ライバル登場!!
この日も、室内型のプールの中では練習が行われていた。
「じゃあ、もう10本行くわよ!!」
練習を指導していた蘭が、プールサイドから大きな声で支持を出していた。
「えぇ!! まだ泳ぐの。少しは休憩しようよ~」
「ほらっ、そう弱音を吐かずに、さっさと泳ぐの!」
「は~い」
練習に疲れた麻奈が、休憩をしようとプールの中に浸かりながら疲れた様子で言ったが、蘭はそんな甘えも聞く事はなく、麻奈に再び泳ぐように指示を出すと、麻奈はダルそうに返事をして、再び泳ぎの練習に入って行った。
こんな感じで、いつも通りの練習は続いていた。
しかし、この日はいつもとは少し違った。
「よぉ、久しぶりだな!!」
室内型のプールの窓から、プール内を覗き込んでいる1人の少女が、なんの前触れもなく突然やって来た。
「あらっ、久しぶりね」
窓からプール内の様子を見ていた少女の返事に、蘭も返事を返した。
「相変わらずのハイレグだな」
「ハイレグの方が足が長く見えてカッコいいじゃないの」
その少女は、蘭の着ていたハイレグタイプの競泳水着をジロジロと見ては、少しニヤリと笑ったりもした。
「そんな所で見てないで、こっちに来たらどう?」
「それもそうだな。じゃあ、入らせてもらうぞ!!」
そして、その少女は、窓の下を両手で掴み、少しカッコよく決める様にしながらジャンプし、室内のプールサイドに入り込んだ。
「よっ、やって来たぞ!!」
「ちょっと! ここは土足禁止よ。早く靴を脱ぎなさい!!」
プールサイドに入って来たその少女をみた蘭は、土足のままでプールサイドに入って来た事を、きつく注意をした。
「分かったよ。すぐに脱ぐよ」
そう言って、その少女は、その場で履いていた靴と靴下を脱ぎ始めた。
その後は、その少女は、練習を指導している蘭の隣に立って、麻奈達の練習の様子を見学していた。
「しっかし、お前のとこの水泳部って、部員が少ないな。プールは室内型で綺麗なのに、もったいないというか宝の持ち腐れというか」
練習を見学していたその少女は、プールの中で練習をしている部員が3人しかいない事に気づき、思っていた事をそのまま蘭に言った。
「確かに、ウチの学校の水泳部の部員は少ないわね。みんな、ハイレグタイプの競泳水着を着るのが嫌で、水泳部に入ろうとする子達があまりいないのよね」
部員の少ないところを言われた蘭は、溜息をつきながら、水泳部の部員が少ない理由を言った。
「それが原因かよ! だったら、着てもいい競泳水着を自由にすれば、部員ももっと増えるのに、どうしてそうしないんだよ!?」
「それには理由があってね、ハイレグタイプの競泳水着は、この学校の水泳部のユニフォームみたいなものなのよ。それで、この学校の水泳部員のハイレグ競泳水着着用は強制なのよ」
水泳部の部員が増えない原因を知ったその少女は、なぜ着ても良い競泳水着を自由にしないのか蘭に聞いてみると、蘭はハイレグタイプの競泳水着着用が強制である理由を言った。
「そうなのか、それで蘭もハイレグタイプに変えだしたのか」
「まぁ、理由を聞かれるとそうかもね。でも、ハイレグタイプって、最初の恥かしいというのに慣れると、意外と履き心地も良くて、スパッツタイプと違って太股が締め付けられていないから、足も動かしやすくていいわよ」
その後、その少女は蘭が着ていた黄色いハイレグタイプの競泳水着をジロジロと見ていると、蘭がハイレグタイプの競泳水着を着ている理由を言った。
そんな感じで、蘭とその少女が話をやっている間に、麻奈達の予定の練習が終わり、泳ぎ終えた麻奈と菜月と聖がプールサイドから上がって来た。
「蘭さ~ん、泳ぎきったよ~」
「お疲れ~ よく頑張ったわね。せっかくだし、少し休憩をしましょうか」
蘭がいる方へと向かって歩いてくる麻奈を見た蘭は、練習を頑張った証に、休憩をとるよう声をかけた。
そして、麻奈と菜月と聖は、プールサイドの端に置かれている、赤い台の上に座り出した。
「今日の練習も疲れたね~」
「ホント、今日もたくさん泳いだからね~」
「全く、それくらいでキツイとか言っていたら、やって行けないわよ」
赤い台の上に座りながら、麻奈と菜月と聖は、話を始めた。
すると、先から蘭と話をやっていた少女が、赤い台に座りながら話をやっている聖の競泳水着をジロジロと見始めた。
「おいっ、蘭、1人だけハイレグじゃない奴がいるぞ」
その少女は、この水泳部で唯一ハイレグタイプではなく、スパッツタイプの競泳水着を着ている聖の競泳水着について、真相を蘭に聞こうとした。
「確かに聖ちゃんは、ハイレグではなくスパッツね」
「さっきは、ハイレグ水着はここの水泳部だと強制だとか言っていなかったか? だったら、コイツは掟破りだぜ?」
「そうかもね。でも、時には見て見ぬふりをしたくなる時だってあるのよ」
その少女に、聖がハイレグではなくスパッツタイプの競泳水着を着ている件について聞かれると、蘭は言い訳をやる様にこの話から逃れようとした。
「あの~ さっきから何なんですか?」
先程から、ジロジロと着ている競泳水着をジロジロと見られた上、見時知らずの人に着ている競泳水着の事を色々と言われた聖は、不満な気持ちでその少女の顔を見た。
「そう言えば、誰なんですかその人? さっきから蘭さんと話をやっていたけど、蘭さんの友達なんですか?」
更に、隣にいた麻奈も、その少女の事が気になり、蘭にその少女の事を聞いてみた。
「あぁ、この子はね、中学まで一緒だった私の友達の、金井安奈ちゃんよ」
麻奈が先程まで蘭と一緒に話していた人が誰なのか気になっていた為、蘭はその少女の事を軽く紹介した。
その少女は金井安奈と言い、髪型はサイドテールの明るめの茶髪で、ブレザータイプの夏服の制服を着ており、身長は麻奈よりも少し高く、聖とほぼ同じくらいである。
「中学が同じという事は、蘭さんと同級生ですよね?」
「そうよ。ちなみに安奈ちゃんも、水泳をやっていて、中学の頃は私と一緒にリレーのメンバーに入っていたのよ」
菜月が、蘭との同級生なのか聞いてみると、蘭は安奈とは同級生であった事を教えた後、かつての水泳仲間であった事を言った。
「以外にも、水泳をやっていたのね」
「そうさ、私も水泳をやっているのだよ!! 競泳水着はスパッツだけどな」
蘭と安奈がかつての水泳仲間であった事を知った聖は、以外だと思う様な目をやりながら言うと、安奈は自慢をやる様に答えた。
「安奈さんって、泳ぎは早いの?」
「そりゃあ、もちろん早いよ!!」
更に、麻奈の疑問にも安奈は、自信満々に答えた。
「そう…… せっかくだし、久々に安奈ちゃんの泳ぎを見てみたいわね」
「おいっ!! 今日は水着持って来てないぞ」
自信満々に答える安奈を見た蘭が、安奈の泳ぎが見たいとニコッとした表情で言ったが、安奈は水着を持って来ていないという事を、突っ込みを入れるかのように言った。
「水着がなければ、裸で泳げばいいだけよ!!」
「それ、正気で言ってるのか!?」
しかし、水着がなくて断ろうとした安奈に蘭は裸で泳ぐよう言うと、それを聞いた安奈は、少し顔を赤くしながら驚いた。