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いざ部室へ②

 蘭が水泳部の部長と知ったあと、麻奈はしばらく驚いたままでいた。


そして、しばらく時間が経過した後、麻奈は水泳部の部長と知った蘭に、改めて話しかけた。


「まさか、水泳部の部長とは知らずに色々と失礼を……」


「知らなかったら、今覚えておいたら良いわよ! そんな事を気にせずに」


水泳部の部長とは知らずに、色々と失礼な態度をとってしまったと思い込んだ麻奈は、水泳部の部長である蘭に申し訳ないように謝った。


すると、麻奈が申し訳ないように謝る姿を見た蘭は、水泳部の部長とは知らずに失礼な行動を取ってしまったと思い込み、落ち込んだ様子でいた麻奈を元気付けるような感じで「気にせずに」と言って励ました。


「誰だって、初めは知らない事ばかりなのよ。知らないことは覚えて行けばいいだけの事よ!」


「そっ…… そうですよね。先輩……」


「あらっ、麻奈さん、私の事は先輩と呼ばずに。蘭さんでいいわ」


「で、でも……」


「でもじゃないの。こんな場では、硬い感じの上下関係なんて無しで、気楽に考えていきましょ!」


「そっ、そうですね……」


麻奈が蘭の事を先輩と気を使った感じで言うと、それを聞いていた蘭は硬く感じる上下関係なんて気にせずに気楽に行こうと麻奈に言い聞かせた。


そして麻奈は、蘭の言う事を聞くように先輩と付けるのを止めた。


「それじゃあ、なんて呼べば良いかしら?」


蘭に先輩と付けて呼ぶなと言われてしまった麻奈は、次に先輩である蘭の事をなんて呼べばよいのか少し考え込んでしまった。


「そんなのは友達感覚に、蘭さんって呼んでくれればいいわ」


「本当にそんなので良いんですか!? 蘭さん?」


「ええ、良いわ。そのかわり、私もあなたの事を麻奈ちゃんと呼ばせてもらいますわ」


「それくらいなら、私全然構いません」


水泳部の部長である蘭の事を、なんて呼べば良いか考えていた麻奈に蘭は、自分の事を『蘭さん』と呼ぶように麻奈に言った。


そのあと蘭は、交換条件のように麻奈の事を『麻奈ちゃん』と呼ぶと勝手に決めてしまった。そのことを聞いた麻奈は、クスッと笑いながら『麻奈ちゃん』と呼んでも良いことを認めた。


「でもよかった。こんなやさしい人が水泳部の部長で。実は私、今日までの間ずっと運動部の人達は上下関係とかで色々厳しい人達ばかりだと思っていたんですよ」


水泳部の部長が、麻奈の思っていたガチガチな体育会のイメージとは違い、気軽な人で清潔感のある可憐な女性であった為、麻奈はホッとため息をつくように今まで勝手に思い込んでいた運動部のイメージを呟いた。


「あらっ、麻奈ちゃんは運動部にそんなイメージを持っていたのね。確かにこの学校の他の運動部の中には上下関係が厳しい部活が幾つもあるわ。でも、私が部長として勤めるこの水泳部は、仲良しをモットーに楽しめる部活にしていこうと思うの」


麻奈が呟くように言った運動部のイメージを聞いた蘭は、自分が部長を務める水泳部は、運動部独特の厳しいイメージを無くし、部員皆で楽しめるような部活にしていきたい事を言った。


「へ~、そうなんだ。なんか楽しそうで良かった。私、この学校の水泳部に来れて本当によかったわ!」


「私もそう言ってくれて嬉しいわ。私も麻奈ちゃんが入って来てくれて本当に嬉しいわ。ありがとね」


蘭が部長としてこれから作っていく水泳部のイメージを聞いて、楽しそうだと言いこの学校の水泳部に来れた事を嬉しく思う麻奈であった。そして、そんな麻奈の言葉を聞いた蘭も、麻奈のような人が水泳部に来てくれたことを嬉しく感謝した。


「とは言っても、まだ入部はしていないんだけどね。ところで蘭さん、今日は他の部員さんはどこにいるの?」


先程から、このプール更衣室の中に自分と蘭しかおらず、他の部員がいそうな様子もなかった為に、麻奈は少し不思議に思った。


「あっ!? その件なんですけれども、実は私以外の部員はみんな今年の3月に卒業しちゃったの…… なので今は部員私1人なの」


「えぇ!? そうなの!?」


「本当よ、それに今月中に最低でも部員4人を集めないと廃部になっちゃうの……」


この水泳部に他の部員がいないことを不思議に思っていた麻奈に、蘭が現在部員が1人である事を落ち込むような感じで伝えた。それを聞いた麻奈は、ビックリ箱を見て驚くような顔をするほど驚いた。


「そっ、それじゃあ…… もし仮に本当に部員が集まらなかったら……」


「残念だけど、その時は廃部となってこの学校から水泳部という部活は消えてしまうの」


本当は知っている答えであったにも関わらず、麻奈は恐る恐る部員が集まらなかった場合を蘭に聞いてみた。もちろん、蘭から帰ってきた答えは聞かなくても分かる答えであった。


「そんなのイヤだよ。私、この学校のプールを見て、水泳部に入ろうと決意したのに」


初めから分かっている答えを聞いた麻奈は、わがままを言うような感じで部員不足で廃部になるのを嫌がった。


「それは、部員が集まらなかった時の話よ。それにまだ半月以上もあるわ。今月中に部員が4人いれば廃部にはならないのですから」


部員不足で自分の入部したいと思っていた水泳部が廃部すると思い、再び落ち込んだ麻奈を励ますように蘭は麻奈の背中をなでるように触った。


「という事は、2人、部員が入ってくれれば、水泳部は廃部にならなくて済むんですね!?」


「うん、そうよ。だから、正式入部の日までに部員2人が入れば、今年も水泳部は存続し続けることが出来るのよ」


蘭に背中をなでられた麻奈は、4人中残り2人を水泳部に入部をすれば廃部にならずに済むと思い、前向きな気持ちで考え始めた。


「だったら、正式入部の日までに、私が残り2人をこの水泳部に誘ってみるわ!」


「えぇっ、でも、なんか悪いわ」


「そんな事ないわ! 私だって水泳部の1部員ですから!」


そして、先ほどまで座っていた細長いイスのような場所から立ち上がった麻奈は、残り半月の間に残り2人の新入部員を見つけるという目標に燃え始め、立ったままガッツポーズをとった。

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