表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/56

実はカナヅチ!?

 プールの中で溺れかかっている様子の麻奈を見た菜月と蘭は、慌てた様子になり麻奈をプールから引き揚げた。


そして、疲れ切った様子でいた麻奈をとりあえず、プールサイドの上に寝転がらせた。


「はぁはぁ、ま、まさか蘭さんがいきなり放り投げるとは思わなかった」


麻奈は、息を切らしながら言った。


「そ、そんな事よりも、麻奈ちゃん、大丈夫?」


「えぇ、わ、私は大丈夫よ……」


疲れ切った様子でいる麻奈を見た蘭は、心配をした様子で麻奈に声をかけた。


心配をする蘭を見た麻奈は、蘭を更に心配させない為、大丈夫と答えた。


「大丈夫とかじゃないでしょ!? 蘭さん、いったい何やってるんですか!? もし本当に麻奈が溺れてしまっていたら大変な事になっていたのよ!! 少しは反省しなさい」


「はい…… スミマセンでした」


その用紙を見た菜月は、怒りながら水泳部の部長である蘭に向かって説教を始めた。


そして、水泳部の仮部員である菜月に怒られている蘭は、少し縮まったような感じになった。


「蘭さん…… 本当に謝らなければいけないのは私の方です」


「あらっ、どうして?」


「本当は、私、泳げないんです……」


菜月に怒られ、ションボリとした様子になった蘭を見て、麻奈は疲れ切った様子で、蘭に本当に謝なければいけないのは私だと言った。


その麻奈の発言に蘭は疑問を抱いたが、すぐに麻奈は少し戸惑った様子になりながら、本当は泳げないという事を伝えた。


「えっ? 泳げないって……」


「はい、その…… 実は私、カナヅチなんです」


麻奈の泳げないという突然の衝撃発言を聞いた蘭は、目がキョトンとした様子になり、戸惑った。


「えっ、じゃあちょっとまって、泳げないのに水泳部に入ろうって思ったの?」


「はい…… 水泳部に入れば泳げるようになると思ったんです……」


泳ぐ事が出来ない麻奈が、なぜ水泳部に入部をしようとしたのか蘭は疑問に思った。


その疑問に答えた麻奈が言うには、水泳部に入れば泳げるようになると思ったからである。


「そういや麻奈、アンタ昔から泳ぎは苦手だったわよね。てかなんで今更泳げるようになりたいなんて思ったの?」


「ううん、それは…… 高校生になったら、今まで苦手であった水泳が少しでも出来るようになりたいと思っていたの。そんな中、この学校のプールを見た時に感じたの。泳げるようになる練習をここのプールでしてみたいと」


先程からの話を聞いていた菜月は、なぜ高校に入ってから今まで苦手だった水泳をやりたくなったのか、麻奈に聞いてみた。


すると麻奈は、今まで苦手であった水泳を高校生になった今、少しでも出来るようになりたいと思っていたのと、同時にこの学校のプールで泳げるようになりたいと思ったからであると言った。


「でもやっぱり、泳げない私なんかが水泳部に入ったって、きっと迷惑ですよね」


そして麻奈の目にはウルウルとした涙があふれていた。


この時の麻奈の顔、そしてその様子がまるで可愛いらしい小動物のように見えた蘭にとっては、とても迷惑とは言えなかった。


(麻奈ちゃんの、その今にも泣きそうな顔。かっ、可愛い……)


むしろ、この時の麻奈の顔をジッと見続けていた蘭は、その可愛いらしらあまりに、麻奈の顔に両胸を押し当て、思わずギュっと抱きしめた。


「ダメ! 泳げなくても迷惑だなんて思っていないんだから! だから辞めないで!!」


蘭が思いっきり麻奈の顔を胸に当てて抱きしめた為に、麻奈は少し苦しそうなと言うよりも、止めてほしいとと言うような表情になっていた。


「らっ、らんさ~ん。私が水泳部を辞める必要がないと言うのは充分に分かったけど…… なんか、苦しいよ~う」


蘭に強く抱きしめられている麻奈にとっては、例え泳げなくてもこの水泳部にいて欲しいと言ってくれた蘭に感謝をしたいと言うよりも、今すぐにでも抱きしめるのを止めて欲しい気持ちでいっぱいだった。


そんな中、麻奈を強く抱きしめている蘭の様子を見ていた菜月が、再び怒った様子で、蘭に抱きしめられている麻奈を引き離した。


「ちょっと、蘭さん、いい加減にしなさいよ!! 麻奈が苦しがってるじゃないの!! さっきの件と言い、麻奈を膣即死させるつもりなの?」


「いっ、いや…… 私は、そんなつもりはないわよ…… 確かに、麻奈ちゃんをいきなりプールに振り込んだのは悪かったと思っているわよ」


鬼のような表情になって怒る菜月を目の前で見た蘭は、少し怯えた様子になっていた。


そんな様子の蘭を見た麻奈は、泳げなくても水泳部に居ても良いと言ってくれた蘭を助けようとして、菜月に怒るのを止めるように言った。


「菜月ちゃーん、蘭さんにこれ以上怒らないで!! 元々、泳げない私が悪いんだから!」


麻奈は、室内プールの中全体に響き渡るくらいの大声で叫んだ。


突然の麻奈の大声の叫びを聞いた菜月と蘭は、大声に一瞬ビクッとなりながらも、すぐに麻奈の方に首を向けた。


「も~う、麻奈ったら、当然大声出しちゃって……」


「全くですわ。私もビックリしちゃいました」


麻奈の方に首を向けた菜月と蘭は、咄嗟に口をそろえるようにして言った。


「確かに今回は、泳げないのに水泳部に入部をしようとした麻奈が悪いわね」


「そうよね。誰だって初めは分からない事だらけなのよ。分からない事なんて、これから覚えて行けばいいだけじゃない!」


菜月と蘭は、まるで意気投合をしたかのような感じで麻奈を見ながら言った。


「よしっ、じゃあ、これから一週間は麻奈ちゃんが泳げるようになる為の特訓だね!」


「せっかくなので私もこの特訓に付き合うわ。なんせ女の命とも呼べる自慢であった長い髪をバッサリと切り落としてまで泳げるようになりたいという気持ちがあったんだから」


「えっ、ち、ちょっと…… お2人さん、一体どうしちゃったのかしら?」


蘭と菜月が一致団結をするかのように、麻奈を泳がせる特訓をしようとしているのを見た麻奈は、ちょっぴりどころか、相当引いた様子でいた。


「あれ? 仮入部の菜月ちゃんも一緒に特訓に付き合ってくれるの? これは、もしかして入部フラグ」


「いや、入部とかどうのこうのよりも、変質者の蘭さんから、麻奈を守る為の監視がメインだけどね」


「って、オイ! 変質者はないでしょ!」


麻奈が、体育会系のような特訓と言う言葉を聞いて逃げたい気持ちで引いている目の前では、再び蘭と菜月の言い合いが始まっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ