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3話

更新遅れてすみません。

「失礼しま~す」

現在昼休み。

僕はある先生に呼ばれ職員室を訪れていた。

訪ねなれている先生なので席がどこかも把握済みであり足に迷いは無い。

その歩く姿は職員室内にいるどの生徒よりも堂々していると胸を張って言えるほど僕は凛としている。

まぁ経験が違いますな、経験が。



僕が尋ね人である数学教諭の佐古田先生の席に着くとそこでは、先生と僕のクラスメイト並びに隣人である篠宮さんが何やら話をしていたようだ。

しかしこの2人が話をしているのを見るのはこれで初めというわけではない。

「馬鹿が来たか…。それじゃぁ詩織、また今度」

「わかりました」

僕と篠宮さんがすれ違う。

その瞬間ほのかな甘い香りがしてついつい嗅いでしまい、すぐに鼻の穴が膨らんでいなかったかどうか気にしてしまう。よし、大丈夫そうだ。というか普段から鼻の穴広げっぱなしにしてたら別に怪しまれずに、もしかしたら……。


「きたか。浅野。相変わらず馬鹿っぽい顔してるな」

「馬鹿っぽいってことはまだ馬鹿ってことではないですよね。ぽいって言葉が付くという事はあくまでその傾向が強いってことですから」


ふふふ、今の僕かなり知的。


「相変わらず馬鹿面してるな。それにな、馬鹿の傾向が強かったらそれはもう馬鹿だ。馬鹿が」


生徒にこんなに馬鹿って言う教師がいますか?

ホント頭がどうにかなりそう

外見だけ見れば凄く綺麗な女性だから、そんな人にこんなにも罵られたら変な性癖がつきそう。

って僕は馬鹿か。


「さて、浅野。なぜ呼ばれたか分かっているな?」

「えぇ先生。僕は天才ですから。何も言われなくても理由は把握しております」


相手の考えてることが分かるって僕凄くない?ヤバイヤバイ。


「浅野。それは違うぞ。可哀想なお前に私が分かりやすく説明してやろう。お前が何も言われずに何故ここに呼ばれたか分かったのはお前が天才だからだというわけではない。寧ろその逆で、お前が馬鹿すぎて、馬鹿なほど同じ理由で呼ばれ続けた結果、馬鹿なお前にも毎回呼ばれる理由が経験から導けるようになっただけだ。つまりお前は馬鹿だ。」


今回は中々キツい事言うな、佐古田先生。

しかしこんぐらいじゃぁ僕は負けない。


「先生。馬鹿と天才は紙一重ってよく言いますよね。つまり馬鹿がこんなに積み重なったら僕は最早天才の域に達しているのではないですか?」


僕の華麗なカウンター。これは決まったな。


「はぁ・・・。浅野、覚えておくといい。馬鹿と天才の間にある紙一枚分の厚さはお前の想像を遙かに越えるほど厚い。もしかしたら紙ではなく神の方ではないかと思う程にな。それにな、お前が天才ならば言葉の定義そのものが変わってしまう。分かるか?」


呆れたという感じのロ調で話す佐古田先生。


「成る程。僕は言葉の意味をも越えてしまうほどの男ということですか。」


僕凄い。


「お前自分で言ってて悲しくならないか?」


うぐっ。

今日一番のパンチがここで決まった。

流石の僕もこれはキツい。

こういうのってノリでやってるからマジレスされると困るんだよね。


「ということで浅野。今週の課題出せ。期限は月曜なのにもう水曜だぞ。明日は試験範囲の発表なのに。また欠点取るぞ。」


やっと本題に入りましたか。

ま、前振りが長いのはいつものことだけど。


「その時はまた先生が協力してくれるんでしょ?」


去年は再試までの間先生が1対1で教えてくれた。

そのおかげで進級できたと言っても過言ではなく事実だ。つまり何だかんだで佐古田先生には感謝している。それに美人と1対1っていうのも中々だし。まぁ最終的にハードすぎてそれどころじゃなくなるけど。


そんなことを考えている内に先生の物凄い形相が目の前にあった。

今にもこめかみから角が出そうである。


「せ、先生。そんなに顔にしわ寄せたら折角の美人が・・・」


そんなべたなセリフを吐いた瞬間先生は無表情になった。


やばい。これはやばい。

完全に目が据わってる。

そして先生は立ち上がり、ピースを僕の目に突きつけてきた。


「さぁ浅野。目ぇくいしばれ。」

「あ、いやいや先生。とてもお綺麗ですよ。先生じゃなかったら惚れてます、絶対。」


慌てて弁解する僕。


「ほぉ。その言い方だと容姿は良いが性格が駄目みたいじゃないか。」

「あ、いえいえいえいえ。この場合の先生は佐古田先生個人を指すのではなく、教師という意味です。だから先生がドSで凶暴で性格がひね曲がってるという訳ではありません?・・・あ、やベ言い過ぎた。」


慌てすぎて言ったらいけない言葉まで出てしまった。今日はツイてない。もう目潰しを覚悟するしか・・・。僕は目を食いしばった。


「はぁ。もういい。明日必ず出せよ。」


え?

思ってもみなかった言葉が聞こえ、目を見開く。

目を思いっきり瞑ってからの見開き。端から見たら先生の前でおめめパッチリ体操している変な男子高生だ。


「何てな」


刹那佐古田先生の細い指が僕の顔に向かってくる。

しまった。騙された。

なんて先生だ。生徒の不意をつくなんて。


コツン


しかしそれは可愛いでこピンだった。


「次失言したら、私も抑えられんかもしれんぞ」


「はい」


今度から佐古田先生と会う時はゴーグルをしよう。

真剣にそう思った。











しまった。

答えがない。

家に帰り、課題を済ませようと思ったのだが解答がない。数学の毎週の課題はワークブックを指定されたページまでやって出すというものなのだが答えがないと僕の学力では全く進まない。そうなると明日までに出せなくなり、僕の命は佐古田先生の手に握られるということになりかねない。それはやばい。


どうしたものかと考えているとピンポーンとうちのインターホンが鳴った。生と死の瀬戸際にいる自分にとってその音は邪魔以外の何物でもなかった。

正直億劫だったがその音に応えた。


「はい」

扉を開けるとそこには鍋を持った美少女がいた。

「君だ。僕の救世主は!」

目の前の女性はキョトンとした様子。

「篠宮さん、数学のワークの答えを貸して下さい。」

尚もキョトンとした様子の篠宮さんに簡単に今の自分の状況を説明する。


「ごめんなさい。答えはワークと一緒に学校に置いてます。」

そんな、まさか。

いや、まだ方法はある。

いや、これこそ至高だ。

「そ、それじゃぁ教えて下さい」

その瞬間彼女は心底嫌そうな顔をした。ように見えた。実際は無表情で何を考えているかは分からない。

「そんな、嫌そうな顔しないで下さい。僕の命がかかってるんです。」

次に彼女は心底面倒臭そうな顔をした。ように見えた。実際は無表情で何を考えているかは分からない。

「そんな、いかにも面倒臭そうな顔しないで下さい。またご飯作りますから」

次は彼女は少し目を見開いたように見えた。もしかしたらご飯では結構釣れるのかも。

「どうです?明日明後日の夕食を担当します。」

決まった。確かにそう確信しうる顔をしたように見えた。実際は無表情で何を考えているかは分からない。






「出来ました。」

渾身のワークを佐古田先生に渡す。

顔には勿論ゴーグルをつけている。

先生はどれどれといった感じでページを繰っていく。すると段々驚きが彼女の顔についてきた。


「どうした浅野。いつもの答えを丸写ししました感が何とも馬鹿らしいお前のワークはどこいった」

こんなに驚く佐古田先生を僕は見たことがない。

ていうかそれはそれで傷つくな、僕。


「実は篠宮さんの協力を煽ったんです」

ここで調子に乗ってあたかも自力ですと言い張ればその後が大変になりそうだったので、さっさと真実を述べる僕、やっぱり天才?


「篠宮ってまさか、篠宮詩織か?」

更に驚く佐古田先生。

「はい。アパートの部屋が隣同士で最近ちょっとしたことがあって少し関わりを持つようになったんです。それで。」


「あの詩織が・・・」


「そう言えば先生も篠宮さんとよく話してますよね」

誰とも関わりを持っていなかった篠宮さんが唯一学校で会話をする人。それがこの佐古田先生だった。

これについては予てから少し疑問に思っていた。

「ん?私か?私はアイツの親戚でな。おまえも知っての通り一人暮らしの彼女の様子を見てるってかんじだ」

「へえ」

そう言えば少し二人は似ているかもしれない。

しかし決定的にこの二人は温度が違う。


「そうかそうか。詩織とお前に交流があったとわな。」

「まぁホントつい最近からですけどね。」

「まぁ何だ。無愛想な奴だがよろしくしてやってくれ」

今の佐古田先生の顔は教師というよりも保護者の顔といった感じかもしれない。


「善処します」

兎にも角にもよろしくするからに少しはよろしくされたいっていうのが本心だった。




読んでいただきありがとうございます。

感想並びにご意見があれば教えて下されば嬉しいです。

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