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部員の集め方

 菜月が水泳部に仮入部をしてくれた翌日の昼休み、麻奈は菜月と一緒の席で弁当箱を置いて、水泳部の部員の集め方について話をしていた。


「それよりさ、麻奈、4月中に残りの部員を2人集めるって言っても、部活の正式入部まであと一週間もないよね。どうやって部員を集めるつもりなの?」


昼食中、菜月は弁当箱の中に入っているご飯を食べながら、持っていた箸で麻奈の方を指しながら言った。


「そりゃあ、もちろんチラシの宣伝でしょ!」


口の中をモグモグとさせながら、麻奈は自信気に答えた。


「チラシはもう作ったの?」


「そりゃあ、もちろん、ほらっ、見てよ!」


麻奈が水泳部の部員を集めるのにチラシでの宣伝を行うと自信気になって言ったあと、菜月は既に宣伝用のチラシは出来ているのか疑問になった。


すると、麻奈はカバンの中から水泳部員勧誘用のチラシを1枚取り出し、それを菜月に見せつけた。


「あっ、もう作っていたんだ。それにしても麻奈は興味のある事だけはすぐにやるな」


「へへ~ん、凄いでしょ」


麻奈がカバンから取り出したチラシを見て関心をする菜月の様子に、麻奈は少し高飛車な気分になった。


「そして、見てみて、取った人が少しでもこのチラシに興味が沸くように、イラストを入れてみたの!」


「あらっ、上手い事画けてるじゃない。やっぱり中学の時に美術部だっただけの事はあるわね」


さらに、高飛車になった気分の麻奈は、チラシに目立つように画かれたイラストを自慢するように菜月に見せつけた。


「そんな事よりも、いくらイラストを画いたって、チラシを見てくれた人が興味を持ってくれて水泳部に入部してくれないと意味がないわよ」


「あぁー!! そうだった。問題はどうやってこのチラシに興味を持ってくれるかだ」


水泳部入部勧誘用のチラシを菜月に見せつけて高飛車な気分になっていた麻奈に、菜月が麻奈に一言言った途端、麻奈は肝心な事を思い出し頭を抱えながら考え込んだ。


「そういやさ、このチラシ、元々どうやって宣伝するつもりだったの?」


両膝を机に置きながら両手で頭を抑え込みながらチラシへの興味を持ってくれる方法を考えていた麻奈に、菜月が弁当のおかずを一口食べながら、どうチラシを使って宣伝をする予定だったのかを聞いてきた。


「んん、そりゃあ、新入部員勧誘用のチラシがたくさん貼られている場所に張っておこうかなと思う」


麻奈は、この学校のとある場所にある、新入部員勧誘用のチラシが張れる伝言板に張って宣伝する考えでいた。


「そんなやり方じゃあ新入部員は来ないわよ。第一、あんな場所にチラシを張っても、ほとんどの生徒はチラっと見てそれで終わりよ」


「それじゃあ、どうやって宣伝すればいいんだよ」


麻奈の考えていたやり方では新入部員は来ないと言った菜月に、麻奈は更に考え込む様子になった。


「もっとも多くの人にこのチラシを見てもらうのには、やっぱりチラシを配っていくのが一番ね」


机に両膝をつきながら、両手で頭を抱えて深く考え込んでしまった麻奈に、菜月はチラシを配る方法はどうかと提案してみた。


それを聞いた麻奈は、先ほどまでのブルーな様子が嘘のように消え去り、再び光が差し込んできたかのように元気を取り戻した。


「そっかー!! その手があった。ありがとう、菜月ちゃん」


「てか、なんで今までその方法が思いつかなかったのかが不思議に思うくらいよ」


菜月の提案を聞き、再び元気を取り戻した麻奈は、感謝のお礼をする様に菜月の両手を握手する様に握った。


「でもさ、ただチラシを配るだけだと、受け取る人は少ないと思うんだよね」


「じゃあ、やっぱり何かインパクトがあった方がいいね」


「そりゃあ、インパクトはあった方がいいに決まってるわよ」


「じゃあさ、こんなのはどうかな? 水泳部らしく水着を着てチラシを配るっていうのは?」


「却下! 確かにインパクトはあって注目は集まると思うけど、今は春よ。まだまだ寒いじゃないの」


「確かに…… いい案だと思ったんだけど、さすがに今の季節にこのやり方はまずいね」


菜月がただチラシを配るだけだと受け取る人が少ないと言うと、麻奈はポンッと脳裏に閃いた様に水泳部らしく水着を着用して見た目からインパクトを与えながらチラシ配りをしようという案を提案した。


しかし、その案を聞いた菜月は、4月というまだ肌寒い感が残る時期に水着を着ての宣伝は寒いと言って、麻奈の案を却下した。


「じぁあ、どうすればいいんだよ~」


「もう、インパクトとかなしに、地味に配るしかないかもね」


水着を着てチラシを配るという案が菜月により却下された麻奈は、再び両膝を机の上に置いて両手で頭を抱えながら悩みだした。


「やっぱり、普通に配っていくしかないんだね」


「そういうことになるわね。そのやり方で配るなら、やっぱり放課後の正門前で配れば一番チラシを取ってくれる確率は高いわよ」


「うん、そうだよね。てことは、放課後が勝負時ってことだね」


「そうね。この放課後で何人の人がこのチラシを受け取ってくれるかが勝負よ!」


悩んでいる麻奈を見た菜月は、チラシをインパクトなしに普通に配っていくしかないことを伝えると、麻奈も少しガッカリしたような感じで、チラシを地道に配っていくしかないと感じた。


その後菜月は、地道にチラシを配る方法で一番多くの人がチラシを取ってくれる確率が高い放課後が勝負時であることを麻奈に伝えると、さっきまで少しガッカリした様子でいた麻奈も、再び希望が湧いた様に活気を取り戻していった。


「じぁあ、今からやっておくことはただ一つ。このチラシを大量にコピーしておく事だ!」


「コピーって言っても、だいたい何枚コピーするつもりなの?」


「ん~ 500枚くらいあればいいかな?」


「500枚とか多すぎるわ! とりあえず100枚くらいはあれば、何人かはまともにチラシを見てくれるはずよ!」


再び活気が湧いた麻奈は、この昼休みの間にやっておくこととして、新入部員勧誘用のチラシを500枚程コピーしようと言ったところ、500枚だと多すぎると菜月からツッコまれ、とりあえず100枚程チラシをコピーすることにした。


「そうと決まれば、早速コピー機の元へ! いざ、急げ」


そう言いながら、麻奈と菜月は昼食終了後に急いでこの学校のコピー機が置かれている場所へと向かった。

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