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泳ぎのバトンタッチ!!

 そして、時間は今に戻り……


「なるほどね、それで黒い奴の競泳水着がハイレグになったというワケか」


聖が競泳水着のスパッツ部分を切ってハイレグにした理由を知った安奈は、納得をしながら頷いていた。


「そうよ!! これで、聖ちゃんが本気を出しているという事が分かったでしょ!!」


「だからと言って、勝てるとは限らないだろ?」


「あらっ、相当自信がある様ね?」


「そりゃそうだろ? だって、午前の時のレースには勝っているんだから」


蘭から、聖の本気度を聞かされた後でも、安奈は午前中の時の様に勝負に勝てると、余裕を持って思っていた。


「まっ、これで蘭のところは、チーム全員がハイレグになったんだから、ハイレグチームで、精々頑張れよ。んじゃな」


その後、午後のリレーでも勝てる自信のある安奈は、余裕の表情で、蘭とそのチームメイトに向かって後ろ向きで手を振りながら去って行った。


 そんな安奈の様子を見ていた蘭もまた、午後のレースに負けないという気持ちで燃えていた。


「安奈ちゃんはあんな事を言って、余裕を見せているけど、私達も安奈ちゃんに負けない様に頑張りましょ!!」


「そうですよ!! 私達だって、やれば出来るというところを、見せてやるんですから!!」


「ハイレグでも、勝てるというところを、見せてやりたいわ」


蘭が、後ろを振り向き、勝負に勝とうという意気込みを見せると、その反応を見た麻奈と菜月も蘭と同じ様に勝負に勝とうという意気込みを見せた。


 そして、麻奈と菜月に続き、聖もまた、蘭に勝負への意気込みを語った。


「もちろん、私だって…… 勝ちたいです」


「そりゃそうでしょうね、聖ちゃん。だからこそのハイレグでしょ!!」


「……」


「まぁ、とにかく…… 聖ちゃん」


「何かしら?」


「レースのアンカーなんだから、とびっきり凄い泳ぎを見せて頂戴ね!!」


「わっ、分かってるわよ…… 私だって、午前の時みたいには負けたくないんですから……」


そんな聖は、蘭にレースの勝敗を託されるように言われた後、それを聞いた聖は少し赤面な顔になりながら、蘭の期待に応える事が出来るレースにする事を約束した。


 その後、蘭はこの後始まるリレーのレースが行われるプールを、両手を腰に当て、仁王立ちをしながら見ていた。


「そうね、そうこなくっちゃ!! みんな、レースには絶対に勝つわよ!!」


「はいっ!!」


「分かってますよ」


「全力を出してみるわ」


そんなプールを眺めながら言った蘭の気合の入った一言の後に、その気合の一言に返す様にしながら、麻奈と菜月と聖も気合を入れた返事を返した。



 そして、時間はリレーのレースが行われる時間へ……


リレーのレースに出場をする選手達は、それぞれのスタート台の位置にスタンバイを始めた。


まず初めは背泳ぎから行われる為、背泳ぎを泳ぐ麻奈は、他の選手と一緒にプールの中へと入った。


「それでは、位置について。よーい……」


審査員の掛け声と共に、レースに出場をする選手は、スタート台の下にある鉄の棒を掴み、背泳ぎを泳ぐ体制を取り始めた。


『ピィ!!』


そして、審査員の鳴らしたスタートの合図と共に、プールの中にいた選手達は、一斉に飛び込むような勢いで、掴んでいた鉄の棒を放し、背泳ぎを泳ぎ始めた。


同時に、他の選手達と一緒に、麻奈も鉄の棒を放し、背泳ぎを始めた。


そんな麻奈は、全力で精一杯の力を振りだし、仰向けの状態で両足をバタバタと動かし、両腕を回しながらプールの中を泳いだ。


(私だって、やれば出来るんだから……)


麻奈の泳ぎは、速くない為、他の選手達には追い付かなかったが、それでも麻奈はレースの終盤まで諦める事はなかった。


そんな麻奈の泳ぎを、蘭はスタート台の上から見守る様に見ていた。


(麻奈ちゃん、充分に頑張ったわ。後は私に任せておきなさい……)


そして、麻奈が背泳ぎの状態で、指先をスタート台の壁に手を当てた途端、それを確認した蘭は、麻奈と代わる様にプールの中へと飛び込んだ。


蘭は、カエルの様な足の泳ぎをやりながら、水面を両手でかきながら泳ぐ平泳ぎを泳いだ。


一方、泳ぎ切った麻奈は、プールの中に浸かったまま、凄く疲れ切った状態で顔を水面に向け、スタート台の壁に右手を付いて立っていた。


「はぁはぁはぁ…… らっ、蘭さんなら、きっ、きっとやってくれる……」


そんな麻奈の思いが通じたのか、蘭は先を泳いでいた選手達を、次々と抜かして行き、ついには、ゴール間近では3位にまで来た。


(私が、ここで巻き返さないと、菜月ちゃんと聖ちゃんに悪いわ……)


蘭は、先に泳いだ麻奈、次に泳ぐ菜月、そして最後に泳ぐ聖の事を考えながら、プールの中を泳いでいた。


 そして、蘭と隣のレーンで泳いでいた選手がほぼ同時にスタート台の壁にタッチをした瞬間、それを確認した菜月は、勢いよくプールの中へと飛び込んだ。


「菜月ちゃん…… 次は任せたわよ……」


泳ぎ終えた蘭は、プールの中に浸かりながら、スイムキャップとゴーグルを外し、プールの中へと飛び込んでいった菜月の泳ぎを見守っていた。


プールの中へと入った菜月は、両腕を水の中で力強く回し、まるでイルカの様に身体をクネクネとさせながら水中を進むように泳いでいた。


(前へ前へ…… 全力を出せば、きっと上位で次へ行けるわ……)


出だしは、そこそこであった菜月だったが、自身の運動神経の良さを武器に、レースの中盤から前を泳いでいた選手を抜かし、ついにはトップになった。


そして、後半からはトップを泳いでいた菜月は、ついにアンカーである聖が立っているスタート台の位置まで泳いできた。


 そんな菜月の豪快な泳ぎを見ながら、リレーのアンカーで自由形を泳ぐ聖は、両手でゴーグルのレンズの部分を持ちながら、両目に装着をして、スタート台の上で待機をしていた。


一方、聖の隣のレーンには、あの安奈が聖と同じ様に、ゴーグルを装着しながら待機をしていた。


「おいっ、ハイレグにした奴、それで負けたら、本当にタダの恥かしい行為で終わるよな。それだとホント、笑い話だよな」


「全く、そう言うのは、私に勝ってから言いなさい」


「何言ってんだよ。気持ちだけを切り換えたって、実力なんて変わらないんだよ。バカ」


隣のレーンにいた安奈は、聖を挑発するように色々と言ってきたが、聖は特に気にする事無く、今のレースに集中していた。


 そして、菜月がバタフライを泳ぎ切り、スタート台の壁をタッチした瞬間、それを確認した聖はプールの中へと飛び込んだ。


聖が飛び込んだのと同時に、安奈もにプールの中へと飛び込んだ。


「聖、任せたわよ!!」


「分かってるわ。大神さん!!」


泳ぎ終えた菜月は、アンカーである聖に一言応援の声をかけると、それを聞いた聖は、プールの中へと飛び込みながら、菜月の応援に答えた。


そして、菜月はプールの中に浸かりながら、スイムキャップとゴーグルを外し、レースのアンカーである聖の自由形の泳ぎを見守っていた。


そんな聖は、両足をスイスイと動かしながら水面を進み、1秒でも速く速くと腕を前に出しながら、自由形というフリーを全力で泳いでいた。


(午前中は、あの人に負けてしまったけど…… 今度は絶対に負けないんだから!!)


聖は、午前中に安奈に負けた悔しさをバネに、それを強い気持ちに変え、絶対に勝つという気持ちに変えて泳いでいた。


それと同時に、同じチームである菜月や麻奈や蘭の頑張りを無駄にはしたくないという気持ちもあった。


(今までハイレグは、ただ露出度の高い恥かしいだけの水着でしかないと思っていたけど…… 直に素肌が水に触れる部分が多いせいなのか、まるで、水と一体化した様な気分だわ……)


今までスパッツタイプであった聖にとっては、ハイレグタイプにより、下半身の露出が大幅に増えた事により、素肌が水に触れる部分が多くなった為、スパッツタイプであった時以上に、水と一体化をした気分で優雅に泳いでいた。


 そんな聖が泳ぐ自由形のレースも終わりが近づいてきた。


ゴールに近づくにつれ、プールの周りの観客席を始め、周辺からは完成の声が鳴り響いたが、プールの中で自由形を夢中になって泳いでいる聖には、その完成は全く聞こえていなかった。


そして、いよいよゴールが近づき、スタート台が見えたのを確認した聖は、全力を出して泳ぎ、スタート台の壁にぶつかる直前で、自由形を泳いでいた状態からの右手でスタート台の壁をタッチした。


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