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第七十五話

 自分が異変を感じ始めたのは、四人との戦いの最中だった。


 他の初等部の子供がぞろぞろとどこかに引き下がって行くので、不安がよぎっていた。


 だが、四人は戦いをやめる事はなかったので、対応が出来なかった。


 ようやく動き出せたのは、セルフィが通信を受け、イワト達が撤退をして、息をきらせたロウファと目が合ってからだった。


 ここには異常な事態がある。


 そのためかガトウの大声が一際大きく聞こえた。


 「いい加減にしてくれ!!


 今は危ないから、下がってろ!!」


 ほとんど叫びだった。


 「うるさいわね、そこをどきなさいと言っているのよ!!」


 モンスター達は、そんなガトウなど構う事無く、他の治安部と口論を始めていた。


 そこにはさすがにこの騒ぎを聞き付けた警察もやって来ている。


 最初は治安部が確保したファミリー達を搬送するのを手伝っていたが、モンスター達と治安部の口論を始めだすと、不味いと思ったのかモンスターを後ろから止めようとしていたが。


 「おどきなさい!!」


 どこかのタイムセールと勘違いしているのか、モンスター達は手を出して跳ね除けていた。


 よりによって警察相手にである。


 こうなれば公務執行妨害でやってしまえと、期待して見ていたが。


 「……」


 それは警察の方が後ろに下がって行ってしまう。


 無理も無い、公務執行妨害で逮捕しろというのに、相手は一般市民、それも大勢の子供の親を逮捕しろと言っているようなモノだった。


 警察にも面子があるのだ、今後に事を大きくする事を避ける事を選んでいた。


 「…ほら、あなたから、お願いするのよ」


 ここで自分が手にしていた通信機が、保護者達の通信と周波数が合う。


 自分が隠れていた場所は、ここではガトウが見えるが、その顔は真っ青にだったのが印象的だった。


 後方から、先に離れた初等部がやって来たのだ。


 「そこを通してください」


 どこぞの時のように初等部の声が一斉に揃って、ガトウに言っていた。


 「駄目だ、今は危険すぎる言っているだろうが!!」


 ガトウだけじゃなかった、ここにいる治安部男女が全員感じたのだろう。


 腕同士を絡めて、バリケードを作るのが見えた時、彼等にも身の危険が迫っていた。


 「…構う事ないわ、無理やり行きなさい」


 子供達は無理やり、ガトウ達のバリケードを引き剥がしに掛かっていく。


 はたから見れば、もともと体格差もあるので、このバリケードは崩れないと思うだろうが、


 「何、手を出すなって?」


 「そうだ、絶対に手を出すな!!


 手を出したら、ババアどもの思うツボだ!!」


 「ガトウ、くそっ、どうしろってんだよ!?」


 ミクモの通信機が、そんな声を拾う。


 子供達が無理やり通り抜けようと手を出すのに対して、堪えるだけになっていた。


 さらに騒がしくなったので、レフィーユの姿を探すがどこにも見当たらない事が自分にとって不安を的中させる。


 「武器で叩き伏せてやりなさい」


 そんな不安を…。


 最初は子供でも、人に刃物を向ければ危ないという思考があったのか、躊躇はあったのだろう。


 「ぐおぅ!!」


 しかし、ガトウの唸り声が響いた。


 「ガトウ!!」


 誰かが叫んで、辺りが騒然とした。


 そこには東方術で作られた鉄の棒を、ガトウに振り下ろした子供がいた。


 遠目から見てもわかるくらいにガトウは流血をしていたのが、その子供を震えさせる。


 それをガトウは見つめ、何か言っているのを通信機が拾っていた。


 「お前等、ホントはどういう状況かわかってるだろう。


 頼むよ、引き下がってくれ…」


 とうとうガトウは懇願するしかなくなっていた。


 「ガトウさん…」


 しかし相手はそれを理解する前に、


 「それじゃあ駄目だ」


 こう言ってしまうのだ。


 「で、でもお母さんが言っているから…」


 ガトウは、とうとう睨み付けてしまう。


 「ひっ…」


 治安部にもまだ耐えようとする姿勢を崩さない人もいる。


 それは、反撃しようする人がとうとう過半数を超えたかのような合図にも見えた。


 これ以上は、お互い怪我人が出る。


 そう考えて、ここに介入しようとした。


 「ふん、意外と情に流される人ね?」


 「セルフィさん…」


 すると空からセルフィが降りて来た。


 「言っておくけど、アンタの出たトコロで現場は混乱するだけよ?」


 「ですが、このままじゃ…」


 ハルバートを手にしているが敵意はないのだろう。


 「黙って見てなさい、アンタの出る幕じゃないわ」


 セルフィは目でガトウの方を差すと、彼に通信が入った。


 「何だって…」


 セルフィにバレない様に、法衣を被り直すフリをして、ミクモの通信機を調節しているとガトウが話している相手はレフィーユだとわかった。


 そして、彼の困惑する様子が、そこから伝わって来たが。


 しばらくして、レフィーユがやってきた。


 「レフィーユさん、お疲れさまでした」


 演じているのか、一斉に声を出して初等部は安堵していた。


 ペインの手に手錠が掛かっているからだろう。


 だが彼女も状況を見ていたのだろう、機嫌は良くなかった。


 「ホントに良いんだな?」


 その時、彼女の口が、そう動いたような気がした。


 それは彼女の手からゆっくりとサーベルが作りだしていた…。


 ペインはゆっくりと頷いた時。


 「!!」


 言葉じゃない言葉が一斉に場を埋め尽くす。


 彼女はペインに掛けられた手錠の鎖を斬ったのだ。


 現場は困惑して声も上げられなかった。


 そんな中をペインはゆっくりと歩き出す。


 この困惑は、ガトウを含め、治安部の全員が道を開け、初等部も道を開けるほどだった。


 そんな中で先に動いたのは警察官が慌てながらもペインを取り囲む。


 「手を出すのは、私が許さん…」


 だが、彼女は警察にサーベルを突きつけ、それを許さなかった。


 そんな中、ペインは誰かに聞くように話しかけた。


 「ロウファって、男はいるか?」


 不思議と大声ではないその声は聞き取れた。


 ペインは彼を探していた。


 それも囲まれている事を、気にしない様子でもう一度、はっきりと。


 「ロウファ、お前の友達を殺した。


 男は、ここにいるぞ?」


 言っている途中で、先に見つけたのだろう。


 罪を自覚しながら、そこに立っているロウファに言っていた。



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