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歓迎パーティー

 安奈が新たにシンクロのメンバーに加わってから数日が経過したある日。


この日の練習終了後、安奈が帰ろうとした時、更衣室の入り口で幼馴染である蘭に呼び止められた。


「安奈ちゃん!! ちょっと待ちなさい!!」


「なんだよ」


更衣室の入り口に立ちながら、安奈はダルそうな表情で、蘭の方を見た。


「せっかくなので、今から安奈ちゃんの歓迎パーティーをやろうと思って」


「そんなの今じゃなくても良いだろ?」


「あらっ、そう言わずに。もうお菓子の用意はしてあるわよ」


安奈が突然のパーティーを遠慮しているにも関わらず、蘭は強引にパーティーを始めようとしていた。


 そして、蘭の一言と共に、麻奈と菜月と聖は、赤い台の上に、お菓子とジュースを用意し始めた。


「おいおい、そんな所に食べ物なんか乗せるなよ」


「仕方ないでしょ!! ここしか乗せる場所がないのだから」


麻奈と菜月と聖がお菓子やジュースを置いている場所が、普段から座ったりしている赤い台であった為、それを安奈はよく思っていなかった。


「確かに、乗せる場所がここしかないからって、私は座っている場所に食べ物を乗せるのは、よくないと思うわ」


「タシカニ、フダンヨクスワッテルバショニ、タベモノヲオクノハ、ナンダカヨクナイキガスル」


「私は、お菓子を食べる事自体よくないと思うわ」


食べ物を普段よく座る赤い台の上に置く行為は、安奈だけでなく、菜月と麻奈も良く思っていなかった。


「そう思うのだったら、なんで今からパーティーをやろうとするんだよ!?」


「それは、蘭さんが強引にやろうと言ったからよ」


その為、安奈はなぜパーティーをやろうとするのか聞いてみると、菜月がその答えを言った。


「なるほどね…… 蘭がやろうと言い出したのか。おいっ、なんでいきなりパーティーなんだよ!!」


パーティーをやろうと言い出した蘭の方を、安奈は振り向いた。


「まぁまぁまぁ、安奈ちゃん。そう怒らずに、ここに座りなさい」


「おっ、おい!! 私は別に怒ってもいないし……」


そう言いながら、蘭は強引に安奈をお菓子やジュースを乗せた赤い台の目の前の床に座らせた。


「はいっ、安奈ちゃんが座ったので、今からパーティーを始めましょ」


「そうね。今日のパーティーは、金井さんの歓迎パーティーですから」


「コノヒノパーティーハ、アンナサンガワタシタチトナカヨクナルタメニ、ランサンガキカクシテクレタンダヨ」


安奈が座った後、蘭はパーティーを始める合図をやると、聖と麻奈が安奈の歓迎パーティーである事を言った。


「おっ、お前等……」


「おっ、安奈ちゃん。嬉しいの?」


「べっ、別に、うっ、嬉しくなんかねーよ!!」


今回のパーティーが自分の歓迎パーティーだと知った安奈は、面倒くさそうな表情をするも、心の底では嬉しかったのか、照れ隠しをしているのが蘭にバレ、安奈は少し顔を赤くした。


「じゃあ、パーティーの始まりの乾杯をしましょ!!」


そして蘭は、ジュースの入った紙コップを持って立ち上がり、パーティーの開始の乾杯を始めた。


「カンパーイ!!」


更衣室全体に響き渡るほどの大きな声で、ジュースが入った紙コップを持った麻奈達は、蘭に続くように乾杯をした。



 パーティーが始まった当初は、安奈は少々緊張をした様子であったが、その緊張はすぐに解き、すっかりパーティーを楽しんでる様子であった。


「そう言えば、麻奈と言ったかな? お前の声、何だか変だな」


「アア、コレネ。シンクロノレンシュウノトキニオオゴエヲダシスギテ、コンナコエニナッチャッタノ」


赤い台の上に置かれたポテトチップスを食べながら、安奈は麻奈に声がおかしい理由を聞いていた。


「そんなに、過酷だったのか、シンクロの練習って!?」


「ウン、スゴクカコクダッタヨ。ソノオカゲデ、イマダニガラガラゴエ」


「どんな練習だよ!? 水中で長時間素潜りか? それとも、耐久力を付ける為の長時間ランニングか?」


麻奈から過酷な練習のせいで声がガラガラ声になった事を聞いた安奈は、どんな練習でガラガラ声になったのか、凄く気にした様子でいた。


「ドチラデモナイ。カラダヲヤワラカクスルタメノカイキャクノレンシュウデコウナッタ」


「開脚? もしかしてお前、身体が硬かったのか?」


「ウン、スゴクカタイ。ソレデ、ランサンカラカラダヲウエカラオシツケラレルトックンをウケタノ」


その後身体が硬い事に安奈が驚いていると、麻奈は身体が硬いが為に、蘭から身体を柔らかくする為に行われた特訓の事を言った。


「確かに、蘭の事なら、やりかねんな」


「ちょっと、私を鬼みたいに言わないでよ!!」


それを聞いた安奈は笑いながら頷いていると、その様子を見ていた蘭が、恥かしそうに怒った。


 その後も、まだまだパーティーは続き、先程よりも更に緊張が解けた安奈は、蘭の過去話を始めた。


「そう言えば私はさ、小学校の時から蘭と一緒にいるけど、コイツは昔は結構大人しかったんだぜ」


「へぇ~ 以外ですね」


安奈から聞かされた蘭が、現在のイメージとは異なる為、菜月は少し驚いた。


「ちなみにさ、小学校のときなんか、泣き虫でいつも私について来ていたんだぜ」


「ちっ、ちょっと!! その話は後輩たちの前では禁止よ!!」


「おいおい、そんなに恥かしがるなよ」


更に、安奈が蘭の秘密を語ると、それを聞いた蘭は顔を赤面に恥かしがりながら、安奈にその話を止めさせようとした。


「いっ、以外です…… あの蘭さんがやられているなんて」


「確かに、以外よね。今まで強気であった蘭さんが……」


蘭が、安奈に秘密話を言われて恥かしがっている様子を見ながら、菜月と聖は普段見せない蘭の一面を見れて少し驚いていた。


 その後、この形勢を逆転しようとして、蘭もまた安奈の秘密話を暴露しようとした。


「あ~ら。それだったら、安奈ちゃんの秘密話も言っちゃおうかしら?」


「なっ、何を言うつもりだよ!?」


「安奈ちゃんが、小学校の林間学校の時に……」


「ちょっと待て!! さすがにその話は止めろ!!」


「フガッ、フガッ」


蘭が形勢逆転しようとして安奈の秘密話を語ろうとした途端、安奈に両手で口を押さえつけられてしまった。


「一体、どんな秘密事なんでしょうね?」


「さぁ、余程知られたくない秘密事の様ね」


その秘密事は、菜月と聖も少し気になっていた。


 その後、蘭は力ずくで安奈の両手を口元から離した。


「はぁ、どうやら、これだけは、余程言われたくない様ね」


「当たり前だろ!! それを知られたら、恥かしくてここにいられなくなるわ!!」


「そう? じゃあ、これは安奈ちゃんの弱みとして握らせてもらうわ!!」


「って、オイッ!! そんな汚い事は止めろ!!」


「へへ~ん、弱みを握っちゃったから、私は安奈ちゃんよりもつよ~い!!」


そして、安奈の弱みを握り強気でいる蘭は、ニコニコとした表情で、楽しそうな様子でいた。


 そんな蘭の様子は、すぐ近くで麻奈と菜月と聖も観ていた。


「ランサン、タノシソウデスネ」


「そうね。同じ歳の友達が水泳部に来てくれたからでしょうね」


「まぁ、今まではここまでやりあう相手がいなかったから、なおさらね。今日のパーティーは正解だったかもね?」


蘭と安奈のやり取りを見ながら、麻奈と菜月と聖は、それぞれ蘭について思っている事を言った。

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