第七十六話
接続『障害』だから、仕方ないんだろうけどさ
まるまる一話分、更新されないと凹むよねw
立ち尽くしていたロウファを見つけ、ペインとレフィーユはゆっくりと近づいていく。
両脇にはイワト、サイトが立っていたので、さすがに止めにも入ろうと言う雰囲気があったが…。
それは彼女が手を制して許さず、そのまま視線でペインを誘導させていた。
「ボロボロじゃないか、どうした?」
ペインはいつも通り調子で、ロウファを見つめて言う。
「ボクに何の用だ?」
「なあに、別に用なんてない。
ただ、最後にお前の顔くらいは拝んでやろうかと思っただけだ」
「だったら、どこかに行けよ…」
「そうか…『最後』なんだぞ?」
「どういう意味…?」
「見たらわかるだろう。
ファミリー達は逮捕され、俺もこの通り…だ。
もうお前でも、誰でも、わかるように『終わり』だ。
だが、お前は『終わって』なんかない」
そこには少しの間があった。
「お前には、この事件は終わっても…。
拭えない事がある。
それは…」
「ミクモ…」
「そうだ、オレはお前の友達を殺した」
初等部が近づいたおかげで、会話の後半部分がようやく聞き取れた。
それだけで自分は言葉を失ってしまう。
「お前のミスが生んだのかも知れない。
だが、ここに仇がいる事は代わりは無い」
「ボクにどうしろって?」
実を言うとペインはこの間、ずっと後ろの方に手を伸ばしたままだった。
しかし、その手は伸ばしたままのそんな姿勢だったので周囲にはとても奇行に見えた。
ただ、その伸びた手が意味を成した時、辺りは騒然とした。
レフィーユがサーベルをペインに差し出したのだ。
さらにペインがレフィーユからサーベルを受け取ったので、さらに一際。
そのサーベルを大きく振りかぶり、地面に突き刺して言う。
「こんな事をして、許されるとは思っちゃいねえが…。
ロウファ、お前にはその権利があるだろう?」
そのままペインは目を瞑った、するとさすがにロウファは叫んだ。
「だから、何なんだよ!?」
ロウファはレフィーユにもそう叫んだように見えた、だが彼女は黙って見つめたままだったので、あのしばらくの間は彼女の躊躇だったのがわかる。
そして、これは彼女の考えじゃない事も。
おそらくペインの考えだろう。
自分の締めくくりを、ロウファにさせようと言うのだ。
「卑怯だよ、そんな事をして許れると思って無い事をわかってるんだろう…」
「だが、俺はかつて、治安部の活動とはこういうモノだと思っている」
「えっ」
「敵は倒せ、それが治安維持につながり、それが必要なことだ。
こんな模範解答の中で、お前は治安部になるのだろう?
オレは犯罪者だ、ロウファ、そんなオレが許せるか?」
ロウファはサーベルをじっと見つめていた。
「お前の中には、拭い去れない怒りがある」
ペインは目を開けて周囲を眺めていた、そこには治安部もさることながら、警察も初等部も、保護者達もいる中、ペインは改めて言った言葉には、彼の覚悟があった。
「殺したいに決まっている…」
ロウファはサーベルを抜くと、ペインは目を瞑る。
「うわあああああ!!!」
その途端、ロウファは叫びながら…。
「…!?」
サーベルを放り投げて、腹部を殴りつけていた。
「ふざけるなよ…」
もう一度、殴る。
「何が治安部の活動だよ!!」
もう一度…。
「お前なんか、殺したいに決まっているだろう!!」
もう一度、泣き声で叫びながら。
「でもな、人を裁くのは治安部の役目じゃないんだ…。
…あくまでな、法で裁かないと意味が無いんだ。
すぐに殺してしまう、お前なんかと一緒にするな!!」
黙ってペインは受け止めていた。
ガードをする事を許されなかった一撃、一撃を彼はこう答えるだけにとどめていた。
「痛いな…」
そう言って、ペインはゆっくり歩き、通り過ぎようとした時にロウファの肩を一度だけ軽く叩く。
それだけをして、警察に一度、頭を下げるとロウファに言った。
「おい…」
その時だった。
「待つザマス!!」
声の主の正体をロウファは口にした。
「かあさん…」
「何をしているザマスか?」
ロウファはビクリとして緊張していた。
「ロウファちゃん、何をしているのか聞いているザマスのよ!!」
まるで周囲が見えてないのか、ミチコはロウファに近づき言う。
「ロウファちゃん、これはチャンスなのザマスよ。
敵に鉄槌を下すの、それだけで良いの。
さあ、レフィーユさん、もう一度、サーベルを…」
ミチコの顔が笑顔なのが安易に想像出来る中、レフィーユはさすがに作り出すことはしなかった。
誰しもが『終わり』を感じていた。
そんな中を、ロウファは言った。
「かあさん、もう…」
「お黙りなさい、ロウファちゃんがしっかりしないからでしょう!!
ただ人を斬り付けるだけで、コレは終わったの。
なんでそんな事がわからなかったザマスか!?」
ロウファはビクリとして動こうとしなかった。
それはまるで初めてロウファと戦った時のように…。
「もういいわ、十手でやってしまいなさい!!」
「貴様、いい加減にしておけ…」
レフィーユはさすがに怒りを見せていた。
「部外者は関係ないザマス!!」
「お前は、そんな事を周囲を見てから、言っているのか?」
彼女の言う事に、ミチコは辺りを見た。
そこには『やりすぎた』のが見て取れるように、警察と治安部員も全員がミチコと距離を縮めていた。
納得できない顔で見ていた味方と言えば、モンスターたちだけだった。
「な、何か、母親が息子の将来を期待してなにが悪いザマスか!?」
それでも退きもしないのはさすがと言ったトコロだろう。
「さあ、ロウファちゃん、戦うザマスよ!!
一流になるためには今、今、頑張らないと駄目なの!!」
だが、一向にロウファは動こうとしなかった。
俯いて歯を食い縛っているだけだった。
そんなロウファを見て、ミチコはとうとう言ってしまう。
「アンタに…、アンタにいくら掛けたと思ってるの!!」
もう言葉はいらなかった。
ミチコに一気に駆け寄り、彼女は無理やり振り向かせた。
「どけ!!」
その時、ペインがレフィーユの前に割り込んで…。
「ぶべらぁ!!」
ミチコを殴り飛ばした。
ようやく立ち上がるミチコに、歩み寄ったペインの足が見えた。
「ひぃ!!」
慌ててミチコは警察やレフィーユに助けを求めるように見る。
しかし、ペインの行動はあまりにも正しかったので、誰も動こうとしなかった。
「痛ぇだろ?」
ただみんなペインを見ていた。
「殴られたら、痛い。
傷つけば、痛い。
そんな中で、生きようとするのはもっと痛い。
今のてめえに、その痛みがわかるか?
ロウファはな、この痛み以上に傷ついているんだぞ?
そんな事も、わかんねえのか!!?」
ミチコの胸倉を掴み、さらにペインは殴ろうと腕をあげる。
「うええ~ん」
初等部の一人が泣き出した。
それが始まりだった。
一人、また一人、とうとう初等部の全員が泣き出した。
その中には助けを求めるように、母親であるモンスターの方を向いていた。
自分の手にしている通信は、励ます内容が入る。
「泣いたら駄目よ。
もう少し、頑張るの…」
だが、それ以上に耐え切れなかったのだろう。
数人が母親の元に走って行った。
「もう嫌だよ!!」
「そう言っても、頑張らなきゃ駄目なのよ」
「嫌だ!!」
その母親は何とか励まそうとするが、一言だけで一蹴されてしまう。
他の母親も同じ様だった。
「レフィーユさんが見てるの…ね…」
それでも泣き止まないので、彼女を見る。
しかし、レフィーユは言った。
「ふっ、子供を泣き止ますのは親の役目だろう。
そんな事も、わからんのか!?」
レフィーユの一喝に、大勢の泣き声が場を支配していった。
そんな中、不意に彼女と目があった。
お互いが終わりを感じたとき、彼女の一言は自分の気持ちだった。
「終わったぞ、ミクモ…」