新たな気持ちで
蘭の後ろにいた聖の着ていた競泳水着が、午前の時に着ていたハーフスパッツタイプの競泳水着ではなく、蘭を始め後ろにいる麻奈や菜月と同じ、太股や腰が完全に露出したハイレグタイプの競泳水着に変わっていた為、安奈は驚きを隠せなかった。
「おいっ!! 黒いヤツの競泳水着が変わっているけど、一体何があったんだ!?」
「あら? 気になる様ね。教えてあげても良いわよ」
「勿体ぶらずに、教えろよ」
「良いわよ、教えてあげる……」
そう言いながら、蘭は聖の競泳水着が変わった事で疑問に思っている安奈に、その真相を語り始めた……
~話は、少し前に戻り~
ピクニックシートの上置かれていた救急箱を取り出した聖は、その救急箱を開け、その中に入っていたハサミを取り出した。
そのハサミを手にした聖は、今度は自分の着ている競泳水着のスパッツの一番下の部分を掴み、引っ張り上げた。
その様子を見た蘭は、聖の行動に疑問視した。
「あらっ? 聖ちゃん、どうしたのかしら?」
そんな蘭が疑問視しながら見ていると、聖は突然、自分の着ていた競泳水着のスパッツの部分を手に持って板ハサミで切り始めた。
その様子を見ていた蘭は、驚きを隠せなかった。
「きっ、聖ちゃん!! 何をやってるの」
聖の突然の行為に関しては、すぐ近くにいた麻奈や菜月も突然の出来事に驚きを隠せなかった。
「何も、そんなトコを切らなくても!!」
「あ~あ、やっちゃった…… 後悔しなければ良いけど……」
聖がハサミで競泳水着のスパッツ部分を切り出す光景を、蘭と麻奈と菜月は、ただ驚きながらその様子を見ていた。
そして、始めは競泳水着のスパッツで覆われていた太股であったが、ハサミでスパッツ部分を切って行くうちにどんどんとあまり日に焼けていない白い肌の太股が露出し始めてきた。
その後も、聖はハサミでスパッツ部分を切って行き、ついには股部分にまで達し、そこから更に競泳水着にハサミを通し始めた。
そして、右半分の競泳水着をハサミで切り終えると、先程まで競泳水着の一部であったスパッツとその一部は、今やただの一枚布の様になり、ヒラリとピクニックシートの上に落ちた。
その為、聖の着ている競泳水着の右半分は、太股だけでなく、腰や股、更にはお尻の部分のあまり日焼けのしていない白い肌が完全に露出したハイレグの形となった。
その後も、聖はハサミで着ている競泳水着を着るのを止めず、今度は左半分の競泳水着のスパッツを切り始めた。
そちらの方は、先程よりも手慣れた手つきで切っていた為、少し早くに切り終わり、左半分の競泳水着のスパッツとその一部の部分もまた、切り終えた後には、完全な一枚布となり、ヒラリとピクニックシートの上に落ちた。
そして、両方のスパッツ部分を完全に切り落とた後、聖の黒い競泳水着は今や完全に麻奈や菜月や蘭と同様のハイレグタイプの競泳水着となった。
今まではスパッツや一部の布で覆われていた太股や腰や股が丸見えになり、更には股部分のハイレグカットのすぐ横側からは陰毛の剃り跡も見えていた。
そんな聖は、自分で着ていた競泳水着をスパッツタイプからハイレグタイプに変えた後、聖はハサミの持つ場所の穴に右手の人差し指を指し、そのハサミをクルクルと回しながら、ピクニックシートの上に座って驚きながら見ていた蘭や麻奈や菜月の方をジッと見だした後、聖は下を向き始めた。
「ハイレグって、下半身がほとんど露出していて、ホント、凄く恥ずかしいわね……」
聖は、改めてハサミで切った競泳水着のハイレグ部分を見ながら、少し赤面な顔になった。
ハイレグとなった競泳水着のハイレグカット、白く露出した太股をジッと見続けていた聖に、蘭は一言話しかけた。
「聖ちゃん、どうして突然、競泳水着のスパッツ部分をハサミで切り出したりしたのかしら?」
「そうだよ!! 突然そんな事をしたら、ビックリするじゃないの!!」
「なんでまた、恥かしいハイレグになんかしたのよ!?」
蘭だけでなく、股と菜月も聖が突然ハサミで競泳水着を切り出したことを疑問に思っていた。
「あぁ、これね…… みんなと心を一つにする為よ」
「どういう事かしら?」
「この学校の水泳部は、先輩たちの代から競泳水着はハイレグタイプ限定っていう、バカげた伝統があったでしょ。それでよ」
聖が、ハサミで競泳水着を切った理由を言った後、蘭はまだ疑問に思っていた為、聖は更に詳しい理由を言った。
「でも、聖は蘭さんからも特別に、スパッツタイプで良いって認められていたじゃない。なのに、どうして?」
聖が言った理由を聞いた後、菜月が疑問を持ちながら、質問をやってきた。
「だから、みんなと心を一つにする為よ」
「だから、何の事よ」
「菜月ちゃん、さっきから言ってるじゃない。聖ちゃんがスパッツをハサミで切ったのは、私達と同じタイプの競泳水着にして、チーム一丸となって心を一つにする為。そうでしょ!!」
「さすがは、蘭さん。そうよ、確かにその理由ね」
蘭が、自分の言った言葉の意味を知っていた為、納得をした様に頷いた。
「それ以外に理由があるとすれば、午前中のレースに負けたからよ」
「負けた事と、何の関係があるのかしら?」
その後、聖が競泳水着のスパッツをハサミで切ったもう一つの理由を語ると、それを聞いた蘭はその理由に関し疑問に思った。
「負けたらハイレグにしろと言ったのは、蘭さんの方でしょ。まさか、忘れたとか」
「あぁ、そう言えばそんな事言ったのは覚えているわ。まさか、本気で信じているなんて」
「まっ、まさか、冗談だったの!!」
「いや、普通に冗談でしょ。仮に本当だったとしても、ハサミでスパッツを切る事までは想定外よ」
その為、聖がハイレグにしたもう一つの理由を語ると、それを聞いた蘭は、軽く冗談であったと言い返すと、その真実を知った聖は、目を丸くする様に驚いた。
その後、聖は一瞬だけ顔を下に向け、すぐにまた顔を上げた。
「まぁ…… 冗談だったと言うのは置いといて。私がスパッツの部分を切ったのは、今までの私から、これからの新しい私に生まれ変わると言う、私自身の気持ちの切り替えの意味もあるし……」
「そう!? それでこそ、私が見たかったスイマーよ!!」
「ちょっと、蘭さん…… こんなところで抱きつかないで……」
聖が競泳水着のスパッツを切ったのは、新しい気持ちに生まれ変わるという覚悟を決めた証である事を知った蘭は、その強い覚悟を形に表した聖の意を称える形で、飛びつくように聖に抱きついた。
その後、午後のレースの時間が近づいて来ると、蘭は着ていたジャージの上着を、脱ぎ出し、空高く投げ出した。
「さぁ、このメンバーで、午後のレースに勝つわよ!!」
「うん、私、絶対に頑張るよ」
「私だって、負けないんだから」
「私も、昔みたいに、少し本気を出してみるわ」
その後、蘭に続き、麻奈と魔月と聖も、着ていたジャージの上着を、その場で脱ぎ捨てた。
そして、ピクニックシート等の荷物を片付けた後、蘭だけでなく、麻奈と菜月と聖は、このチームで最高の泳ぎをするという一つの覚悟を決めた状態でいた。
「じゃあ、午後のレースには勝つわよ!!」
蘭の一言と共に、麻奈達は大会のレースが行われるプールへと歩いて行った。