痛い練習
夏休みも間もなく終わろうとしているこの日、先日の練習後のシャワー室での会話の時に決まった、文化祭でのシンクロ公演に向けての練習が始まった。
この日は、シンクロの練習の始まり日として、部長である蘭を中心に、麻奈と菜月と聖は、いつも練習で使っている競泳水着を着用の元、プールサイドにいた。
「じゃあ、まずはシンクロの基礎となる練習から行くわよ!!」
麻奈と菜月と聖が見ている中、蘭は力強く喋った。
「あの、まずは何の練習からやるのでしょうか?」
早速、菜月が蘭に質問をした。
「良い質問ね。まずは開脚を出来るようになってもらうわ!!」
「開脚!?」
菜月の質問に対し、蘭は両足を幅広く伸ばす開脚が出来るようになれと言った事に対し、菜月だけでなく麻奈も驚いた。
「当ったり前じゃない!! シンクロと言ったら、水中で行うバレーみたいなものよ。両足が上手く上がらなかったら話にならないわよ!!」
「そっ、そうですよね……」
蘭から開脚の練習を行う理由を聞かされた麻奈は、あまり自信気がないような感じで、暗い表情で頷いた。
そして、蘭は早速、開脚の手本を見せる為、両足を広げた。
「いいっ、最低でも、これぐらいは出来ないとダメよ!!」
そう言いながら、蘭は両足を左右に広げたままの状態で、プールサイドの床に座った。
「すっ、凄い!!」
左右に両足を広げた状態でプールサイドに座り込んだ状態の蘭を見た麻奈は、凄く驚いていた。
「まだまだ、こんなものじゃないわよ!!」
そして、更に蘭は両足を首の後ろにかけた。
「えぇ!! これもやるんですか!?」
そんな状態の蘭を見た麻奈は、更に驚いた。
「さっきのは、無しとして…… もう1つ、これは出来るようになってもらうわ!!」
そう言いながら、蘭は右足を自分の身体の右側にくっ付く様に上げ、I字開脚を披露した。
「すっ、凄すぎです!! 蘭さん!!」
蘭のあまりにも凄すぎる開脚を見た麻奈は、言葉に表せないぐらいに驚いていた。
「にしても、蘭さんって、以外にも身体が柔らかいのね」
「当ったり前でしょ。平泳ぎでは、足の柔らかさが勝敗の左右を握っていると言っても良いぐらいなのよ。その為、毎晩、身体が柔らかくなる為のストレッチを欠かさずにやっているわ」
蘭の開脚を見た聖は、蘭の以外な特技に感心していると、蘭がI字開脚をやりながら、身体が柔らかくなる理由を言った。
その後、蘭はI字開脚を止め、次に麻奈と菜月と聖に開脚をやる様、指示を出した。
「はいっ、私が今やった様な開脚をやってみなさい!!」
蘭が両手でパンパンと手を叩いた後、麻奈と菜月と聖は、先程蘭がやったような開脚の練習を始めた。
すると菜月が、麻奈や聖よりも早くに、先程蘭が披露していた左右に両足を広げるヤツをやってしまった。
「あのっ、これぐらいなら、簡単に出来ますが?」
両足を左右に広げて座っている状態で、菜月は蘭に対して、簡単に出来た事を伝えた。
「それだけかしら?」
「あぁ、これも出来ますわ」
そして、蘭に言われるがまま、菜月は得意気になって、両足を首の後ろにかけた。
「なるほど~ さすがは、運動神経が良いだけはあるわね~」
「えへへ、それほどでも」
両足を首の後ろにかけ、陰部が前に突き出された状態で、蘭に運動神経が良い事を言われた菜月は、褒められたと勘違いをし、少し照れ笑いをした。
「だからって、調子に乗ったらダメよ」
そんな照れ笑いをしている菜月を見た蘭は、ニコッとした顔で菜月の突き出た陰部のハイレグカットの部分を掴み、グイッと引っ張り上げた。
「痛たたたたぁ!!」
蘭にハイレグカットの部分を引っ張られ、陰部にグイグイと食い込んだ為、菜月は凄く痛がった様子でいた。
両足を首の後ろにかけた状態であった菜月は、その場からすぐには自由に動けない状態であった為、蘭に思うがまま、やられている状態であった。
その後も、開脚の練習は続き、今度は聖が両足を左右に広げるヤツを披露した。
「わっ、私も…… なっ、なんとか、出来たわ……」
聖は、菜月や蘭とは異なり、両足を左右に広げて座り込む開脚をしただけで、凄く苦しそうな顔をしていた。
「あらっ、聖ちゃんも出来たのね」
「なっ、なんとか……」
「でも、まだまだね。もっとさわやかな顔をやりなさい!!」
聖が無理をして両足を左右に広げている事に気づいた蘭は、さわやかな顔をしながらでも出来るようにと、少しキツメの言葉で言った。
「そっ、そうね……」
それには、聖も苦しそうな表情で、あっさりと認めた。
そんな中、菜月と聖はなんとか出来た開脚であったが、麻奈だけは未だに出来ていなかった。
1人、何かにビクビクとした様子で、両足を左右にゆっくりと下ろしていた麻奈の様子が、蘭の目に入った。
「あらっ、麻奈ちゃんは、まだ出来ていないのね」
「あっ、蘭さん…… どうも私の身体は硬いので、なかなか両太ももが床に付きません」
蘭に見られた麻奈は、苦笑いをしながら開脚が難しい事を伝えた。
「そうなの。麻奈ちゃん、そんなゆっくりとやっていたら、いつまでたっても出来ないわよ」
すると、両足をビクビクと揺らしていた麻奈の様子を見た蘭は、厳しく指摘した後、ひとつの案を閃いた。
「そうだ!! 菜月ちゃんに聖ちゃん。麻奈ちゃんの足を押さえてくれないかしら?」
「えっ、まぁ、私は別に構わないけど……」
「蘭さんったら、また、よからぬ事を閃いたわね……」
蘭に言われるがまま、菜月は麻奈の右足を、聖は麻奈の左足を強く抑えた。
「私は、これから先、何が起ころうとも、絶対に2人を恨んだりはしないから……」
「阪野さん、悪くは思わないでね」
「これも、文化祭でシンクロ公演を成功させる為の特訓なんだから」
2人に両足を抑えられた麻奈は、心臓がバクバクと鼓動を鳴らせ、冷や汗をかきながら、これから先に起こる恐怖を予兆した。
そんな麻奈の予想通り、蘭が麻奈の身体を押しつぶす様に体重を駆けた状態で、麻奈の両肩に手を置いた。
「それじゃあ、麻奈ちゃん、歯を食いしばってね」
蘭はニコッとしながら、麻奈に歯を食いしばる様に一言声をかけた後、左右に広げた両足を菜月と聖に抑えられ、完全に逃げる事の出来ない状態の中、蘭は全体重をかけて、麻奈の身体を下へと力強く押しつぶした。
その瞬間、強引に両足を左右に伸ばそうとした痛さのあまり、麻奈は室内型プールに響き渡るほどの大声を出した。
「いっ、痛ったぁぁぁぁい!! 止めて、止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて!! 足が、千切れるぅ!!」
今まで、まともに両足を左右に伸ばしたりする開脚をやった事のない麻奈にとっては、尋常でない痛さであった。
その痛さは、まさに両足を引き千切られるような痛さであった。
その、あまりの痛さの為、麻奈は顔を真っ赤にし、両目からは大粒の涙がこぼれ落ちていた。
そんな凄い大声で、泣きながら痛がる麻奈の声には、さすがの蘭も驚かずにはいられなかった。
「麻奈ちゃん、凄い声ね…… でも、この痛さを絶えないと、シンクロ公演は成功しないのよ」
「もう、ジングロは良いから、手を放して!! 足が千切れるように痛い!! ホント、止めて止めて止めてよ!!」
麻奈は、泣きながら必死になって蘭に肩から手を放す様に言ったが、蘭は麻奈を甘やかさない為にと思い、心を鬼にして両手を肩からは放さなかった。
麻奈が大声で痛がる様子には、麻奈の足を押さえている菜月と聖にも聞こえていたが、2人とも蘭と同様に止めようとはしなかった。
「確かに、痛いのは分かるかも知れないけど、特訓はこれしかないのよ!!」
「だから、この痛さを耐えるのよ!!」
「えぇ!! むっ、無理だよ!! 足が千切れてしまうよ~」
痛さのあまり、泣きながら止めるように訴える麻奈の声を聞いた菜月と聖は、今すぐにでもその押さえている足を放したかったが、ここで足を放してしまうと、今後も麻奈が開脚が出来ないと思い、菜月と聖も蘭と同様に心を鬼にして、麻奈の足を放そうとはしなかった。
その為、しばらくの間、プール内では、麻奈の断絶魔の叫びが響き渡っていた。




