれた紙はゴミ箱にクシャクシャにして捨てられました。



 そして、いよいよ当日、少年はそんなことも知らずに高らかに歩き出しました。


 今日は思いっきり唄おう! そう、誓いました。


 少年の両親も一緒です。


 歌うまでは話が長く、少年も項垂れていましたが、いざ子供の歌の大会が始まると気合いが入ります。


 その時少年はある少年を目にしました。


 それは近所に住む友達でした。


 彼は周りからちやほやされながら丁寧にお辞儀をしています。


「頑張ってね♪応援してるわ♪」


「あなたの歌声、私好きよ!」


「あ、ありがとうございます。」


 彼はとっても、律儀で優しい少年でした。


 彼は少年に気づくと急いで少年へ駆け寄りました。


「やぁ、君も来てたんだ…お互い頑張ろうね、でも僕は初戦で負けちゃいそうだ♪君ならきっと優勝できるよ♪さぁ一緒に並ぼう」


 そういうと彼は少年の手を引き、列へと並びました。


「さぁ!始まりました!子供たちの歌うま大会♪トップバッターは、アリーナとタールだぁ!」


 次々名前が呼ばれるなかついに少年の友達が呼ばれた。


 彼が登場すると同時に今までにない凄い歓声が舞い上がる。


 彼の歌声は素晴らしいものだった。


 歌が終わるど同時に圧倒的に支持を得た。


 今度こそ自分の番だ。


 そう思った。


 だが来ない。


 何度も何度もその繰り返しで、とうとう彼は名前を呼ばれることは無かった。


 そして優勝は少年の友達になった。


 それを見ると少年は辛くなり、なにも言わず走り出した。


 部屋を出て門を抜け町へと戻った。


 暗い夜空を見上げると、頬につたう大粒の涙。


 そこから少年は泣き続けた。


 勢いが止まらなかった。


 体の水分が無くなって干からびてしまうんじゃないかと言うくらい涙を流した。


 今まで自分は何をして来たのかと、悲しくなりました。


 そして少年は思ったのです。


 もう、歌を歌うのをやめよう、と。


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