一緒に遊んでみた
部活が休みであったこの日、麻奈は菜月と聖と一緒に街にある繁華街へと遊びに来ていた。
そして、一通り繁華街にある店で買い物などをして楽しんだ後、3人は同じ繁華街にあるカフェで、一休みをとる事にした。
「そう言えばさ、この3人で一緒に遊ぶのって初めてだよね」
カフェにある席に座るなり、菜月は聖を含めての3人が一緒に遊ぶ事が初めてである事を口に漏らした。
「そう言えばそうだよね。部活が始まって2ヶ月近くになるけど、同じ学年である私達3人が一緒に揃って遊ぶ事なんて一度もなかったよね」
菜月の突然の発言に、麻奈も同じ事を思った。
「まぁ、今までは休日に特に会う理由もなかったからでしょ?」
菜月と麻奈の会話を、聖は席に大人しく座りながら聞いていた。
「でもさ、今日は誘ったら、来てくれたじゃない」
「それは、麻奈がしつこく誘ったからでしょ」
聖は、少し顔を赤く照らしながら答えた。
「そう言えば、今までは誘っても来なかったのに、なんで今日は来てくれたのだろ?」
「べっ、別に…… 今日はたまたま暇だったからよ…… そんな事よりも早いとこ注文をしましょ」
更に、菜月の疑問に対しても、聖は少し顔を赤く照らしながら、恥かしがる様子で話をそらし、席に置かれていたメニュー表手に取って見始めた。
そして、メニュー表を眺める事、数分が経過した――
「にしても、カフェの食べ物って、ファミレスに比べると高いんだよね」
「え!? そうなの?」
メニュー表に載っている食べ物の値段を見た菜月が、食べ物の値段が高い事を口に出して言うと、それを聞いた麻奈は驚いた様子で答えた。
「これは私の推測なんだけど、カフェの食べ物って、ファミレスの食べ物に比べると少し量が少なく感じるのよ。その癖に値段はあまり変わらないという」
「そうなの? 私はそんなの意識した事がなかったよ」
菜月は、カフェとファミレスとで量と値段を比較し、自分の思っていた事を言った。
「それは、大神さんがよく食べるからそう思うだけじゃないの?」
「ちょっと、まるで私が大食いみたいじゃないの!?」
「でもさ、そんなのって大食いでもなければ、気にしないものよ」
その話を聞いていた聖が、菜月が大食いだからカフェとファミレスとで量と値段を気にしてしまうと言うと、それを聞いた菜月が大食いの部分を否定しようとした。
「いや、大食いでなくても、値段と量が違えば気にするわよ」
「そうムキにならず、早いとこメニューを決めてしまいましょ。やっぱり大神さんは、この特盛のマウンテンパフェを頼むでしょ?」
「だから、そんなの頼まないわよ!!」
菜月が大食いでないと否定しているのを見ながら、聖はメニュー表を持ちながら『特盛マウンテンパフェ』を菜月にオススメをする様に指で指した。
そんな聖のボケを見た菜月は、少し顔を赤くしながらツッコんだ。
そして、メニューを注文してから数分後――
「やっと来たね!! じゃあ、早速飲むとしようか」
注文をしていたミックスジュースが目の前に置かれた麻奈は、待ちに待ったと言わんばかりの気持ちで、目をキラキラと輝かせながら、ミックスジュースが入ったグラスを持ち出した。
「にしても、なんか結構時間がかかった気がする」
「まぁ、カフェの場合だと、手作りになるから、その分、時間もかかるのよ」
ミックスジュースを飲みながら、麻奈はカフェで注文をした商品が来るのが遅いと思っていると、聖が隣でコーヒーを飲みながら、カフェでの注文品が遅い理由を言った。
「あっ、だからか…… だから、ファミレスとカフェの量も違って、値段も違うのね」
すると、山盛りではないパフェを食べていた菜月が、先程から疑問に思っていた事である、カフェとファミレスとの量と値段との違いが分かり、モヤモヤが晴れ、スッキリとした気分となった。
「まさか大神さん…… それを知らなかったの?」
「知らなかったと言うよりも、カフェもファミレスの様に、手作りではなく工場で作った冷凍を出しているのかと思って」
「食べ物に関しては、どっちも工場で作られた冷凍よ。違うのは飲み物よ。カフェでの飲み物には手作りのもあるのよ。例えば、阪野さんが飲んでいるミックスジュースとかね」
菜月が、カフェの飲み物を手作りだというのを知らなかったみたいだったので、聖は麻奈が飲んでいるミックスジュースを指さして、手作りの飲み物である事を教えた。
「へ~ このミックスジュースって、この店の手作りだったのね。だから、ペットボトルのヤツよりも美味しいのか」
「って!! 麻奈も知らなかったの!?」
ミックスジュースを飲んでいた麻奈が、手作りだと知って美味しい事に納得をしていたのを見た菜月が、麻奈もカフェの飲み物を手作りである事を知らなかったと思い、ツッコミを入れた。
それからしばらくして、飲み物も飲み終えた後は、席に座ったまま話を始めた。
「そう言えばさ、今日が聖ちゃんと一緒に遊んだ最初の日だから、私、聖ちゃんにプレゼントを買ったんだ」
皆で話をしていた時、突然、麻奈が聖にプレゼントがあると言って、自分のカバンを開けて、中に入っているプレゼントを取り出そうとした。
「へ~ 何を買ったの?」
「もういいと言うまで、ちょっと目を瞑ってくれないかな?」
「まぁ、良いけど…… プレゼントって何かしら? 気になるわね」
更に、麻奈から目を瞑るように指示をされた聖は、その指示に従うように、プレゼントの中身を気にしながら、両目を瞑った。
「ちょっと髪を触るけど、良いかな?」
「髪を触るって、プレゼントは何?」
「まぁ、そんな心配しなくても、すぐに分かるよ」
そう言って麻奈は、目を瞑っている聖の髪を触る為、聖の座っている席の後ろへと回った。
麻奈が髪を触っている間も、聖は目を瞑っている為か、麻奈に髪を触られている最中、少し不安な様子でいた。
「はいっ、もう目を開けても良いよ」
そして、不安に思っている間にも、麻奈の髪触りは終わり、プレゼントを見せる準備が終わった。
「なんか、両サイドの頭部が引っ張られた様な気がしたけど、プレゼントってまさか、髪飾り?」
「そうだよ。聖ちゃんって、髪が凄く長いから、ツインテールにしても似合うかなと思って」
「ほらっ、鏡を貸すから見てみると良いわ。凄く似合っているわよ」
菜月はそう言って、聖に小型の鏡を渡した。
「こっ、これが私……」
その鏡に映る姿を見た聖は、まさに黒髪ツインテールの美少女であり、自分でも見とれてしまう程可愛いと思ってしまった。
「なんと言うか、初めて一緒に遊んだ記念日だから、やっぱり思い出に残る事をしないとね!」
鏡越しに映るツインテール姿を、少し照れ臭そうに見つめる聖の隣で、麻奈は聖と始めて一緒に遊んだ記念に、思い出に残る事をしたかったと高飛車な気分になりながら言った。




