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 何故、私はこんなところに一人で立っているのだろうか。


「葉月、お願いだから来てよ!あと一人なんだってば。人数が揃わないと合コンにならないんだもん。人助けと思って!ほら、彼氏には私からちゃーんと連絡させてもらいますから、ね、ね、ねー。」

水曜日、午後六時半のことである。大学時代のサークルの友達から電話が入った。ちょうど職場のエレベーターを降りたところである。間が良かったのか、悪かったのか。こそこそと迷惑にならないように端によって話を聞くと、本日開催の合コンメンバーに欠員が生じたようである。

「春花も来るから大丈夫だよ!」

そして、事情を知らぬ彼女からますます行きたくない情報が舞い込む。

「いや、でも・・・私にも予定というのがあって。」

「今日じゃなきゃ、駄目なの?」

「うっ。」

本当は特に予定などはなく、いつも通り彼が家に来るかどうかだけである。

「ね、お願い。」

「・・・・・わかった。」

私は意外に押しに弱い。流石に四年間に及ぶ学生生活を共にしてきただけにこちらの弱点を突かれた。電話を切ると彼にメールを入れる。合コンの人数合わせに駆り出されたこと、春花も参加していること。


 七時に表参道ヒルズの正面入り口とのことだったので地下鉄に乗り込んだ。待ち合わせには早く着くことになるが遅刻するよりはマシだろう。一人立っていると彼から返信が入っていた。

「同僚に飲みに誘われたから俺も行って来る。飲みすぎないように。」

私は「了解、浩樹もね笑」と返して溜め息をつく。

「スルーか。」


 私と彼の間では春花のことは話さないのが暗黙の了解である。私としては、春花の合コン参加が春花と彼の関係がしっかり春花の中でも清算され、気兼ねすることのなくなった証明になるかと思っていたのだが・・・。思惑は空振りの様子。しかし、何故だろう。彼は、彼の中ではとっくに春花との関係は終わっているはずなのに。 


 何かに思い至りそうになった私は焦って周りを見渡す。友達か春花がもう着いているかもしれない。入り口にあるチョコレート専門店を眺めた。

一粒のチョコレートは芸術品である。四角い形のチョコレートに白とピンクのラインが幾重にもクロスされたチョコレートが目にとまった。赤い小さな丸い粒が三か所、一見すると無造作にも見える絶妙な配置で乗っている。


 チョコレートの魔力で、どこか別の世界へ引き込まれてしまいそうになる。本当はこのままどこかへ。

「葉月。」



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