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「おじゃましまーす。」

突撃、彼氏の朝ごはんということで、土曜日の朝に彼の部屋へ遊びに行った。ちなみに部屋の鍵を勝手に拝借し、早朝に彼自身を私の部屋に残したままである。そのため朝ごはんとは対面のしようもない。

朝、しかも土曜日の六時前ということで人通りもまばらである。鍵をそおっと回して彼の部屋へ入る。暗い室内、半分だけ閉じたカーテン、ひんやりとした空気。彼の部屋は人の気配もなく静かだ。彼自体が私の部屋にいるのだから、浮気相手の女がいるはずもない。


 それでは何故、私がこの部屋に来たのか。それは簡単である。女の痕跡を調べるため。ここでいう女とは春花のことは含まない。だいたい水をかけて、自分自身でもかぶってくるような女は恐怖も甚だしいのでもはや痕跡を探す必要もないだろう。私は日常に潜んだ女を見つけたいのだ。

「違う、居ないことを証明する。」

独り言は意志のあるようなないような微妙な音となった。私はかつて春花が目撃し、喧嘩に発展した化粧水を探した。


 そのもの自体が見つからない場合と春花が目撃しただけの量があるのであれば、そのまま放置ということで白である。そして、量が減っている又は真新しいものに変わっている場合は黒だ。

「あ。」

そこにあったのは真新しいボトル。しかもたちが悪いことにまったく別の種類のもの。ちなみにそれは薬用、敏感肌用のもので、美白ラインを愛用している春花が、彼を彼の部屋から追い出した私と彼の馴れ初めとなる事件を起こす前に買ったものである可能性は限りなく低い。

「黒??」


 それでも疑いたくない私の乙女心に嫌気がさす。でも、実際に確実に黒と決まったわけではない。高校時代の友人の彼は彼女のお高い基礎化粧品を豪快に使い、怒った彼女が大量購入させたと憤っていたし。男は案外、男女どっちかなんてきっと気にしない生き物なのだ。まず化粧水を使わないという前提を排除したことは頭の隅に捨てておくことにする。


 私は来た時と同じようにそっと鍵をかけて帰宅した。私の部屋、ベッドの中にはまだ夢の中の彼がいる。牛乳をあたためてカフェオレを入れる。身体にぬくみが戻ってからベッドに戻った。


 可能性を探っている。少しだけ強く彼の手を握った。いまだ夢の中で私の手を握り返した彼の顔はひたすら幸せそうで腹が立った。



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