3.初対面だけど再会でもあって
クーデリア騎士団の拠点であるサッバッカ城から王都まで、馬を飛ばして二日かかる。二人は愛馬を駆って、予定通りに王都へ入った。
王宮に上がるには、正装でなくてはならない。移動の為に軽装であった二人は支度室と呼ばれる個室を与えられ、それぞれ着替えることとなった。
「私は騎士団の団服を持参してますので、結構です」
「いえ、これは陛下の命でございます故」
クレアに与えられた質素な一室。そこでクレアは、恭しく衣服を掲げる女官と向き合っていた。
クーデリア騎士団の副団長である自分は、正装とは無論騎士団のそれであるはずだ。しかし女官の持っているものは、一般的な姫の纏うドレスなのだ。それも、服飾に疎いクレアでさえそれとわかるほどの、豪奢なもの。
「陛下の命と言われても、困ります。私はクーデリア騎士団の副団長としてお呼びが」
「いえ。陛下はエクスリーン家のクレア姫をお呼び立てしておられるのです。タイラー団長がここに呼ばれましたのは、貴女様の保護権が現在タイラーさまにあるからと言うだけのことと伺っております」
感情の読み取れない平らかな声で言われ、クレアはぐ、と息を呑む。
「時間が押し迫っております。さあ、クレア姫。こちらにお着替え召されませ」
団服を抱きしめて動かないクレアにしびれが切れたのか、女官がパチンと指を鳴らして合図をする。そうすれば、数人の端女が静かに現れて、クレアを囲んだ。簡素な旅服を剥がしにかかる。
「や、止めて! その、自分でやれる!」
幼い頃から、己のことは己でという方針で生きてきたクレアには、着替えさせてもらうというのは、ただ情けない事であった。慌てて彼女たちを拒否し、渋々とドレスを手に取る。
「着ればいいんでしょう? 分かりましたから、彼女たちを下げてください」
「お時間が掛かりましょう?」
「手早くしますから」
言って、クレアは観念したようにするすると服を脱いだ。
日々の訓練の賜物で、贅肉のない躰。足腰を使うせいで、王都に住まう姫たちよりは豊かな腰回りであるが、それを優にカバーするほどの乳房がある。
鍛えぬかれた肢体を、女官はため息交じりに見つめていた。が、左腕に無残な傷跡を見つけて、眉根を寄せる。
「手袋を用意して。肘まで隠れる物を」
脇に控えていた部下にそっと耳打ちすれば、すぐにレース細工の美しい白い手袋を持って来た。
「クレア様。ドレスの後にはこれもお願い致します」
「はい? ああ、それもしなくちゃいけないの」
レースをふんだんに使った翡翠色のドレスに身を包んだクレアが、仏頂面で女官を見やった。
「ええ。それと、陛下の御前に出るのですから、失礼のないよう、御髪を整えさせて頂きます。勿論、お顔の方も少し手入れさせて頂きますわね」
「え」
再びパチンと鳴れば、化粧箱をかかえた侍女たちがわらわらとクレアを囲んだ。文句を言う間もなく髪を梳られ、白粉をはたかれる。馴染みのない香油を刷り込まれ、口には紅が差される。
(こんな姿、ライに見られたら一生笑いものにされる!)
頭部をこねくり回されながら、クレアは城から見送ってくれた仲間の顔を思い出していた。
『こういうモンでもつけてみろよ』
いつだったか、新品の紅をくれたことがあった。姫貝に乗った艶やかな赤と、それをくれた男の顔を交互に見やれば、ライはぷいと横を向いて、ぶっきらぼうに言った。
『お前はそのチチしか女らしいところがねえんだ。もっと女らしくなんなきゃ、いずれオトコになって、もげちまうぞ』
『もげ……っ!』
酷い言い草だ。趣味の悪いからかいだ。瞬間的にかっとしたクレアは、その時はライの方が上官であったにもかかわらず、紅を投げつけ、スネを思い切り蹴り上げた。固い革靴で、全力で蹴られたライは転倒し、そのはずみで後頭部をしこたま床に打ち付け、こぶを作った。確か、ライが謝ってくるまで三日は口を利かなかったはずだ。
そんなライが、いっぱしの姫君のように身づくろいされている自分を見たら、何と言ってからかうのか。
(いなくてよかった……っ)
慣れない白粉の香りに咽ながら、クレアはしみじみとそう思った。
*
果てるともしれなかった化粧の時間からようやく解放されたクレアは、移動するよう促された。
「では、ここでお待ちくださいませ」
「はい」
クレアは、謁見室の前室であると思われる豪華な一室に通された。贅を凝らした調度品で溢れた部屋は、田舎暮らしのクレアにはただ珍しい。
(でも、居心地悪いな。サッバッカ城の方がよっぽど落ち着く)
緞子張りの椅子に腰かけたものの、妙にふわふわした座り心地に、もぞもぞする。立ち上がり、所在無げに室内を見渡した。
と、控えめなノックの音がして、さっきとは違う女官が現れた。背後を振り返り、声をかける。
「騎士団長様、こちらへどうぞ」
「はいはい。あ、クレアちゃー……クレアちゃん⁉」
ひょいと入ってきたアルフレッドが、端っこにいたクレアを見て目を見開く。大きく開けた口からは、「あわわ」と妙な声が漏れた。
「すみません。団服を着用するつもりだったんですが、陛下の命だと言うことでこのドレスが用意されておりまして」
副団長たる者が浮かれた格好をしていることに怒りを覚えたのかもしれない、とクレアは身を縮めて頭を下げた。普段はきっちりと編み込まれている髪が緩く巻かれ、さらりと肩口から流れる。
「叱責は後で受けます。申し訳ありま……だ、団長!?」
つかつかと近寄ってきたアルフレッドは、クレアの腕を掴んだ。間近で、その顔を見る。
「あ。あの、おかしいですか、やはり」
鏡をどうぞと勧められたのだが、クレアはそれを断っている。普段化粧に馴染みのない自分がどんなみっともない顔をしているかと思うと、見る勇気が湧かなかったのだ。
「陛下の御前と言うことでしたので、これも礼儀なのかと化粧をして頂いたのですけど、あの、団長?」
アルフレッドの瞳に赤味が差し、唇はわなわなと震えている。
(お、怒ってる……)
陛下の命だからとはいえ、アルフレッドに従うべきだったのだ。騎士団の仲間は皆、国王ではなく騎士団長のアルフレッドに忠誠を誓っているし、自分もそのつもりだったのに。
それが、騎士としてではなく一人の女としての恰好をしていては、アルフレッドが怒るのも、当然だ。
と、アルフレッドが口を開く。
「何でこんな恰好しちゃうの」
声音には明らかな怒りの色があった。滅多に聞かない低い声に、クレアは身を竦ませた。
「す、すみません。やはり、軽率でした。団長の許可もないのに」
「そうだよ、ダメだよ。こんな恰好しちゃ、向こうが絶対クレアちゃんを欲しがるだろ」
「は?」
意味が分からず、クレアは首を傾げる。艶のある髪が無防備に揺れるのを見たアルフレッドは、思わず声を荒げた。
「可愛くしたらだめだって言ってる! ていうかああもう、なんだよこれ、なんでこんな時にそんな恰好するんだよ。ここじゃなくてサッバッカでしてよ! ああでもそれも困るけどさあ」
「だ、団長?」
はあ、と手のひらで自身の顔を覆ったアルフレッドだったが、指の隙間からちらりとクレアを見やる。しばらく眺めて、また「ああもうどうしようこれ」と切なそうな声を漏らした。
「あ、あの。着替えて来た方がよいでしょうか?」
申し訳なくなったクレアがおずおずと言えば、アルフレッドは首を横に振る。
「陛下の命令なんだよね? 仕方ない、そのままでいて」
「はい……」
クレアはしゅんと項垂れた。
副団長に任命されたのは僅か数日前。それが、既に団長にこんな顔をさせているなんて情けない。自分の意識が低いから、団服を蔑にしてしまったのだと激しく反省する。
と、規則的なノック音と共に、先程とは別の女官が姿を現した。
「謁見室に御移動をお願い致します」
「はい」
クレアが緊張した面持ちで頷く。代わりにアルフレッドはこの世の終わりのような顔をして、「サッバッカに今すぐ戻りたい……」と小さく洩らした。
謁見室はさすが、国の威信をかけた造りだった。高い天井には宝石をちりばめた絵画が広がっており、美しい女神たちが祝福を注ぐようにこちらを見下ろしていた。
「国王陛下のおなりにございます」
「は!」
騎士としての姿勢をとろうとしたクレアに、アルフレッドが「姫の方の礼でお願い」と苦笑する。クレアは慌てて、ドレスの裾を摘み、膝を折った。そっと首を垂れる。
すぐに人のやって来る気配がし、玉座に腰を下ろす音がした。
「面を上げなさい」
「はい」
クレアが顔を持ち上げれば、いつもは遠巻きにしか眺めることのなかった壮年の男がいた。
五十を目前にした恰幅の良い国王は、クレアを見て取ると人の良さそうな笑顔を見せた。
「おお、おお。そなたがエクスリーン家の末娘、クレア姫だね」
「はい」
「なんと見目麗しい事よ。このような姫がサッバッカに埋もれていたとは知らなかった。王都にいればさぞかし社交界を賑わせたことだろうね」
「恐れ多いお言葉。ありがとうございます」
「なるほどなるほど。リヴァイス王子はよい目をお持ちだ」
国王は満足げに頷いた。
「失礼ですが、陛下。そのリヴァイス王子はどこでクレア姫を見初められたのでしょう?」
アルフレッドが訊く。
「それがの、幼き時からの縁があるそうだよ」
国王はそっと声を抑えた。
「儂も人狼族をこの目で見たのは初めてなのだが、彼らは儂たち人族と見目が全く変わらぬ。いや、美しすぎるきらいはあるな。そういう者たちをあえて選んで寄越したのかもしれんが、リヴァイス王子は中々どうして、美丈夫であったぞ。
して、彼らは両手首にぐるりと狼の毛が生えているのだが、これが唯一の判別法であるらしい。しかしそれも、腕輪の一種だと言われたら納得してしまう程度。あれでは市街を歩いていても区別が出来ぬわ」
クレアは「ふむ」と呟いた。使者の言うことはやはり本当だったのだ。
「そんな容姿であるから、人狼族は人型を取って他国を移動することも多々あるらしい」
「それは、そうなるでしょうね」
クレアが苦く笑った。人族と区別がつかないという話を使者から聞いた時から、考えていたことだ。戦にならなかったからよかったものの、身の内にするりと入り込まれ、中から掻き回されでもしていたらと思うと身が冷える。どれだけ不利になったか知れない。
「なので、王子も人型を取っていた際に姫と接触していたのであろう」
「はあ。記憶に、ないのですけれど」
幼い時というのは、物心がつく前だろうか。いや、しかしそんな時分に少し会っていたとして、結婚話には結びつかないような気がする。何より、これまでの自分に誰かに結婚を申し込まれるようなキラキラした記憶はない。クレアは首を傾げるばかりだった。
「さて、早速本題に入ろう。使者から少し話を聞いているかと思うが、実はクレア姫に縁談が舞い込んできてね。トウラン国第一王子であるリヴァイス王子がそなたをぜひ妃にと、強く申し入れられておるのだ」
あああ、やはり事実であったか。国王を前にした騎士団の二人は表情を崩すことはなかったが、内心深いため息をついていた。
「これは、長きに渡って争ってきた人族と人狼族を取り持つ、大きな架け橋となる話だよ。哀しい歴史がようやく真の終焉を迎えるわけだ」
国王が続ける。
「トウランは姫を迎えることが出来れば我が国と友好国として固く結束していきたいと言っている。条件もまた、異を唱えるところがないほどに素晴らしい。正直に言わせてもらうが、儂はぜひこの申し入れを受けたいと思っておる」
「陛下。失礼を承知で申し上げますが、吟味された上でのお言葉でしょうか。私はクレアの保護者として容易に賛成いたしかねます」
アルフレッドが焦ったように言う。まさか、国王がここまで諸手を挙げてこの話を進めようとしているとは思っていなかったのだ。
「うむうむ、そなたの意見はもっとも。だが安心するがよい。これは元老院と共に意見を重ねた上でのことなのだ。クレア姫の父であるアラン殿も賛成しておる」
「父も、でございますか」
「左様。娘がそのような大役を果たせるならば是非に、と申しておった」
アルフレッドが天を仰いだ。どうしたものか。話はもう決定しているようなものではないか。
「クレア姫も嫁してもおかしくない年齢である。どうだろう、この話、受けて頂けるかな」
国王にこう言われてしまえば、断るという選択肢は無いも同然である。クレアは頷くことしかできない。
クレアがぐっと声を詰まらせ、アルフレッドが口を開きかけた、その時だった。
国王の側近の一人がそっと近寄ってきて国王に耳打ちをした。
「ほう、リヴァイス王子がここへ?」
声を洩らした国王がクレアとアルフレッドを見る。少しの逡巡の後、王は「こちらへ案内せよ」と側近へ言った。騎士団の二人に笑いかける。
「クレア姫が来たと聞いた王子がこちらへ来られたようだ。いやはや、御執心であらせられることだね」
「え? ここへ、ですか?」
「ああ。ちょうどいいであろう。姫も、王子の顔を見れば過去の出会いを思い出すやもしれん」
国王が鷹揚に笑ったのとほぼ同時に、「リヴァイス王子がおみえになりました」と先触れの侍女が現れた。
「お通ししなさい」
「はい」
クレアたちが入ってきた、荘厳な扉が一旦閉じられる。少しの間があって、それがゆっくりと開いた。
他国とはいえ王族を出迎えることに変わりはない。クレアとアルフレッドは礼の姿勢をとって顔を伏せた。
「失礼する。クレア姫が到着したと聞いたので、挨拶に参りました」
足音も荒く入ってきた声は、思いのほか若い。成人(十五歳)してまだ間もないないころだろうかとクレアは推察した。
「おうおう、王子。今夜にでも場を設けようと思っておりましたのに」
「形式ばったものは必要ないですよ、ゴッペリア国王」
リヴァイス王子のものと思われる足音は、真っ直ぐにクレアに向かって来る。
床の絨毯を見つめていたクレアの視界に、質の良い革靴の先が見えた。
「クレア・エクスリーン姫か」
「はい」
「面を上げてくれ」
クレアはゆっくりと顔を上げた。
目の前に、まだ幼さを僅かに残した男がいた。緑水石のような瞳が印象的な、造作の整った顔。一つに束ねられた銀髪が日に焼けた健康そうな肌に良く似合う。確かに、国王や使者が言う通りの綺麗な男だった。
ただ、男の右頬には斜めに大きく一筋、太刀傷が走っていた。時を経た傷は最近ついたものではなさそうだ。
クレアをまじまじと見た少年は、「ふうん」と呟いた。腰に手をあて、頭のてっぺんからつま先まで無遠慮に眺めまわす。不遜な態度は確かに王族の持つものだった。
クレアは咄嗟に彼の手首に視線をやった。なるほど、白銀の毛皮が手環のようにぐるりと巻いている。これは、飾りと見間違えてしまうだろう。
「なんだ、綺麗じゃないか。ちゃんと女に見える」
心底驚いたような口ぶりに、クレアは王子に視線を戻す。無意識に眉間に皺を刻んでいた。初対面の女に対して思慮のない言葉である。
「失礼ですよ、王子」
少年の横についた、三十半ばの男が嗜める。側近だろうか、こちらもまた美しい男だった。黒髪に黒い瞳、日に焼けた蜜色の肌。大きな体躯をしており、衣服の上からの素晴らしい筋肉を纏っていることが窺い知れた。
「王子の側近のクラハと申します。クレア姫、お美しく成長なさいましたね」
「クラハ⁉」
驚いたように声を上げたのは、クレアの隣で顔を伏せていたアルフレッドだった。唖然とした顔でクラハと名乗った男を見つめている。クラハはそんなアルフレッドににっこりと笑ってみせた。
「君とも、久しぶりだね。再会できてうれしいよ、アルフレッド」
「なんだ、アルフレッドとも知り合いなのか。では、サッバッカでの御縁かな?」
国王が訊くと、クラハが笑顔で答えた。
「実を申しますと、十五年ほど前にこちらの国の武闘会に参加させて頂いたことがあるのです。その時対戦したのがアルフレッド殿なのですよ」
「なんと」
「申し訳ありません。どうしても、自身の実力を試してみたくて人族のフリをしました」
悪びれた風もなく言い、クラハは続けた。
「しかしアルフレッド殿に大敗を喫しました。彼は素晴らしい武人ですね」
「ほう。それはそれは」
国王が鷹揚に笑ったが、脇に控えた宰相の笑顔は引きつっている。武闘会は国王の御前試合である。そんなところにまで人狼族の侵入を許していたと思えば、笑えるべくもないだろう。
「そうなのか、クラハ」
主である王子も、それは知らないことだったらしい。驚いたように側近を見た。
「ええ。言葉通り、尻尾を巻いて逃げ帰りました。ねえ、アルフレッド」
「いや、随分苦戦させられた」
「勝っておいて、何を言うやら」
クスクスと笑いあったクラハとアルフレッドだった。が、王子に視線を向けたアルフレッドがすぐに表情を変える。息を呑み、クレアと王子を交互に見た。
「まさか。その頬の傷……」
「クレア姫、失礼」
王子がクレアの左腕を取った。手袋を一息に抜き取る。剝き出しになったクレアの腕に視線を落とす。
「あの、如何なさいました? リヴァイス王子」
「痕、残ったか」
訝しげに眉根を寄せていたクレアだったが、その言葉にはっと瞳を開く。王子の頬に走る太刀傷を凝視し、「もしや」と声を洩らした。
「もしや、あの時の白銀の……?」
深緑の瞳が真っ直ぐにクレアを捉えた。その瞳が、五年前向き合った獣のそれと合致する。間違いない、この王子は、あのとき死を覚悟した自分と対峙したあの狼だ。
王子は「そうだ」と短く答えた。
「あの時お前を傷つけたのは、俺だ。この頬の傷、覚えがあるだろ?」
クレアは頷いた。あの時狼の右頬に切り付けた感触までも、思い返すことができる。
「あの時貰った薬で妹は助かった。礼を言う」
「! そう。よかった」
クレアは小さく笑んだ。狼の妹がどうなっただろうと、心配していたものだ。
「妹君は、もうすっかり元気なの?」
訊けば、王子はこっくり頷いて続けた。
「大事ない。それで、本題に入ろう。俺はあの時、神に誓いを立てていた。その誓いを果たすべく、ここへ来たんだ」
「誓い?」
「妹、アイリーンを助けてくれる遣いを寄越してくれ、と。男ならば、俺はその者に騎士としての忠誠を誓おう。女ならば、妻として生涯愛を捧げようと誓った」
「は」
「な」
騎士団二人の表情が奇妙に一致した。
「というわけで、クレア・エクスリーン姫。俺は神への誓いの下に、あなたに結婚を申し込む。俺の妻となってくれ」
思考を止めたクレアの眼の前には、嘘偽りない、真摯な光を宿した緑水石の双眸があった。
「生涯、愛し続けると誓う。さあ、返事を。クレア姫」
アルフレッドが小さく唸った。
不定期更新です。よろしくお願いいたします