第六十八話
「そうか…」
レフィーユは通信を切るとつい笑っているとガトウが聞いて来た。
「二人は何で来ないんだ?」
「さっきセルフィに連絡を取ったら、二人とも初等部の護衛にまわるそうだ」
「何でまたそんな事を?」
ガトウは一旦、驚きもしたが思い当たる節があるような表情をしていた。
「アラバか…」
「ふっ、イワトは子供好きだったのを知っていたアラバに、ロウファと戦うことになったミクモを案内させるように気遣っていたからな。
そして、サイトは初等部が気に入らなかったから、実力を行使しようと、力づくで物を言わせようと息巻いていた。
だが、最後まで止めていたのも…」
「アラバだったな」
ガトウは大柄な身体でため息をつくと、レフィーユに言う。
「だが、二人で大丈夫なのか?
実際、魔法使いも現れてる。
初等部だって、言う事を聞くかどうかわからんぞ。
その中でロウファがいたとしても、あの状態じゃ今度こそ…」
「ガトウ、正直な話、私はロウファにやって来てほしいと思ってるよ」
ガトウは困惑を見せていたが、レフィーユは言った。
「確かに戦いに迷いを生じた状態で、戦おうとすればそこに生じた災いは自分の身に降り掛かるように出来ている。
しかし、治安部のリーダーが言う台詞ではないが。
戦える人間は戦いの中で、迷いの答えを見つけ出さなければならん」
「だが、相手が悪い、相手は魔法使いだろう。心配じゃないのか?」
「確かにな。戦ったトコロで、ロウファは苦痛に見舞われる。
見てはいられないだろう」
「苦痛?」
「そうだ、一人の強敵に対して、多数で攻めようとする時、お前はどんな戦術を取る?」
ちらりとガトウは、ファミリーと治安部の様子を見る。状況はやられてはやり返すと言った状況が続いていた。
「いくら強敵と言っても、所詮は人間だ。
持久戦に持ち込めば、本来なら勝ち目くらいはある」
「ふっ、『本来なら』か、そんな言い方をするのは魔法使いだからだろう?
あの男のスタミナ、魔力量は私を凌駕しているからな。
その戦法は通用しないと言っても良いだろう。
だが、この戦法は有効な手段、それ故に取らざるおえなくなる。
その時に『苦痛』に見舞われるだろう。
持久戦、ミクモとの戦いに似て来るようになるのだからな」
「なら、どうして放っておく?」
「今の戦い意味を知ってほしいからだ」
レフィーユは割れた窓を眺めていた。
ガトウはまるで大きく割れたガラスにしか見えなかったが、彼女は言った。
「…心配するな、セルフィも向かっている。
通信をしなければ、ミクモが死ぬ事はなかったのではないのかとな。
その責任を感じて、魔法使いの前に立ちふさがるだろう」
そして、彼女はため息を付いて。
「厳しいものだな悪党というのは…」
そんな呟きをもらしていた。
「そうだな、だから、そんな悪党どもに、治安部っていうのを見せてやらなければな」
それを聞いたガトウはそう言っていた。
「ふっ、そういう意味じゃないのだがな」
不幸にもガトウは、この呟きを聞き逃したが、レフィーユはガトウをどけて前に出ると叫んだ。
「よし、訓練の成果、見せてやれ!!」
一瞬、周囲が静まり変える。
だが、それは本当に一瞬だった。
「っしゃあ!!」
部員独特の揃った気声に、ファミリー達は怯み、彼女は叫ぶ。
「確保式、三人、揃え!!」