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競泳水着無しで水泳

 プール掃除から数時間後――


「ふぅ、掃除も終わりやっと水もまんぱんになりましたね~」


掃除を終え、綺麗になったばかりのプールに、真新しい水が入ったプールを眺めながら、麻奈はうっとりとしていた。


「やっぱ、こんなプールを見ていると、真っ先に入りたくなるわよね?」


「じゃあ、入いっちぁえば?」


菜月も、綺麗になったばかりのプールに見とれていると、蘭に突然後ろから押され、プールの中へと入ってしまった。


「ちょっと何するんですか!! あ~あ、制服がびしょ濡れになったじゃないですか……」


プールに落とされた菜月の制服は、びしょ濡れとなってしまった。


「でも良いじゃないの? 一番乗りが出来て」


「こんな形で一番乗りなんてしたくありません!!」


プールの中に立ちながら、菜月は押した張本人である蘭をジッと見ていた。


「そう? じゃあ、私が二番目を取るわね!!」


「ちょっ…… 蘭さんまで」


すると突然、蘭は二番目を取ると言いながら、既に菜月が入っているプールの中へとダイブをした。


その様子をみた菜月は、プールの中で立ったまま驚いていた。


「やっぱり、新鮮な水は気持ちいわね~」


プールの中に入った蘭は、水面に身体を寝かせ、浮いた状態で新しくプールに入った水の気持ち良さを身体で感じていた。


「新しい水は冷たくて気持ちいわよ。麻奈ちゃんも聖ちゃんもおいで」


「そんな事言われましても…… 私、今日水着持って来てないし」


「私も今日は水着を持って来ていないですわ。プール掃除だけだと思っていたので」


蘭に真新しいプールに入らないか誘われたが、麻奈も聖もこの日はプール掃除だけしか行わないと思っていた為、2人とも競泳水着は持って来ていなかった。


「水泳部なんだから、競泳水着ぐらいは持ってきなさいよね。私なんか、この制服の下に着てるわ」


競泳水着を持って来ていない麻奈と聖に、蘭は半場呆れた様子になり、プールの中で立ちながら、制服の下に競泳水着を着ている事をアピールした。


「競泳水着を着ているんだったら、どうして制服を着たまま飛び込んだの?」


「それはね、勢いだけで菜月ちゃんをプールに押しちゃって、制服を濡らしてしまったじゃないの。その代償みたいなものよ」


蘭が制服の下に競泳水着を着ているというのを知った菜月は、なぜ蘭が制服を着たままプールに飛び込んだのか理由を聞いてみた。


すると蘭は、菜月をプールに押した代償であると、多少は反省をした様子で言った。


「だから、麻奈ちゃんも聖ちゃんも制服を濡らそうよ~ 気持ちいわよ」


「結構です!! 遠慮します」


その後、蘭は自分の制服が濡れた為、麻奈と聖も制服を着たままプールに入るよう誘ったが、聖はあっさりと断った。


「う~ん…… 確かに蘭さんの言う通り、気持ちいいですね」


「あらっ、麻奈ちゃんは来てくれたの!?」


「はいっ、来てみました。制服姿でプールに浸かるのって、体験をする事が無いので、つい興味本位で」


すると突然、プールの方から麻奈の声がしたので、蘭が振り向いてみると、そこには制服姿でプールの中に浸かった麻奈の姿があった。


麻奈にプールに浸かった理由を聞いてみると、単に興味本位でやって来たようである。


「ほらっ、麻奈ちゃんも制服のままプールに入って来たわよ。あとは聖ちゃんだけね」


「普段は入る事の出来ない制服姿でのプールも、気持ちいいよ~」


そして、制服姿でプールにまだ入っていない聖を、蘭と麻奈はプールの中から誘い始めた。


「全く…… そんな事して何になるの? 制服が濡れたら裸で帰れとでも言うの?」


しかし、そんな麻奈と蘭の様子を、聖は少し顔を赤くしながら、冷めた表情で見ていた。


「制服が濡れているなら、ジャージがあるじゃいの。それを着て帰れば解決だよ!」


「まぁ…… 確かにジャージを着て帰れば良いわよね……」


そんな聖も、麻奈の一言によって、制服を着たままプールには入らないという考えに、少し揺らめきが走った。


「そうだったわね。ジャージがあれば、制服を乾かす手間も省けて良いわね」


麻奈の発言に、蘭は何かを閃いたかのような表情を見せた。


「そうだっ。せっかくだし今日は制服を着たまま水泳の練習をやりましょ!!」


「おっ、それいいね」


「まぁ、制服も濡れちゃたし、着衣水泳も悪くないか……」


蘭が突然思いついた制服を着たままでの練習の案に、麻奈と菜月は賛成をした。


「ほら、聖ちゃんも着衣水泳の練習をするのだからおいで」


そして蘭は、着衣水泳の練習を始めると言って、プールサイドに立ったままプールを見ている聖に声をかけた。


「着衣水泳だなんて、なんの意味があるのよ?」


「競泳水着とは違う、制服を着たままでの練習なんて、滅多に体験できるものじゃないから、やってみると良いわよ」


「まぁ、どうせジャージがあるわけだし、一度は服を着たまま泳いでみるのも悪くはないわね……」


始めは着衣水泳の練習に賛成ではなかった聖であったが、蘭の話を聞き、聖も着衣水泳に興味を少し持ち、そのままプールの中へと入った。


「制服のままプールに入るのも、思っていたよりも気持ちいわね」


「でしょ。私の言う通りだったでしょ」


制服のままプールの中へと入って来た聖に、蘭はドヤ顔を見せた。


「これで全員が揃ったわね。じゃあ早速向こうまで泳ぐわよ!!」


その後、蘭はプールの反対側のスタート台を指で指した。


「聖ちゃん、一緒に泳ごうよ!」


「麻奈ったら、私に付いて来れるかしら?」


「制服のままでも、付いて行けるよう、頑張って泳ぐよ!!」


そして、蘭と菜月が制服を着たまま先に泳ぐ中、麻奈は聖と一緒に泳ごうと声をかけると、聖は麻奈の泳ぎを気にする様に後ろを振り向きながら泳ぎ始めた。


その後ろを、麻奈は制服姿で平泳ぎをやりながら、聖のすぐ後ろを泳いでいた。



 その後、帰宅時――


「にしても、制服を着たままだと、競泳水着の時よりも動きづらかったね」


「確かに、いつもとは感覚の違う泳ぎでしたわ」


帰宅中、ジャージ姿で道を歩く菜月と聖は、この日の着衣水泳の事を振り返りながら話をしていた。


「私は、みんなに付いていくので必死だったよ」


「でも、頑張ったじゃない。制服のままでは私達でもキツイ泳ぎに付いて来れただけでも」


「そうかな? なんか褒められたみたいで、嬉しいよ」


麻奈もこの日の着衣水泳の事を振り返った。


制服を着たままでのキツイ練習に、泳ぎだけでも付いて来れた事を聖に褒められると、麻奈は照れるように嬉しく思った。


「にしても、ジャージの下が裸のせいで、無性にスース―するわね」


「確かに、私達今、ジャージの下は裸だったんだよね……」


「それを意識してしまうと、無性に恥かしくなるわね」


その後、着衣水泳のせいで制服と下着が濡れたままであり、現在は下着すら身に付けていない事を意識し始めた菜月と聖と麻奈は、顔を赤面になりながらモジモジと恥ずかしがりながら歩き始めた。

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