第六十九話
「っしゃあ!!」
レフィーユの号令に部員達は動きを答えた。
それは訓練された動きであり、ファミリー達は彼女の号令に慌てていたのでわからなかったのだろう。
改めてそれを見て、ファミリー達は動揺を見せる。
それは三人で形成する治安部の三人陣形、それを見たファミリー達は苛立ちを見せた。
無理も無い、いつも使っている戦い方を真似られていると感じたのだろう。
しかし、レフィーユがこの陣形の中に混ざっていなかった。
それどころかさっきから動こうともしなかった、ファミリー達の強みになったのか、一部隊が治安部に切り崩しを図って飛び掛る。
ペインは二階からじっと見ていたままだったが、コレだけはわかった。
「不味いな…」
防御の上手い部員が、攻撃を一手に受け。
手の空いた部員が攻撃に参加して、まず一人を倒す。
そして、残った一人は確保に専念する。
他のファミリーがそれをみて助け出そうとするが、すでに遅く二人は確実に守りに徹しながらも三人がかりで搬送されたので、手が出せないでそのまま治安部達のいるであろう確保されていった。
それが始まりだった。
「かかれ!!」
ファミリーの誰かが叫ぶ、今度は一斉に治安部に襲い掛かる。
するとレフィーユは叫んだ。
「防御、前衛、守りぬけ!!」
この指示は遅い、しかし、彼女は昔から教えていた。
陣形は元々、防御のためのモノだと…。
だからこそ、指示より早く、防御形態が完成する。
そして、指示がいきわたった頃には、次の行動をみんなが理解していた。
「四人、確保!!」
退避の遅れたファミリーの数名に、今度は号令と共に治安部員が攻勢を見せる。
真似るようにファミリー達は守りを見せようとしたが、明らかに行動の遅れを見せ、さらに飛び掛るのは…。
四人で構成されている四人陣形、陣形変更のスピードが段違いだった。
「おらぁ、大人しくしろ!!」
今度は人数で押し潰され、あっという間に確保を成功させられた頃、ファミリー達は改めて理解する事になった。
レフィーユがこの攻勢に参加してない事が、自分達にとって有利にではなかった事を。
「ふっ、戦闘力は、統率力と同意ではない」
彼女はファミリーの動揺を読んだのか、そう答え、一度、静かになった治安部員に視線を送っていた。
その彼女の視線に、意図を感じたのか部員達は自然に頷く…。
彼女もその部員達の意図を感じ、大きく頷き、サーベルを握り締めていた…。
それはまるでどこかのドラマのワンシーンのような雰囲気を思わせる。
そんな中を彼女は、叫んだ。
「かかれぇ!!」
最初にあったのは、静寂だった。
しかし…。
嵐の前の静けさに、それは相応しかった。
「うおおお!!」
気声に呑まれたファミリー達は、完全に後手に回る。
もう彼女の優位は揺るがないだろう。
しかし…。
「三人か…」
レフィーユの顔は少し曇っていた。
「イワト、サイト、ロウファ、そして、セルフィが混ざって四人陣形。
皮肉だな…」
また、この呟きは治安部員の叫び、ファミリー達の声にかき消されていた。
『この戦いはお前に捧げたい』
そう誓って望んだ展開だった。
しかし、この戦いでは彼は悪と思われてしまうだろう。
そんな事はわかっていたが、どうしてもやりきれないでいると…。
「レフィーユ…」
その時、ペインの声がはっきりと聞こえ彼がずっとこちらを見ていた事に気が付く。
そのまま、近くにある部屋に入っていくのを見ていると、様子を見ていたガトウが答えた。
「さて、ここからはオレの出番だな…」
「ガトウ?」
「なあ、レフィーユさん、行ってくれないか?」
するとガトウの言った事が聞こえたのか、部員達が彼女を見ていた。
「俺たちも見せてやらないといけないんだ。
これが白鳳学園、レフィーユ・アルマフィの治安部というのをな!!」
そして、ガトウは叫んだ。
「やれるな、お前等!?」
その気合に答えるように部員達は叫ぶ。
「っしゃあぁぁぁ!!」
雄たけびがこの現場を支配する。
そんな中、レフィーユはペインがいた二階を見上げて頷いた。
「ガトウ、ここは任せるぞ…」
ヒラリと飛び上がり、柵を乗り越えたレフィーユを見送って、ガトウはこう言った。
「…華麗な事だ。
でも、無茶はしないでくれよ…。
じゃないとアイツが、悲しむからな」