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競泳水着で海水浴

 夏休みも始まり、麻奈達の水泳部は次の大会に向けて、海での夏合宿に来ていた。


「青い海、広い砂浜。そして、この私を照らす灼熱の太陽とどこまでも青く広がる大空……」


海の砂浜の上に立つ蘭は、海から吹いてくる潮の匂いがする風に当たりながら、この周辺を照らす灼熱の太陽の光を同時に浴びていた。


「そんな事よりも、蘭さん。どうして海水浴場に来てまでも競泳水着なんですか?」


そんな蘭の後ろから、更衣室から出てきたばかりの菜月が、パラソルと荷物が入ったカバンを持ちながら、蘭に競泳水着で海水浴場に来た理由を聞いた。


「そうですよ。水泳をやる時のプールならともかく、一般の人が見ている中だと、このハイレグは恥ずかしいですよ」


「あと、それから競泳水着ってのは、塩水に付けるのはあまり良くない事よ」


同時に、菜月と一緒に出てきた麻奈と聖も、競泳水着での海水浴をあまり良く思っていなかった。


「いいじゃないの! 細かい事は気にしないの!!」


「さすがに、気になりますよ」


蘭は、後ろを振り向き、菜月の方を見ながら言った。


「確かに気になるよね…… そう、こうして、競泳水着で海水浴場に来たのも、先輩達の代からの伝統なのよ」


競泳水着で海水浴場に来た事に対し疑問に思っている菜月に対し、蘭は競泳水着で海水浴に来た理由を語った。


「そんな伝統もあったんですか? なんか後から聞かされたせいで、後付けに感じますよ」


「伝統なんて、色々とあるのよ。それに、水泳部なんだから、水に入ると言ったら競泳水着でいるのが当たり前でしょ!!」


まるで、伝統を信じようとしない菜月に対し、蘭は自分の着ている競泳水着に誇りを持つ様に言った。


「なるほど…… 学生が制服でいる様に、水泳部は水泳部員の誇りを持つ証として、常に競泳水着を着ておくんですね」


「そう! 麻奈ちゃんは偉いわ」


すると、その話を聞いた麻奈が、蘭の言った事を解釈するように言い直すと、それを聞いた蘭は、まさに自分の言いたかった事を言ってくれた麻奈を褒め称えた。


「えへっ そうかな?」


蘭い褒め称えられた麻奈は、ほんの少し照れた。


「さぁ、あなた達も競泳水着でいる事を恥かしがらず、競泳水着でいる事を水泳部員の証だと思って、堂々と行くわよ!!」


「そうですね。今年の流行りのオシャレで可愛い水着を着ているよりも、水泳部は水泳部らしく、どんな時も競泳水着でいるのが1番ですよ!!」


そして、蘭が海辺の方へと向かって走って行くと、その後を着いていく様に麻奈も走り出した。


「なんという事か…… 麻奈ったら、すぐに影響をされるのだから……」


その様子を、菜月は少し苦笑いをやりながら見ていた。



 そして、海辺へと着いたあと、水泳部メンバー全員は海の中へと入り、泳ぎ始めた。


「じゃあ、みんな。とりあえず、あの向こう側にある旗が立っている場所まで泳いでみましょ!」


海の中に入り、足が付かなくなった辺りの場所で、蘭は泳ぎの練習を始める気でいた。


「えぇ、あそこまでですか!?」


「そうよ」


「私、泳ぎ切れるかな?」


「大丈夫よ。今までやって来た基礎をしっかりマスター出来ていれば、泳ぎ切れるわ」


「そんなものかな?」


「そんなものよ。とりあえず、心配するよりも泳いでみましょ!」


蘭が指定した場所を見た麻奈は、泳ぎ切れるか心配をした様子でいたが、蘭は自信を持って泳ぎ切れると言って、自分で指定をした場所まで泳ぎ始めた。


「うん、なんとか泳ぎ切ってみせるよ!」


そして、麻奈は頑張って泳ぎ切る決意を見せ、蘭の後ろを付いていく様に泳ぎ始めた。


「麻奈、その調子よ」


「もし麻奈が溺れそうになったら、私と大神さんが後ろに付いているから、助け出すことぐらいは出来るわ」


そんな様子の麻奈を見た菜月と聖は、麻奈の頑張ろうとする姿に心を打たれ、麻奈の様子を見守りながら、その後を泳ぎだした。


 そして、人工物のプールとは異なる、少し揺れる波が常に来る自然の海にもかかわらず、蘭はスイスイと平泳ぎで泳いで行き、あっという間に初めに指定をした旗のある場所まで泳いだ。


「ふぅ、みんなはまだ来ないのかしら?」


旗を刺しているボールを掴んだ蘭は、装着していたゴーグルを外し、まだ来ない麻奈と菜月と聖の様子を伺った。


しかし、どこを見渡しても、麻奈と菜月と聖の姿は見えなかった。


「もしかして、麻奈ちゃんったら!?」


その時、蘭は最悪の事態を考え、咄嗟にゴーグルを装着し、海中へと潜り出した。


海中に潜り出した蘭は、海水の底の砂で濁り、視界が悪い中の海中を、必死に泳いで麻奈の姿を探した。


(全く、麻奈ちゃんたら、どこにいるのよ。本当に溺れの?)


しかし、視界が悪いせいか、どこを見渡しても麻奈の姿は見えず、蘭は不安になりながらも、呼吸を行う為、一旦、海面へ顔を出した。


ちょうど、その時、ゴーグルをしている為に少し薄暗くではあったが、指定をした場所であった旗の近くに、麻奈と菜月と聖の姿が見えた。


その姿を確認した蘭は、ホッと一安心する間もなく、喜んだ様子で、旗のある場所まで泳いで行った。


「麻奈ちゃ~ん!! 無事だったんだ!!」


麻奈がいる元まで泳いだ蘭は、麻奈の姿を見るなり、無事だったという嬉しさのあまり、抱きつきに行った。


「えぇ!? 蘭さん、どうしたのですか?」


「てっきり、麻奈ちゃんが溺れたと思って、心配をしたのよ」


突然、抱き疲れた麻奈は、どうして抱きつかれたのか、疑問に思った様子でいた。


「なるほど、それで私の事を心配して抱きつきに来たわけですね」


「そうよ」


「でも、ご覧の通り、私は溺れたりはしていないわよ」


そして、蘭が突然抱きつきに来た理由を知った麻奈は、溺れていないという事をアピールした。


「あれっ? でもさ、どうして海面からは姿が見えなかったの?」


その後、蘭は麻奈が海面から見た時に姿が確認出来なかった事の疑問を言った。


「あぁ、その事ですね。実は…… 私、ほとんど潜って泳いでいたの」


「えぇ!? あの距離を潜水で行ったの!?」


「はいっ……」


すると、麻奈は海中を潜って泳いでいた事を明かすと、それを聞いた蘭は驚きを隠せなかった。


「凄いんですよ、麻奈ったら。私と聖ですら持たなかった距離を潜ったまま泳ぎ切ったのですから」


「確かに凄いわ。つい数か月前は泳げなかった阪野さんが、今では私達以上の潜水をこなせるのだから」


麻奈が潜水で海中を泳いでいた事は、後ろを泳いでいた菜月と聖も驚いた様子でいた。


「とりあえず、今回の様な時は、きっちりと海面に顔が出る様に泳ぎなさい! 見えなかったら心配するでしょ!!」


「ごめんなさい…… つい、海中の景色が見たくて潜っていたの。でも、砂が舞うせいで、海中の景色は見えなかったけど」


その後、とりあえず蘭は心配をかけた事を麻奈に注意をすると、麻奈は反省をやる様に謝った。


「でも…… 凄いじゃない!! 上達したわね、麻奈ちゃん!!」


「えぇ、蘭さん? また抱きつきに来た!!」


そして、蘭は麻奈の泳ぎの上達を実感しながら、嬉しそうな様子で、再び麻奈に抱きつきに行った。


そんな感じで、海水浴場での午前の練習という名の遊びは、終わりを迎えた。

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