新しい水着で練習
GWに部活で使用する競泳水着を買いに行ってから数日後、この日はGW後の最初の練習日である。
そして、麻奈と菜月は、以前に蘭のおススメで購入をしたハイレグタイプの競泳水着を着て、練習を行うプールにいた。
「しっかし、やっぱりハイレグタイプって、下半身が裸になったみたいに感じちゃうよ……」
「まあ、確かにね。こんなタイプの水着を常に来ていられる蘭さんは、もう変態ね……」
プールサイドで、蘭と聖を待っていた麻奈と菜月は、ハイレグタイプの競泳水着の恥ずかしさにモジモジとした様子でいた。
そんな中、ほんの少し遅れて、聖もプールサイドへとやって来た。
「ありゃ、阪野さんに大神さん…… そのタイプにしちゃったの……」
プールサイドへとやって来た聖は、そこにいた麻奈と菜月の着ていたハイレグタイプの競泳水着を見て、ほんの少し引くような眼つきで見た。
「うん。なんか蘭さんが、このタイプの方が良いって言っていたので」
麻奈と菜月のハイレグタイプの競泳水着姿を始めてみた聖に、麻奈はハイレグタイプの競泳水着を選んだ理由を言った。
「きっと蘭さんが、ハイレグ水着を着用した姿を見たかっただけに決まっているわ」
「でしょうね。私もなんかそんな気がしたの」
「そう言っておきながら、ハイレグタイプを着用している大神も、本当は蘭さんと同じようなハイレグタイプを着てみたかったのでしょ?」
「はあ? そ、そんなわけないでしょ!!」
菜月は赤面な顔になり、恥ずかしそうにしながら言った。
「でも、こうして現にハイレグタイプを着ているのだから、多分、心のどこかに着てみたいという気持ちはあったのでしょうね」
「だっ、だからこれは…… 麻奈だけをハイレグタイプで恥ずかしい思いをさせない為であって……」
菜月は恥ずかしがりながら、聖にハイレグタイプの競泳水着を選んだ理由を言った。
「あらっ、麻奈ちゃんと菜月ちゃん。プールに来て見れば、ハイレグタイプの競泳水着もより一層似合うわね」
そんなこんなしているうちに、蘭が遅れてプールサイドに入って来た。
「あっ、蘭さんこんにちは。見て、私の水着似合うでしょ。これで、より水泳部らしくなった?」
「うん、とても水泳部らしいわよ」
蘭にハイレグタイプの競泳水着を着た姿を見せる麻奈を見て、蘭はニコッとした表情を見せた。
「それよりも聖ちゃんは、私達と同じようにハイレグタイプの競泳水着に変えてみる気はないかしら? 良いのを教えるわよ」
「遠慮しておきます。別にハイレグタイプなんて着たいと思いませんから」
「そっ、でもいつでも言いに来ても良いのよ。ハイレグタイプを着たくなった時には……」
「だから、着ないって言ってるでしょ」
それから、蘭は聖の着用しているスパッツタイプの競泳水着を見ながらハイレグタイプの競泳水着に変えてみないかと問いかけたが、聖は着ないとキッパリと言った。
その後、蘭はスタスタと歩き、麻奈と菜月と聖の前へと出た。
「さあ、早速だけど、せっかく競泳水着を着たんだから、麻奈ちゃんと菜月ちゃん泳いでみてよ!」
プールの方を見て指を指しながら、蘭は麻奈と菜月に泳ぐ様に指示を出した。
「そう言えば、私はまだ泳いでいなかったですね。せっかく水泳部に入部したんだから、泳がな事には何も始まらないわね!」
菜月は、張り切りながら軽く腕のストレッチを始めた。
「そっ、そうね…… せっかく競泳水着を着たんだし、泳がないとね……」
麻奈は、自信がない様子で言った。
「大丈夫よ、麻奈ちゃん。今まで泳げるようになる為にいっぱい練習をしてきたんだから」
「そうよ、今までやって来た練習という努力を思い出しながらやれば、きっと出来るわよ」
自身がない様子の麻奈に、蘭と聖はそんな麻奈を励ますよう応援をした。
「うん…… 私、頑張って泳ぎぎってみるね」
そう言って、麻奈はプールのスタート台の上に行った。
「せっかくだし、菜月ちゃんも一緒に泳いだら?」
「麻奈と一緒に? 別に構わないですけれども……」
麻奈がスタート台の上に立ったのを見た蘭は、菜月に麻奈と一緒に泳ぐよう指示をした。
「一緒に泳がせても、大神さんが勝つだけだと思うけど」
「それでも良いじゃない! その方が闘争心も上がるだろうし」
「確かにそうだけど……」
麻奈と菜月を一緒に泳がせても、菜月が勝つと初めから分かっていた聖にとっては、一緒に泳がせてもあまり意味がないと思っていた。
そうしている間に、菜月が麻奈の隣のスタート台の上に立ちはじめた。
「それじゃあ、50メートル平泳ぎね!」
麻奈と菜月がスタート台の上に立ったのを確認した蘭は、2人に平泳ぎで50メートルプールを泳ぐよう指示をした。
「平泳ぎって、確か…… カエルが泳ぐときの足の動きをするヤツですね」
「それよ! それじゃあ準備して」
平泳ぎという言葉を聞いた後、麻奈は平泳ぎのイメージをカエルの泳ぎ方で例えた。
そして、蘭の合図と共に、麻奈と菜月はプールに飛び込む体制をとった。
「それじゃあ、よーい、スタート!!」
蘭のいうスタートという合図と共に、麻奈と菜月はプールの中へと飛び込んだ。
そして、プールの中に入った麻奈と菜月は、水中を泳ぐカエルの様な泳ぎ方の平泳ぎを行った。
「2人とも頑張ってね!!」
プールの中で泳いでいる麻奈と菜月に向かって、蘭は応援をしながら見ていた。
そして、1分ほど経過した頃、菜月がスタート台から50メートル先にある壁に両手をタッチした。
結果は、言うまでもなく菜月が先にゴールをした。
「はぁはぁ、意外と疲れるわね」
「なかなか早かったわね」
「どうも」
プールの中から、プールサイドへと上がった菜月は、少し疲れた様子でいた。
先程の泳ぎを見ていた聖は、初めて泳ぎを見せた菜月が初心者ながら早かった為、少しは評価した。
そして、菜月がプールサイドに立ち、プールの方を見て見ると、麻奈がちょうどプールの真ん中辺りの方でまだ泳いでいた。
「麻奈ー! もう少しよ。頑張ってー!!」
遅い泳ぎでも、頑張って泳いでいる麻奈を見た菜月は、すかさず麻奈を応援した。
「麻奈ちゃん、練習の成果が出ているわよ!」
「頑張れー」
菜月に釣られるように、蘭と聖も泳いでいる麻奈を応援し始めた。
そして、皆に応援をされている中、麻奈は50メートルプールを平泳ぎで泳ぎ切り、スタート台下の壁を両手でタッチした。
「私、泳ぎ切ったよ!!」
「おめでとう、麻奈」
泳ぎ終わった麻奈は、プールサイドへと上がり、菜月から祝福を受けた。
「阪野さん、1ヵ月の間に、上達したわね」
「えへへ、泳ぎを覚えようとして、頑張ったかいがあったよ」
聖からも褒められ、麻奈は鼻を伸ばしながら照れた様子でいた。
そして、この時のプール内は、勝負という言葉とは無縁な雰囲気を作り上げ、ただ、麻奈が泳ぎ切ったという達成感を皆で祝っていた。
「そう言えば、麻奈ちゃんも菜月ちゃんも、共に水着が前後ろ両方食い込んでいるね」
そんな中、蘭だけが泳いだ後の麻奈と菜月の競泳水着の食い込み具合をジロジロと見ていた。
「も~う、なんか台無し!!」
それを聞いた菜月は、せっかくのムードが台無しになったと思い、蘭にツッコミを入れた。