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真実を知る

 文化祭のシンクロの公演日まであと数日と迫ったある日の練習中、この日も聖は大事な用事がある為に練習を欠席していた。


そして同時に、安奈はまだ来ていなかった。


 そして今日は、ついに文化祭のシンクロ公演の時に着用する衣装が、届く日であった。


その衣装は、ダンボール箱の中に入った状態で学校に届き、プール更衣室へと持って来られた後、早速、蘭によって開けられようとしていた。


「ねぇねぇ、麻奈ちゃんに菜月ちゃん。ついに届いたのよ」


練習の為、プールへと向かおうとしていた麻奈と菜月は、蘭の声に呼び止められ、プールへと向かうのをやめた。


この時の麻奈と菜月は、既に競泳水着を着用した状態であった。


「届いたって、何がですか?」


「ほら、アレよ。文化祭のシンクロの時に着る服」


「ほんとですか!!」


「やっと来たのね。早く実物が見てみたいわ」


文化祭のシンクロで着る衣装が届いたと知った麻奈と菜月は、今すぐにでも早く見たいと思い、凄くワクワクした状態であった。


「そう慌てずに。服は逃げないんだから」


そう言いながら、蘭はダンボール箱の中から袋に入った衣装が取り出された。


段ボール箱の中に入っていた衣装は、白いハイレグ型の競泳水着が5着分と、青いスカートが5着分、そしてセーラー服の首元の部分と青いスカーフが、それぞれ5着分入っていた。


「実物は、本当これを着て踊ったりするのね」


「みただけでも、すごくきんちょうしてきた」


ダンボール箱の中に入っていた衣装の各パーツを見た菜月と麻奈は、いよいよ文化祭の当日が迫ってきたと思い、更にワクワクした状態となった。


 そんな2人を見た欄が、とある事を閃いた。


「そうだ!! せっかくなんだし、今、この場で着てみたらどうかな?」


蘭の閃きは、麻奈と菜月にいち早く、文化祭当日に着るシンクロ用の衣装を着てもらう事であった。


「そうね…… 衣装合わせをかねて、一度着てみるのもいいかもね?」


「そう思うでしょ。菜月ちゃん」


蘭の閃きには、菜月は賛成の意を見せていた。


「やっぱり、麻奈ちゃんも着てくれるよね?」


一方で、菜月が喜んでいる最中、麻奈はなぜかシンクロ用の衣装をジッと見て、黙り込んでいたため、蘭は少し心配をした。


「らんさん」


「どうしたのかしら? 麻奈ちゃん」


「やっぱりいまはきれないよ」


「どうして?」


「だって、こういうのは、めんばーぜんいんがそろってからやるものだよ」


麻奈が、シンクロ用の衣装を見て黙り込んでいたのは、シンクロのメンバーが全員揃っていない状態でシンクロ用の衣装を着る事が出来ないという気持ちがあったからである。


「確かに全員揃わないとね…… 安奈ちゃんならもうすぐ来るわよ」


「きよらちゃんんもいないとだめだよ!!」


「……」


そして、麻奈が聖の名前を出した途端、蘭は突然、何か隠し事があるかの様に黙り込んでしまった。


「蘭さん!! もしかして、夜鮫さんの事で何か隠し事があるでしょ!!」


「やっぱり、らんさんは、きよらちゃんのことで、なにかしっていたのね!!」


その語、聖の件について蘭が何か隠し事を秘めている事を知った菜月と麻奈は、蘭にせいのここ最近の件を聞きだそうとした。


「別に何もないわよ。聖ちゃんは生理なだけよ……」


「きよらちゃんは、せいちなんかきていないってじぶんからいっていたから、それはうそだよ!!」


蘭が冷や汗をかきながら付いた嘘は、麻奈によってすぐにばれてしまった。


「蘭さん、そろそろ本当の事を言ったらどうなの?」


「そうだよ、かくしごとはよくないよ」


嘘がばれた後、更に菜月と麻奈は蘭から聖の件での隠し事を聞き出そうとした。


 そして、ついに隠し切れないというよりも、自然とばれるのも時間の問題であり、これ以上隠す必要がないとわかった蘭は、麻奈と菜月に、聖に関する隠し事を打ち明けた。


「これ以上、隠し事をしていても意味がないわね…… それじゃあ言うわね……」


そして、麻奈と菜月に見つめられる中、蘭は暗そうな表情で喋り始めた。


「実は…… 聖の昔のコーチが『もう一度俺のところに戻ってこいよ』と声をかけたみたいなの」


「えぇ!? どうしていきなり」


「確かにいきなりよね。でも、前回の大会での聖の活躍をたまたま目にした昔のコーチが、聖の実力が昔みたいに戻ってきている事に気が付いたの。それで、もう一度才能を開花させる為にも、戻って来いって声をかけたのよ」


「そっ、それって…… きっ、きよらちゃんが、このがっこうのすいえいぶからいなくなるってことなの?」


「私も、先生から聞かされただけど…… そうなるわね」


そして、聖が昔のコーチの元へ戻ろうとしているという事実を知り、麻奈は突然の出来事にすごくショックを受けた。


「そんなのは、いやだよ‼」


「私も嫌よ‼ せっかく仲良くなれてきたのに」


「そう言ったって、仕方ないでしょ‼ 最終的に決めるのは、聖自信なんだから‼」


その後、麻奈と菜月が聖と別れるのを嫌がるを見た蘭は、キツめの口調で、二人を叱った。


「そういうのだったら、なんでいままでだまっていたのよ‼」


「そっ、それは……」


麻奈が何故今まで聖の件を話さなかったのか蘭に攻める様に言うと、それを聞いた蘭は、すぐには言い返せずにいた。


「全く、そんなのは蘭さんなんかじゃない‼ 私の知っている蘭さんは、もっと自分に正直に生きては、好き勝手にいる人よ‼」


すると突然、すぐには言い返せずにいた蘭を見た菜月が、プール更衣室全体に響き渡るぐらいの大きな声を出した。


そんな菜月の大声を聞いた蘭は、何かを思い出すかの様な衝撃を、身体全体を突き抜ける様に感じた。


「そうだったわね、確かに私は菜月ちゃんの言う通り、自由気ままに好き勝手に楽しんで生きている人間よ」


「そうよ、それでこそ蘭さんよ‼」


そして、自分が自由気ままに好き勝手に生きている人間であるという事を改めて自覚した蘭は、さっきまでの暗い表情を吹き飛ばした。


「でも、聖ちゃんの件に関しては、もう私にも、どうする事も出来ないわ」


「どうしてよ!? 夜鮫さんは何処にいるの?」


「今は、コーチが待つ某スイミングスクールよ」


「なんでまた、聖は某スイミングスクールなんかに!?」


「今日が、聖がコーチに再び付いて行くか行かないかを、聖自信が決める日なのよ。それで今日は聖は来ていないのよ」


その後、菜月が聖の居場所を聞くと、蘭は聖は某スイミングスクールにいる事を言った。


「そんな!! 今から某スイミングスクールに向かっても、間に合わないわ‼」


そして、既に間に合わないという事を知った菜月は、成す統べがないと思い、絶句した。


 そんな中、麻奈が1人で、プール更衣室から出て行こうとした。


「麻奈ちゃん、こんな格好で何処に行くつもり?」


「どこって、きよらちゃんのいる、ぼうすいみんくすくーるだよ」


「今更、何しに行くのよ!? 止めにいくのなら、もう遅いわよ」


「おそくなんかない!! やってみないとわからないよ」


麻奈が、聖をコーチの元へ行かそうとするのを阻止しようとしている目が本気の目である事は、蘭にもすぐに分かった。


「そうね…… 遅くなんかないかも知れないわね。いい事、麻奈ちゃん。聖ちゃんに自分の思いをぶつけて、聖ちゃんを連れて来るのよ‼」


「はいっ‼」


そう元気よく返事をした麻奈は、そのままプール更衣室を走って出ていった。


(麻奈ちゃん、始めて出会った時よりも、たくましく成長したわね。今回ばかりは、この私でも、どうする事も出来ずに1人で悩んでいたくらいなのに……)


更衣室を飛び出した麻奈を見ながら、蘭は麻奈の成長ぶりに感動をしていた。


しかし、蘭の隣にいた菜月は、蘭とは全く違う事を考えていた。


(麻奈、競泳水着のまま、外に飛び出しちゃったよ……)


そう、麻奈は急いでいた余り、制服に着替える事はなく、赤いハイレグタイプの競泳水着のまま、聖がいる某スイミングスクールに向かっていた。


 露出の多いハイレグタイプの競泳水着のまま、麻奈はプール更衣室を飛び出し、校庭を走っていた。


(きっ、きよらちゃん、ぜったいにいったらだめだから……)


麻奈はただ、聖の事だけを考え、自分の格好の事などは一切考えずに走っていた。

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