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メドレーで何を泳ぐか決めよう①

 世の中は間もなく夏休みに突入しようかというある日の事……


この日の水泳部の更衣室という名の部室の中では、水泳部の部長である蘭を中心に3人しかいない部員達との大事なミーティングを行っていた。


麻奈と菜月と聖が更衣室に置かれているプールに沈めるのに使う赤い台の上に座りながら、目の前に立つ蘭の話を聞いていた。


「今日は、大事な事を話しておこうと思うの」


蘭が両腕を組んだ状態で威張る様に立ちながら、話を始めた。


「突然ですが、大事な事ってなんですか?」


「よくぞ聞いてくれたわ! 大事な事って言うのは、今度の大会に関する事よ」


蘭の突然の話に対し、疑問を持った菜月が何の話なのか聞いてみると、蘭がまるでその事を言って欲しかったみたいに嬉しそうな反応を見せた。


「あぁ、夏休みにも大会はありますもんね」


「そうよ、その大会の事ね」


すると、菜月は夏休み中に水泳の大会がある事を思い出す様に言った。


「それで、その大会に関する事で大事な話があるとか言っていましたけれども、今度の大会と何か関係あるんですか?」


「もちろん、関係あるわよ。今度の大会では私達もメドレーに参加しようと思って」


その後、今度は麻奈が大会と大事な話の関連性を聞いてみると、蘭は大事な話の本題を言った。


「メドレーにですか!? どうしてまた?」


前回の大会では、メドレーには出ず、個人種目だけだった為、突然のメドレー参加の呼び掛けを聞いた麻奈は驚きと疑問の両方で一杯になった。


「まぁ、なんというか、先日安奈ちゃんがここに来たでしょ?」


「あぁ、知っています。あの全裸の人ですね」


「そう、その子よ。泳いだ後安奈ちゃんと色々と話していたら、安奈ちゃんの所はメドレーにも出場するそうなのよね。それでいっその事、私達もメドレーに出場して、安奈ちゃんと勝負してみようかなと思って」


蘭はなぜ突然メドレーリレーに出場をしようかと思った理由として、先日、この学校のプールに現れた金井安奈という蘭の幼馴染の子が、今度の大会でメドレーリレーに出場する事を聞いたから、蘭は自分のとこのチームも同じ様にメドレーリレーに出場しようと思ったようである。


「なるほど~ それで対抗しようと思って、出場するわけですね」


「そうよ。私達のチームで、今度こそ本当に安奈ちゃんを倒しましょ!」


蘭から、メドレーに出ようとした理由を聞いた麻奈は、納得をした様子でいると、蘭は気合を入れた様子で、安奈のチームに勝つつもりでいた。


「でも、私なんかメドレーに出ても、活躍できるかしら?」


そんな中、泳ぎの実力が他の部員よりも劣る麻奈は、メドレーに出ても活躍できるかどうか心配をした。


「大丈夫よ。メドレーはチームが一丸となって戦うものだから、例え1人がダメであっても、他が何とか補えばいいのよ」


「そんなものかな?」


心配をする様子の麻奈を見た蘭は、なんとかして麻奈を励まそうとしたが、肝心の麻奈は、特に励まされた様子はなかった。


「まぁ、そんないつまでも落ち込まずに。早速だけど、今度の大会に出るメドレーで何を泳ぐか決めましょ!」


その後、蘭は麻奈の背中をポンとひと叩きした後、メドレーの泳ぐ種目を決める様声をかけた。


「私はもちろん、平ね。なんたってこの種目は昔からメインとしてやっているから、どうしても他人には譲れないのよ」


早速、蘭は自分で平泳ぎをやると、高々に宣言をした。


「私は…… つい数か月前に水泳を始めたばかりだから、特にこれといった得意種目がないよ……」


「じゃあ、麻奈ちゃんは、後で決めたらいいわよ。先に聖ちゃんと菜月ちゃんが決めて、最後に残ったヤツを今後の専門種目にすると良いわよ」


「なるほど…… 分かったわ」


そんな中、麻奈は水泳を始めてまたそんなに時間が経過していなかった為に、自分の得意種目がなくどれを泳げば良いのか決めれずにいると、蘭は最後に残った種目を泳げば良いと再び麻奈を励ます様に言うと、麻奈は納得をした様子で答えた。


(本当に、そんなやり方でいいのかしら……)


そんな様子を見ていた菜月は、それが本当に正しいのか、心の中でツッコんでしまった。


その時、菜月は蘭と麻奈の方を見ていた為、菜月に見られている事に気づいた蘭は、人差し指を菜月の方に向けて喋り始めた。


「せっかくだし、菜月ちゃんから泳ぐ種目を決めてもらおうかしら?」


「えぇ!? わっ、私?」


「そうよ。他に誰がいるの?」


突然、蘭から種目を決める様指名された菜月は、少し考え事をしていたというのもあり、突然の出来事に驚いた。


「じゃあ…… 私はクロールをやろうかしら?」


自由形フリーを泳ぐのは私よ!」


その為、菜月は適当に有名な泳ぎであるクロールをメドレーで泳ぐ種目として選ぼうとすると、それを聞いた聖が話に割り込む形で入って来た。


「えぇ!? 聖がクロールに行っちゃうの?」


「当たり前でしょ。フリーは私の専門種目であって、私はフリー以外泳ぐ気はないわ」


そんな聖に菜月が驚いていると、聖はクロールを自分の専門種目であると言い、譲ろうとはしなかった。


「たまには、クロール以外も泳いでみたらどうかな?」


「嫌よ。私はフリー以外はあまり好まないの」


聖のわがままを聞いた菜月は、他の種目をやる事を進めてみたが、聖はまたしてもわがままを言って、譲ろうとはしなかった。


「せっかくだしさ、この際フリーは聖ちゃんに行ってもらってはどうかな?」


そんな様子を見ていた蘭は、聖にクロールを譲る様、菜月に声をかけてみた。


「どうして、蘭さんまでそう言うの?」


「そりゃあ、聖ちゃんの方が水泳経験は長いし、何よりもフリーはメドレーのアンカーよ。負けていたらそれでおしまいなのよ」


菜月が理由を聞いてみると、蘭は聖をクロールに行かそうとした理由を語った。


「確かに、アンカーだと、負けていたら挽回するのも大変そうですね」


「そうよ。アンカーで負けていたら、距離差が開いている場合でも、抜かさなければ勝てないのよ」


「確かにそうね。クロールは聖に譲った方が良いかもね……」


その後、アンカーのプレッシャーの重みを感じや菜月は、聖にクロールを譲る事にした。


「というワケだから、聖ちゃん、アンカーのフリーは任せたわよ!」


「分かってるわよ」


そして、蘭はニコッとした表情で、聖の方を見た。


「とりあえず、平とフリーは決まったし、あとは背泳ぎとバッタだけね」


その後、蘭は両手を腰に当て、背中を伸ばしながら、残っているメドレーのポディションの2つを言った。

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