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Oh, my God

 就職氷河期は俺、一条ユウリに多大なる損害を現在進行形でもたらしていた。

 現在俺は大学四年生、学生家業の最後を締めくくる大勝負に、俺は早くも負けてしまいそうだった求人募集の紙はどこにもないのだ。

深い氷塊の下にでも埋もてもいるのだろうか。

しかし、俺は知っている。万が一に求人を見つけて面接まで持ち込んだとしても待っているのは優秀な人材に飢えている重役という名のシロクマ御一行に自分一人に対して試験官が三人以上の圧迫面接という名の狩猟方法に舞台はシロクマ共のホームである机とパイプイス以外何もない灰色じみたワンフロアのコロッセオ。


幾らまともな装備を揃え、仮に勇者の剣を携えたとしてもこの戦法に勝てない。

生きながらにして捕食されるアマザラシやまな板に置かれた鯛の気持ちがわかってしまうほど緊張がある。

今日は偶々見つけた求人募集の面接があったのだが、経験則からすれば不採用。顔が女性に近いのが理由なのかもしれない。


「あぁ! どうしてこうもうまくできないんだよ!」


 やりきれない気持ちを拳に乗せて電柱を殴る。拳に乗せた思いだけ痛みは強く自虐心が自尊心に変わる。痛いのは勘弁だ拳が言っているのだ。

痛みによって自虐心が自尊心に変わってしまえば自分は悪くないと世の中に悪態をつくもなぜか自分がみじめになっていく。

過去なんて振り返れば後悔ばかりの連続で、あの時こうしておけばと思うばかりだ。


 こんな時は家に帰って何かに熱中するのがいい。勉強にゲーム、パソコンと氷河期だが先進国日本とあって娯楽品はあふれている国だ。

 帰り道にある発光ダイオードをこれ見よがしに点灯させているコンビニの明るさが目にしみる。


 家にもう百メートルぐらいのところでズボンにしまっていた携帯がバイブレーション機能特有の振動を起こす。面接結果――ではないだろうが、携帯を手に取り画面を確認すると友人からの着信だった。拒否する理由もなかったので応答し友人の第一声を聞く前に電話を切ってやる。友情を犠牲にするこの行動の爽快感は計り知れないものだと言える。

爽快感に浸っているとズキンッと鈍器で殴られたような痛みが後頭部を襲う。あまりの痛さに俺はその場で膝をついた。鈍器で殴られたのかと後ろを振り迎えってもつい先ほど見た光景が写っている。

 病気の前兆かもしれないと日頃の食生活を思い返すが悪い点はなく、二か月前に健康診断をやって健康をもらえている。

 疲れから来るものだろうか。深くは考えないでおこうと続く痛みを堪えて立ちあがり壁伝いに足を進めた。


 しばらく続いた痛みは家のアパート前まで来ると何事も無かったかように消え失せた。まったく痛みはなく逆に冴えわたる思考と両肩の重みがなくなったようだった。

 不思議が残る痛みだ。


 先ほどの痛みに首をかしげているとアパートの階段を上がる途中でも俺は先ほどに類似した不快感を覚えた。今さっきあった痛みではない。

唐突なことだったので片手で脳を押さえつけもう片方の手で慌てて何かに掴もうとするが周りは壁だけで手すりもなかった。

痛みはさらにひどくなる一方で止まる気配がない。

 脳がミキサーかなにかでかき混ぜられるような痛みと吐き気。平衡感覚の混乱に視界は揺れ四肢は痙攣する。もはやまともに立て続けられずに俺は後ろに倒れる。いや、階段の途中で倒れるのだから落ちると同じか。


倒れ、頭が地面に強打されるまで不思議と全てが愚鈍に感じられた。鈍く遅い。これが走馬灯なのだろうか? 

なにも過去が思い出せれない。初恋の人の名前も顔も、両親の笑顔も全て思い出せない。それほど惰性で無意味な日々を暮らしたのだろうか。

ならばいいさ、あきらめもつくってものだ。

そんな軽薄な人生だったのだからここで死ぬのも定めだろう。

俺は愚鈍な世界の中でゆっくりと目を閉じ、笑って迫りくる『死』を受け入れた。


初投稿でこれからどんどんと書いていきますのでお付き合いほどおねがいします!

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