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敗北……

 蘭が出場をしていた平泳ぎのレースも、すぐに終わり、レースを終えた蘭が麻奈達のいる場所へと戻って来た。


「たっ、だいまぁ~」


「あっ、蘭さん、お帰りなさい」


麻奈達のいる場所へと戻って来た蘭は、凄く機嫌が良かったのか、元気よく言った。


「私の活躍を見てた?」


「はいっ、観てましたよ!! 蘭さんが勝つところを」


「蘭さんも、意外とやりますわね」


「確かに……」


戻って来るなり、蘭は麻奈達に自分が泳いでいたレースを見ていたかを、嬉しそうに聞いた。


すると、3人とも、蘭のレースを見ていたと答えた。


「そうでしょ!! 私って凄いでしょ!!」


蘭は、レースの結果を、鼻を伸ばし高々と自慢をする様に語り出した。


そして、蘭が凄く機嫌がよかった理由は、大会のレースに勝てたからであった。


「やっぱり、蘭さんは凄いですね!!」


「そうでしょ? これこそが、私の実力よ!!」


そんな蘭の自慢には、麻奈だけが羨ましそうにしていた。


更に、そんな麻奈に対し、蘭も更に調子を乗った様子で、喋っていた。


「実は、単に相手が弱かっただけじゃないの?」


そんな中、聖は蘭がレースで勝てた理由として、同じレースに出場をしていた人達が弱かっただけではないかと疑った。


「あらっ? 聖ちゃんは、私が実力で勝った事に疑いをかける気なの?」


「えぇ。だって、蘭さんは普段からあまり真面目に練習をしている様には見えないし…… 何よりも、大体、良くそんなハイレグで勝つ事が出来たわね」


聖は、蘭の実利を疑った理由を喋った。


「そんな理由なのね。勝ったのは、水着のタイプなんかは関係ないわ。あるのは実力のみ」


「そんな見た目で、良くそんな事が言えるわね。一体、何を言ってんだが……」


「要は、能ある鷹は爪を隠すって事よ」


「……」


聖は蘭に本当に実力で勝てたのか疑いながら蘭の着ているハイレグタイプの競泳水着を見ていると、蘭は水着のタイプに関係なく実力で勝てた事を、聖に伝えると、聖は考え込むように黙り込んだ。


 そうこうしている内に、次のレースの始まりを告げるアナウンスが聞こえてきた。


次のレースはクロールであり、この種目に出場をする聖は、レースに出場をする準備を始めた。


「そう言えば、次は聖ちゃんの番ね」


「だから、どうしたのよ?」


レースに出場する為、腕のストレッチを行っている聖に対し蘭が話しかけると、聖は鋭く冷めた様な目線で、蘭を見た。


「勝って来て頂戴ね♪」


「当たり前でしょ。勝つに決まっているわよ」


蘭は、ニコニコとした表情でレースで勝つ様にと聖に言うと、聖は自信満々に勝つと言いながら、髪を結び、スイムキャップを被り、そして、頭にゴーグルを装着した。


「聖ちゃんなら、絶対に勝てるよ!!」


「私でも勝てたから、聖なら、間違いなく勝てるよ!!」


レースに出る準備をしている聖に対し、麻奈と菜月も共に、聖は絶対に勝つと思っている様子であった。


「だから、絶対に勝てるわよ」


そんな麻奈と菜月に対しても、聖は自信満々に答えた。


 そして、レースが行われるプールに向かおうとした聖に対し、蘭は一言声をかけた。


「そんなに勝つ自信があるのなら、もし、負けた場合はどうする?」


「だから、この私が、こんなレベルの大会で負けるわけがないじゃないの」


プールへと向かおうとしていた聖は、蘭の一言を聞いて立ち止まった。


「そう…… じゃあ、もし1位を取れなかったら、聖ちゃんの競泳水着は、私達と同じハイレグタイプに変更ね♪」


「バカバカしい…… 好きにしたらどう? 私はフリーでは負けないから」


蘭は、自信満々である聖がもし負けた場合、着ている競泳水着をスパッツタイプからハイレグタイプに変更するよう言って来た。


しかし、聖はまともに応じようともせず、無視をする感じでレースが行われるプールへと歩いて行った。


(聖ちゃんは勝つ自信があるようだけど、その考えが甘いのよ。なんせ、聖ちゃんが出場するレースには、安奈ちゃんがいるのだから……)


レースへと向かっていく聖の様子を、蘭はニヤリとした表情を浮かばせながら見ていた。



 そして、聖がレースが行われるプールに着いた頃には、既にレースに出場をする人達は来ており、泳ぐ為の準備を予て、ストレッチ等の準備をしていた。


(既に人が集まっているわね。どれもみんな、大した経験のなさそうな人達ばかり…… 所詮、地方の大会なんて、こんなレベルなのよ)


聖はレースに出場をする相手選手を、見下す様に見ていた。


そんな聖も、相手選手と同様に、自分が泳ぐレーンの位置でストレッチを始めた。


(蘭さんは、負けたらハイレグに変更しろとか言っていたけど…… 大会に出ている相手選手は、みんなスパッツじゃない。こんな中で1人、骨盤が丸見えな露出極まりなハイレグで出ろとか、羞恥心を晒すタダの罰ゲームでしかないわね)


その時、聖は、相手選手の着ている競泳水着を見ながら、先程、蘭に言われた事を思い出していた。


そして、ストレッチをしながら相手選手を見渡していた時、聖はどこかで見覚えのある選手に目が止まった。


(あれっ、あの人は…… 確か、この前の全裸の人……)


聖が目を止めてまで見た選手は、蘭の幼馴染である安奈であった。


安奈は、聖の隣のレーンでレースを出場をする様であり、聖の隣で、既にゴーグルを装着をした状態で、足のストレッチをやっていた。


(そう言えば、この人も、専門種目はフリーだったはず。でも、見た目がバカそうだから、負ける事はないか……)


聖は、安奈をジッと見続けていたが、安奈は聖の事には全く気が付かない様子で、そのままレースに出場をする為のストレッチをしていた。



 そして、レースの時間は始まり――


レースに出場をする選手達は、スタート台の上に立ち、飛込みをする態勢をとった。


「よ~い…… ドン!!」


審査員の人からのレース開始の合図と共に、会場全体に響き渡る様なピストル音と共に、レースに出場をしている選手達は、一斉にプールの中へと飛び込んで行った。


他の選手と同様に、プールの中へと飛び込んだ聖は、スイスイと水中の中を進むようにして、レースの種目であるクロールを泳ぎ始めた。


(私が、ここにいる人達に、負けるわけがないわ。ここにいる人達は、所詮はタダの人。本当の苦しみなんて分かるわけのない素人でしかないわ。そう、隣で泳いでいる蘭さんの友達の人も……)


水中の中を泳いでいる間も、聖は蘭に言われた事が気になっていたのか、考え事をしながら、大会のレースを泳いでいた。


 大会のレースは、100メートル程しかない為、すぐに終わる。


そして、100メートルのレースを泳ぎ切った聖は、自分が泳いでいた場所のプールの底に立ち、その場所からレースに出場をした人の順位が表示される、大画面のモニターを確認し始めた。


(そろそろ、順位が表示されるわね。このレースなら、見なくても私が1位を取れているわね)


聖は、少し息を切らせながら、そのままモニターを見ていた。


 そして、レースに出場をしていた人の順位が、大画面のモニターに表示された。


その順位が表示されたモニターを見た瞬間、聖は驚きを隠せなかった。


当初の予想とは異なり、聖は1位ではなかったからである。


1位とのタイム差がほんの数秒ほどしか差がなかった聖は、2位という結果に終わってしまった。


(えっ!? 私ではなく…… あの人が1位……)


そのモニターに表示された結果を見た聖は、その場で呆然と立ちすくんだ。


モニターに、1位と表示された人の名前は【金井安奈】であった。


そう、聖は蘭の幼馴染である安奈に、得意種目であるクロールで負けてしまったのである。



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