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始めての体験

 午前の海の中での、練習という名の遊びが終わり、海の家で昼食を食べたあとの午後からは、砂浜で一休みの時間となった。


「ここを、こうやって……」


麻奈は、砂浜の砂を使い、大きなお城を造っていた。


その砂のお城は、まさに芸術の如く、小さいながらも本物そっくりに造られていた。


「坂野さん、上手い事造るわね……」


あまりの上手さに、その砂で造られたお城を見た聖は、驚きを隠せなかった。


「さすがは、中学の時は美術部だっただけに、そういうのは上手いね」


「えへへ、凄いでしょ~」


缶ジュースを3人分買って、戻って来た菜月もまた、麻奈が造り上げた砂のお城を見て、麻奈の才能に感心をしていた。


「確かに、坂野さんには、私達の予想も付かない才能があるわね。午前の時の潜水の件にしても」


「そうそう、確かにあれには長いこと麻奈の友達をやっている、この私でもビックリしたわ」


買ってきた缶ジュースの1つを聖に渡した菜月は、麻奈の隠された才能の事を話し合っていた。


「え!? そんなに凄い事なの? 私はただ、海中を見たくて夢中になって潜っていただけなんだけどなぁ~」


「つい数ヵ月前まで泳げなかった人が、深い海の中を、魚の様にスイスイと泳いだ事が凄いのよ」


「ヒャア!! 冷たっ」


そんな、菜月と聖の会話を聞いていた麻奈は、自分のやって来た事は大したことがないように言うと、菜月から凄いと言われる部分を言われながら、ほっぺに冷たく冷えた缶ジュースを当てられた。


 その後、缶ジュースを持った麻奈と菜月と聖は、砂浜に座り、海を眺めながら菜月が買ってきた缶ジュースを飲み始めた。


「そう言えば、蘭さんはどこに行ったのでしょうね?」


そんな中、麻奈は午後になってから、どこに行ったのか、全く見かけない蘭の事を、心配する様子を見せた。


「まあ、どうせ蘭さんの事ですから、着ている競泳水着を男共に見せびらかして、ナンパ待ちでもやってるんじゃないの?」


「確かに、蘭さんならやりそうですね」


菜月の予想を聞いた麻奈は、イメージが合うと思い、クスッと笑った。


「そう言えば、蘭さんなら、何か買い物に行くとか行っていたわよ」


すると聖は、蘭の行方に関する情報を言った。


「買い物に行ったのか。何を買いに行ったのかな?」


「さあ、そこまでは言っていなかったわ」


 その後、麻奈は蘭が何を買いに行ったのか聖に聞いてみると、買い物に行くという情報以外は、聖は知らなかった。


そうしている間に、どこからともなく、蘭の声が聞こえて来た。


「みんな~ お待たせ~」


蘭の声を聞いた麻奈と菜月と聖は、一斉にその声のする方を向いた。


「あっ、蘭さんお帰り…… って、それどうしたんですか!?」


こちらに向かって走って来る蘭の姿を見た麻奈は驚いた。


走って、こちらに向かって来る蘭の両手には、サッカーボール以上の大きさのあるスイカが抱えられていたからである。


「あぁ、これね。近くの八百屋で買ってきたのよ」


驚いた麻奈に対し、蘭はニコッとした様子で、両手で持っていたスイカを見せつけた。


「どうして、またスイカなんて買って来たのですか?」


「夏の海水浴と言ったら、やっぱりスイカでしょ!」


そして、麻奈がスイカを買ってきた理由を聞いて来た為、蘭はスイカを買ってきた理由を言った。


「なるほど、確かにスイカは夏の食べ物ですよね!」


「でしょ! だからこそ、みんなで食べないと!」


その後、麻奈が喜ぶ中、蘭は再度嬉しそうに両手で持っているスイカを見せつけた。


「蘭さんも、たまには良いとこあるじゃないですか!」


「私は、いつだって、いい人よ」


そのスイカを見た菜月は、早くスイカを食べたそうな様子で、蘭とそのスイカを見ていた。


「でも、そのスイカをどうやって食べるの? 包丁とか持って来ていないし……」


そんな中、聖はどうやって、そのスイカを調理するのか疑問に抱いていた。


「スイカを食べるのに、包丁なんていらないわよ」


「じゃあ、何を使うの?」


「そこにある棒で叩くのよ!」


「え!? 叩くの?」


そんな聖の疑問に対し蘭が答えると、聖は更に考え込む様に疑問を抱いたため、蘭は砂浜に落ちている棒を指で指すと、それを見た聖は驚いた。


「どうやら、聖ちゃんは、スイカ割りを知らないみたいだね」


聖が、スイカ割りを知らないという事を知った麻奈は、ニコッとした表情で、聖の方を見た。


「だったら、聖がスイカを割ってみるといいよ」


「えぇ!? ちょっと、何をするの!?」


そして、菜月がどこからか持って来た白い紐で聖の両目を隠すと、突然の出来事に聖は戸惑った。


「スイカ割ってのはね…… こうやって、両目を隠された人が、棒を持ってやるのよ」


そんな聖に、蘭は砂浜で拾った、スイカを割るのにちょうど良い長さの木の棒を、聖に渡した。


「えっ、この状態でスイカを叩くのですか?」


「違うわよ。更にここから身体をグルグルと回すのよ!!」


「って、あれ~」


両目を隠された上、棒を手渡された聖はどうやってスイカを割ったら良いのか分からないままでいると、突然、蘭から身体をグルグルと回された。


 聖を回した後、蘭は急いで砂浜にスイカを置き、スイカ割りを行う聖に指示を出し始めた。


「さぁ、聖ちゃん、両手で棒を強く握って、しっかりと私達の指示に従いながら歩くのよ!!」


「えぇ!? わっ、分かったわ……」


その後、足をふらつかせた様子で棒を強く握りしめている聖に、蘭は気合を入れた様子で指示を出した。


「いい、そのまま真っ直ぐに歩くのよ!」


「真っ直ぐですか? なんか、足がふらついて、上手く歩けないわ」


蘭の指示を聞いてその指示通りに動こうとしても、聖は先程身体を回されたのと両目を隠されているせいで、バランス感覚がなくなり、身体が言う事を聞かなかった。


「あぁ!! 聖ちゃん、そっちじゃない!!」


「さっき来たとこまで戻って!!」


「そんな、色々と言われても……」


フラフラとした足で砂浜を歩く聖に、麻奈と菜月が色々と言うと、聖は頭を混乱させるように戸惑った。


その後、聖の足のふらつきが治まると、今度は棒を両手に構え、凛々しい姿勢で立ち始めた。


「足のふらつきがなくなったようね。いい、聖ちゃん。そのまま真っ直ぐ歩くのよ!」


「分かったわよ。歩けばいいのね」


再び、蘭の指示を聞いた聖は、今度は先程とは異なり、凛々しい姿勢で歩いていた。


「そこでストップ、スイカは目の前よ! 思い切って叩きなさい!!」


そして、蘭の指示の元、聖は立ち止まり、麻奈と菜月が見守る中、聖は強く握りしめている棒を大きく振りかざし、目の前にあるスイカを一刀両断で叩いた。


「やったぁー!!」


叩かれたスイカは、中身の赤い部分が砂浜の周りに弾け飛び、それを見た麻奈と菜月と蘭は、共に喜んだ。



 その後、割れたスイカを人数分に分け与えた後、麻奈と菜月と聖と蘭の4人は砂浜に座り、海を眺めながらスイカを食べ始めた。


「いやぁ~ やっぱり、スイカは美味しいね」


「でしょ。やっぱり夏はスイカよ」


菜月と蘭は、共に美味しそうにスイカを食べていた。


「でも、シートを敷かなかったせいで、砂が付いてますよ」


「あっ……」


そして、菜月がスイカに砂が付いている事を言うと、それを聞いた蘭は、肝心な事を忘れていた事に気が付いた。

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