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プール掃除中!!

 今日は水泳の練習はなく、水泳部員4人は競泳水着ではなくジャージを着て、水が抜かれたプール水槽の中にいた。


「さあ、今日は水泳部のメンバーでこのプールを掃除するわよ!」


水が抜かれたプール水槽の中で、蘭がモップを片手に張り切った様子で言い始めた。


「日本の学校は、生徒にプール掃除をやらせるのね……」


「まぁまぁ、聖ちゃん、そう言わずに、みんなでやったらきっと楽しいよ!」


突然のプール掃除発表に、聖は不満そうにしていた。


「でもなんで、突然プール掃除をするの?」


「それはね、もうすぐこの学校でのプールシーズンが到来。となれば、全校生徒がプールを使いだすのよ。その前に、一度プールを掃除しとけって、顧問の先生から言われたのよ」


なぜ突然プールを掃除するようになったのかを菜月が聞いてみると、蘭は顧問の先生に頼まれたからだと言った。


「顧問って…… 水泳部の顧問ですか?」


「それ以外に何があるの?」


「えっ!! 顧問がいたんですか!?」


「いるわよ。じゃなければ、水泳部だって、部としての活動が出来ないでしょ!」


この水泳部にも顧問の先生がいた事を初めて知った麻奈と菜月と聖は、驚きを隠せなかった。


「でも、顧問がいるのに、なんで部活には顔を出さないのかしら?」


「顧問だからと言って、練習を指導してくれるとでも思ってるの? 部員達の練習に熱心に付き合う顧問のイメージが多いみたいだけど、あれは空想の話よ。実際の顧問なんて、ただいるだけの存在なのよ」


そんな中、菜月はなぜ顧問が部活に顔を出さないのか聞いてみると、蘭は少しウンザリしたような表情をしながら答えた。


「でも、顧問が来ない事で、私達は好きに出来て良いじゃない!」


「それは、そうですけれども……」


その後、蘭は顧問が部活に顔を出さない事を嬉しく思っているような事を言った。



 そして、蘭がプール水槽に専用の洗剤を散布し始めると、その後を、麻奈と菜月と聖がモップでゴシゴシとプール水槽の底を磨き始めた。


「このプールって、意外と広いから、なかなか終わりそうにないね~」


「だね~ それにしても、モップで底を力強く磨くから、腕に相当力が入るね」


「腕の力を使うという事は、二の腕が鍛えられるかも?」


「そうね。そしたら、泳ぎにも結果は出るし、このプール掃除も無駄ではないわね」


「なんか、そう思うと、キツいプール掃除も、泳ぎが速くなる練習の一環だと思えば、頑張れるね」


以外にも力を使うモップでのキツいプールの底磨き中、麻奈と菜月は話をやりながらプールの底磨きを楽しもうとしていた。


「阪野さんに大神さんは、よく話をやりながらこんな無駄な行為を頑張れるわね」


そんな中、聖だけはプールの底磨きを楽しもうとはしていなかった。


「そりゃあ頑張れるよ。だって、この掃除をやる事で二の腕が鍛えられると思えばね」


「全く、単純な考えね…… そんなので二の腕が鍛えられたら、誰だって苦労はしないわよ」


「そんな事ないよ。それはやってみないと分からないでしょ!」


プール掃除にヤル気が出ない聖に、麻奈は二の腕が鍛えられると思って床磨きをやれば、頑張る事が出来ると言った。


しかし、聖は麻奈の言った事を信じようとはしなかった。


「やらなくたって分かるわよ。だいたいなんで日本の学校は、生徒に掃除をさせるのかな? 以前から嫌気がさすほど疑問に思ったりしていたのよ」


「そりゃあ、学校だって、無駄にお金をかけない為に、生徒に掃除をさせるのだよ」


「そうなの…… 日本の学校も意外とドケチなのね」


そして、日本の学校では生徒に掃除をさせるシステムに嫌気がさすほど疑問に思っていた聖に、麻奈は生徒に掃除をさせる理由を自分の考えで言った。


「それに、生徒に掃除をさせる暇があったら、その時間を部活の練習に回してほしいわ。その方が余程為になると思うし……」


「まぁまぁ、聖ちゃん、そう言わずに。みんなで学校の施設を掃除するのも、日本の学園生活の1つだと思えば、少しは楽しくなるからさ」


生徒に掃除をやらせる事を不満に思っている聖に、麻奈は掃除をやる楽しさを伝えた。


「そんなものなのかね。日本の学校行事も、また変わっているわね……」


その後も、聖は不満を言いながらでも、プールの底をゴシゴシとモップで磨いていた。


 そんな様子がしばらく続いた頃、菜月はある事に気づいた。


「そう言えば、蘭さんはずっと洗剤を撒いているだけですね」


その一言を聞いた麻奈と聖も、その事に気づいた。


「そう言えばそうだね。なんか蘭さんだけ楽しているみたい」


「やっぱり、ダルい事はやりたくないから、他人に任せているのね……」


そして麻奈と聖は、モップで床を磨きながら、洗剤だけを撒いている蘭の事を色々と言い始めた。


後輩3人から、洗剤を撒いているだけでしかない事を色々と言われているのを、蘭は3人の目の前で洗剤を床に撒きながら聞いていた。


「でも、床を磨く事で、二の腕が鍛えられて良いじゃないの? 私にも変わって欲しいくらいだわ~」


蘭はまるで、床磨きの方がやりたいかの様な口調で、後ろにいる麻奈達に言った。


「そう? じゃあ変わってあげるわよ。はいっ」


「あらっ、どうも……」


すると、聖が蘭の目の前に突然現れ、持っていたモップを蘭に渡す為に、差し出した。


その様子を見た蘭は、少し冷や汗をかく状態になったが、素直に聖からモップを受け取った。


「じゃあ、床磨きでもやりましょっか!!」


そして蘭は、後ろを振り向き、張り切った様子でモップを片手で持ち、床磨きを始める宣言をした。


すると突然、蘭は床に落ちている泡を、目の前にいた麻奈と菜月に向け、モップで飛ばし始めた。


「えいっ、やっぱただ磨いているだけでは面白くないのよね~ こうやって泡を飛ばしながらやったら結構面白いわよ!!」


「ちょっと、何するんですか~」


「マジメに床磨きをしましょうよ~」


蘭に泡を飛ばされている菜月と麻奈は、飛んでくる泡をガードしながら、泡を飛ばすのを止めるよう言った。


「何を言うか!! 泡まみれになりたく無かったら、私から逃げろ~」


「言われなくても、逃げるよ~」


しかし、蘭はそんな言葉を聞く事もなく、逃げる麻奈と菜月に、モップを使って、泡を飛ばすだけであった。


「本当に、真面目にヤル気があるのか?」


その様子を、聖は蘭から渡された洗剤を持って、呆れた様子で見ていた。


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