新たな目標
先程の一件の後も、麻奈達はシャワー室を出ずに、全裸のままシャワー室で話をしていた。
「そう言えば、今年の大会シーズンは終わってしまったし、残りの1年は何をしようかしら?」
シャワー室で、全裸のまま壁に持たれながら、蘭は残りの数ヶ月の部活の活動内容の心配を始めた。
「室内型のプールなんだし、夏が終わっても、プールぐらいは使えるんじゃないの?」
「まぁ、それはそうだけど」
そんな蘭の心配に、同じく全裸のまま反対側の壁に持たれていた菜月が答えた。
「じゃあ、練習で決まりね」
そして菜月は、練習しかないとあっさり決めてしまった。
「やっぱり、そうなるのね」
「当たり前じゃないの。練習をして、来年こそは、前の大会よりも高成績を出さないとね」
それを聞いた蘭が、以外にも何か考え事があるかの様に、重い感じで返事をすると、それを聞いた菜月が、反対に蘭の気合いを入れる様な事を言った。
すると、さっきまで何か考え事があるかの様に重い感じの表情をしていた蘭が、菜月の言葉を聞いた途端、いつもの様に明るくなった。
「確かに、菜月ちゃんの言う通りね。来年は私は3年生だし、最後の大会なので、高成績を残したいわね」
「やっぱり、そうですよ‼ 来年こそは、大きな大会でも勝ちましょうよ‼」
「私も、前回の大会の時に、昔の様に水泳に対する気持ちを思い出せたので、この調子で頑張って行きたいわ」
同時に、蘭と菜月と同じく全裸のまま壁に持たれながら話を聞いていた麻奈と聖も、来年に向けて練習を頑張る気持ちでいた。
「そうね…… 来年は、大きな大会でも勝てるように、また、みんなで頑張りましょ‼」
「はいっ‼!」
練習を頑張ろうという気持ちでいた後輩達を見た蘭は、そんな気持ちに答えるかの様に、共に頑張ろうと言うと、それを聞いた麻奈と菜月と聖は、ニコッとした表情で元気よく返事をした。
そんな感じで、蘭とのシャワー室での裸の話が終わったかと思った矢先、蘭は先程から本当に言いたかった事を言い出した。
「確かに、練習も大事だけども…… これからの季節と言ったら、学校行事で何があるかしら?」
シャワー室を出ようとしていた麻奈と菜月と聖に対し、突然蘭は、立ち止まらせるかの様に言った。
「何があるって…… 特別な学校行事でもあるの?」
蘭の声を聞いた麻奈と菜月と聖はシャワー室の入り口前に立ち止まり、その中で、聖が蘭に対し学校行事についての質問を始めた。
「まさか、聖ちゃんは、秋の学校行事を知らないの!?」
「知らないから聞いているんじゃないの」
そんな聖の惚けた質問を聞いた蘭は、目をキョトンとさせ、驚いた表情をした。
「まさか、聖ちゃんは、中学の頃に海外に居たから、日本の学校行事を知らないのじゃないかしら?」
「成る程ね。それなら疑問に思ってもおかしくはないわ」
目をキョトンとさせた蘭とは異なり、麻奈と菜月は、聖が質問を行った理由を知っていた。
「成る程!! それで聖ちゃんは、学校行事の質問をしたのね」
それを聞いて、蘭は納得をする様に頷いた。
「いいわ。教えてあげるわよ。秋の学校では、体育祭や文化祭があるのよ」
「なるほど…… 体育祭や文化祭ね」
その後、蘭が得意気そうに話しかけると、それを聞いた聖は何か考え事を始めた。
「だから、その体育祭や文化祭がどうしたのよ?」
聖の考え事は、なぜいきなり蘭が体育祭や文化祭の話を持ちかけた事なのかであった。
「だからって、せっかくなんだし、この水泳部のメンバーで、何かやれる事はないかなっと思って……」
「ないんじゃないの?」
聖の考え事に対し、蘭は少し照れた様子で体育祭や文化祭で皆で出来る事はないか聞いてみたが、それを聞いた聖はあっさりと無いと言い返した。
「いや、もっと考えましょうよ‼」
「考えるって言っても…… 体育祭は陸上での競技がメインだし、文化祭で何か出来るものって、あったかしら?」
「高校の文化祭と言ったら、屋台ぐらいかな?」
聖の興味の無さそうな反応を見たあと、蘭は真面目に考えるように注意をすると、菜月と麻奈が文化祭で出来そうな何かを考え始めた。
「ん~ もっと水泳部らしい事は出来ないのかしら?」
「水泳部らしい事と言われましても、文化祭で水泳部らしい事って、何かありましたっけ?」
「何かあったかしら?」
文化祭で、水泳部らしい何かはないか、蘭と菜月は考え始めた。
そんな中、麻奈が何か思いついたかのように喋り始めた。
「文化祭で…… 水泳部と言ったら……」
「文化祭で、水泳部と言ったら? 何!?」
麻奈が喋り始めた途端、蘭と菜月は麻奈の喋る答えが気になった仕方がなかった。
「ほらっ!! シンクロがあるじゃないの!!」
「シンクロ!?」
麻奈が文化祭で水泳部らしいことは出来ないかと考えた矢先に思いついた答えは、シンクロであった。
突然の麻奈が発したシンクロと言う言葉を聞いた蘭と菜月は、凄く驚いた。
「うん!! シンクロを文化祭でやるんだよ」
「確かに、シンクロをやってみるのは面白そうね」
「文化祭で水泳部のシンクロと言ったら、普通は男子がやるものだけども、女子がやっても面白いかもね」
始めは驚いていた菜月と蘭であったが、すぐに麻奈の思いついた案に興味を持ち、共に賛成をした。
「そうでしょ!! 面白そうでしょ!! あのドラマみたいにシンクロをやるんだよ!!」
「なるほどね。あのドラマの様に…… 確かに面白そうね」
そして、麻奈が某男子高校生のシンクロドラマの事を言うと、蘭も共感をしながら言った。
そんな感じで文化祭でシンクロをやろうという話で盛り上がっていた中、聖だけはその盛り上がりの中には入らなかった。
「あの…… 文化祭でシンクロって、まさか世界水泳でもやる、あのシンクロの事?」
「まぁ、あのシンクロで間違いはないけど、私達がやるのは、世界水泳とかでやる様なシンクロではなく、某男子高校生のシンクロドラマでやったようなシンクロだよ」
「某男子高校生のシンクロドラマ? 何の事かしら?」
聖が盛り上がりの中に入らなかったのは、某男子高校生のシンクロドラマを知らなかったからである。
その為、麻奈は聖に某男子高校生のシンクロドラマの簡単な説明を行った。
「…… なるほどね。私がイメージするシンクロとは少し異なりそうだけど、やってみたら、意外と面白そうじゃない?」
「でしょ!! でひ、文化祭はこのメンバーでシンクロをやろうよ!!」
そして、麻奈は聖に文化祭でシンクロ公演をやろうという事を、聖の両手を握りながら強く言った。
「私は、別に良いわよ」
「ホント!? やったー!!」
すると、聖はあっさりとOKをした。
その返事を聞いた麻奈は、全裸のままシャワー室の入口で高くジャンプをした。
その様子を見た蘭も、嬉しそうな様子であった。
「これで、次の目標が出来たわね。文化祭でシンクロ公演なんて面白そうじゃないの」
そして、夏休みがもうすぐ終わるある日の部活の練習後のシャワー室で、麻奈達の水泳部の次なる目標が生まれた。