第九話
「これより、パトロールを行う…」
次の日、レフィーユは昼間のパトロールに赴くべく、校門前にて整列した初等部の生徒達に説明をいつもの調子で説明するが、そうもいかない。
「はい!!」
元気の良い返事で初等部の全員が返事をして、彼女の調子を遮るのだから少しばかり年上な自分達としては『止めておいたようがいい』とアドバイスをしていたが…。
彼等は理解は出来てないのだろう『演出』とはいえ、間違った事はしていないという意識が強いのだから。
おかげでこちらは呆れても、笑えなかった。
そんな中をレフィーユは、顔をしかめてはいたが進行を続けるのは素直に感心できた。
「…まあ、パトロールの意味は解るかな?」
するとロウファは元気良く『はい』と返事をして、一歩前に出て、パトロールの意味を答える。
しかし、それにはレフィーユだけではなく、自分達全員が顔をしかめる事になり、レフィーユの後ろにいる自分の隣にいたイワトが肘で小突いて言った。
「なあ、アラバ、やりすぎじゃろ?」
ロウファは、まだ淡々とパトロールの意味を言っていた。
「そうですね、まるで教本にある通り、昔、テレビの教育チャンネルでこんな道徳番組を見た事がありますよ」
「なんじゃそりゃ?」
するとイワトが聞いて来たのを、前にいるレフィーユが肩を竦めたのが見えたので、聞こえるように言う。
「演技もバレバレ、台詞も棒読み。
エキストラすら、まるで静止画像のように動かない」
「ふん、この場合、道徳番組じゃなくて、特撮番組に出る。少年防衛隊よ」
すると反対側にいる、セルフィは答えた。
その通りだと思う。
なおも説明が続く中、自分達が笑えない理由に目をやる。
初等部の服装である。
レフィーユ、セルフィはいつも通り制服を着ている。
だがロウファ、初等部のパトロールに出る服装と言えば制服ではなく…。
「オレンジ色の蛍光服、ヘルメットで…完全防備。
後は宇宙怪獣が出て来るだけですね」
「ふん、モンスターを知らぬ間に相手をしてるからでしょうよ。
そんな事より、どうして私がここにいるのか知りたいわよ」
「それは私も言えますね、私は治安部でないのですよ?」
二人して元凶であろう姉を見るが、ちょうどロウファの説明も終わったらしくレフィーユは無視するように聞いて来た。
「ご苦労、ではロウファ、お前は先ほど、スラスラとパトロールに関して、大事な項目を挙げたが、その中で。
犯罪の予防効果、犯罪者の排除、怪我人の対処、と三つを答えた。何が大切だと思う?」
するとロウファは、即答する。
「はいっ、犯罪者の排除です!!」
「ふっ、どうして、そう思う?」
「速やかな犯罪者の排除が、全ての予防効果になり、怪我人の増加の防ぐ大事な要因だからです」
さらにレフィーユは肩を竦めたので、自分も思わず呟いた。
「言わされてますね…」
「ふん、よくわかったわね。
多分だけど、入念に練習してたのでしょう。
あの母親が、パトロールの説明しながら、教育してるのが目に浮かんじゃうわ」
「ふっ、こういう相手は、こうすれば意外と脆いというのを見せてやろう」
不意に二人の耳に、彼女の声が聞こえた。
彼女にとって自分達がいる場所は後方だと言うのに、驚いて二人で顔を見合わせていると、構わずである。
「ロウファ、それで何点の答えだと思う?」
するとロウファは言うまでもなく。
「100点です!!」
自信たっぷりに言う、しかし、レフィーユは冷徹に答えた。
「それでは、ようやく50点の解答だ」
『えっ?』と驚くロウファは、視線が泳いだ。
親でも捜しているのだろうか、一瞬、そう思うくらい彼の動きが止まり静かになったが。
「どうしてですか、ボク達は、先の武道の時間でも立証しました。
ボク達は現場でも通用します。理由を教えてください!!」
これも減点の要因だとも知らずに、レフィーユに食い下がったが、彼女は冷静だった。
「ふっ、お前達はそれを勉強しにやって来たのだろう?」