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新たなる新入部員

 麻奈と菜月が放課後に水泳部員勧誘用のチラシを配り出した翌日、麻奈と菜月は蘭と共にプール更衣室でチラシを見て水泳部に入部をしてくれる人を、蘭が出してくれたケーキと紅茶を食べたり飲んだりしながら待っていた。


そして約30分が過ぎた頃、プール更衣室のドアがコンコンと外からノックしている音が聞こえてきた。


その音を聞いた麻奈と菜月と蘭は、慌てるように急ぎながらプール更衣室内のテーブルに置いていたケーキと紅茶をロッカーの中に隠した。


そして、緊張をする中、蘭はゆっくりとプール更衣室のドアを開けた。


「は~い、どちら様でしょう~か?」


「スミマセン、このチラシを見て水泳部の入部を希望に来たものです」


蘭が恐る恐る更衣室のドアを開けてみると、そこにはチラシを片手に持ちながら1人の女子生徒が立っていた。


プール更衣室のドアをノックしていた女子生徒は、昨日に麻奈が配っていた新入部員勧誘用のチラシを見て、この水泳部に入部をしたいと思い、この日の放課後にプール更衣室を訪れた。


突然の入部希望者に、蘭だけでなく麻奈と菜月も驚くように喜んだ。


「ほらっ、菜月ちゃん見てよ、私の作ったチラシが効果あったよ」


「ホントだね。まさか昨日の今日に来てくれるとは」


麻奈は、昨日の放課後に菜月と一緒に配ったチラシが役立ったと思い、菜月と一緒に喜びを分かち合った。


そんな入部希望者が来て喜んでいる麻奈と菜月の様子を見て、入部を希望する女子生徒はある事にピンッと来た。


「あらっ? あなたは確か同じクラスの阪野さんと大神さんじゃないの?」


「ああっ!! そういうあなたは、同じクラスの夜鮫聖さんじゃない!!」


水泳部の入部希望の女子生徒は、なんと麻奈と菜月と同じクラスの夜鮫聖よざめきよらである。


聖は、今年の春に日本に引っ越しをしてきた帰国子女であり、黒髪ロングのスラっとした身長の外見がモデルのような良いスタイルを持つ女の子である。


「あら、夜鮫聖というのね。私は蝶蘭といいますわ。よろしくね」


「ああ、こちらこそよろしくお願いします」


「私の事は、蘭さんでいいわよ。さっ、それよりも中に入って。美味しいケーキと紅茶があるから」


「あっ、ありがとうございます」


麻奈が夜鮫聖と言ったのを聞いていた蘭は簡単な挨拶を済ませた後、早速プール更衣室の中に聖を案内した。


聖をプール更衣室の中へ案内をした後、蘭は聖にもケーキと紅茶を用意した。


「はいっ、これは聖ちゃんの分よ。遠慮せずに食べてね!」


「ど、どうも……」


プール更衣室に置かれている長細い足の短いイスに座った聖に、蘭はロッカーの中に置いてあったケーキと紅茶をニコッとした笑顔で差し出した。


「まさか、水泳部に入ってくれるのが、クラスメイトの聖ちゃんだなんて。改めてよろしくね!」


「ああ、こちらこそ改めてよろしく。こちらも驚きましたわ。まさか水泳部にクラスメイトがいるなんて」


「なんか、クラスメイトが同じ部にいると、なんか安心するよ」


長細い足の短いイスに座りながら、蘭から頂いたケーキと紅茶を飲食していると、麻奈が隣に座りに来て、聖が水泳部に来てくれたことを嬉しく思った。


「そう言えば聖ちゃんって、確か帰国子女だったよね。前はどこの国に住んでいたの?」


「ええ、以前はオーストラリアに住んでいましたわ」


麻奈は聖が帰国子女であったのを思い出し、聖に以前はどこの国に住んでいたのかを聞いてみた。すると聖は、ペットボトルの口に軽くキスをやる様に紅茶を飲みながら以前に住んでいた国を答えた。


「オッ、オオストラリア~!! 凄いじゃない!! ねえねえどこ街に住んでいたの? シドニー? それともメルボルン?」


聖が以前にオーストラリアに住んでいた事を答えると、それを聞いた麻奈は感激をする様に興奮状態になって驚いた。


「ん~、その2択ならシドニーね」


「すっ、凄いよ! 聖ちゃん。私なんてまだ海外にも行った事がないよ」


麻奈が出した2択の中から聖は、紅茶を半分飲み終えたペットボトルを太股の上に置いて持ちながら、シドニーに住んでいたと答えた。


「やっぱり、聖さんはオーストラリアに住んでいた時から水泳をやっていたの?」


麻奈がシドニーから来たという聖に興奮している最中、蘭は聖にオーストラリアに住んでいた時にも水泳を行っていたのかを聞いてみた。


「もちろんやっていたわ。ちなみに小学生の頃から水泳をやっていて、何度か大きな大会にも出たことがありますわ」


すると聖は、チラっと蘭の顔を見ながら小学生の頃から水泳をやっていたという事だけでなく、大きな大会に出たという事をさらっと言った。


その言葉を聞いた蘭だけでなく麻奈も菜月も、着替えている最中の更衣室に男性が入って来たかのような勢いで驚いた。


「それ、ホントなの? だとしたら相当凄いわよ!」


「同じクラスだけでなく、同じ部にまでこんな凄い人がいるなんて…… 私のチラシの宣伝効果は凄すぎる!」


「まさにこんなちっぽけな部活に経験者が来るなんて……」


聖が大きな大会に出場したことがあると言っただけで高めのリアクションで驚いている蘭と麻奈と菜月の様子を見て、聖は少しばかり戸惑った。


「あっ、あの…… みなさん少し驚き過ぎですよ……」


そして、そのまましばらくの間、聖は蘭から頂いたケーキを黙々と食べていた。


聖がケーキを黙々と食べている時、蘭が絶望の淵から光が差し込んだかのように希望を取り戻したような表情をしながら喋り出した。


「聖さんが入ってくれるってことは、麻奈さんと菜月さんと私を合わせて部員は4人! てことは、廃部はまのがれたって事ね~」


蘭が右手の指を使いながら聖、麻奈、菜月と3人分を数えながら、部員が4人集まったと思い、廃部をまのがれてホッとした気分でいた。


「ああ、ホントだね、蘭さん。これで私もあのプールに入れるよ!」


「うん、よかったわね! これで私たちはずっと一緒よ!」


麻奈も同時に、水泳部の廃部の危機がなくなったと思い、蘭と共に喜びを分かち合った。


しかし、あくまでも仮入部という菜月にとっては、廃部の危機がまのがれたと思って喜んでいる麻奈と蘭の様子をあまりよく思っていなかった。


「あの、何か忘れていませんか? 私はあくまでも仮入部ですから!」


「知っているわよ、仮入部だってことを」


水泳部には仮入部で来ていると強く言う菜月に対し、蘭は浮かれた様子で菜月が仮入部であるのを知っていると言った。


そしてその様子を、本日の入部者である夜鮫聖はペットボトルの紅茶を飲みながらただひたすら見守っていただけであった。

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