第五十九話
「少し、お前に落胆している」
屋上にて、彼女はそう言った。
パーティーは終わりに近付いていた事もあったが、やはり、周囲はやはり気に入らない雰囲気が自分をそこまで追いやっていた。
だがレフィーユは、黙って着いてきてくれたが、そこから吹いてきた風を浴びながらそんな一言を言い放っていた。
「漆黒の魔道士は、子供を利用する輩を許さないという。
だったら、お前にはペインと戦う道理がある、攻め込んでしまうと思ったが…」
「まるで、ミサイルのスイッチみたいですね」
「何のための治安部員の出動遅延行為と開いたと思っている。
少なくとも私は、それを信じていたのだがな?」
先ほど出入りしたドアには数人の気配に対し、レフィーユは声が届かない距離でそんな事を言う。
もうしばらくすれば、セルフィがやってこの下からだろうが、自分は先ほど拾い集めた資料を眺めて答えた。
「私じゃ、駄目なんですよ」
レフィーユがドアの鍵を閉じようとすると、さすがに数人の治安部員が止めに入ったが、睨みつけられでもしているのだろうか、ゆっくりとそのドアは閉じて、カギを閉めるとレフィーユは聞いて来た。
「どういう事だ?」
「あの日の夜からロウファ君は、何をしているか知ってますか?」
「いや?」
「黙々と走ってましてね。
さすがに延々と走り続ける事なんか出来ないから、ちょうどバテたトコロが私の部屋の真下でして…。
窓から彼に聞くと、どうやら知っていたようです」
「ミクモのトレーニングの事か?」
「はい…。
正確には、ミクモ君がいつもやってる日課です。
ミクモ君の考えが少しでも、わかるかも知れないからという理由で。
夜を徹して、多分、今も…」
「よく、治安部に捕まらなかったものだな?」
「いえ、みんな触れなかったのではないのですかね。
イワトさんから、そこら辺は聞いてましたし…」
「ふっ、なるほど、どおりで苛立つワケだな」
「ですが同時に、これ以上、私は関わってはならない問題なんだと思いました。
レフィーユさん、貴女がやるべきなんです」
「ふっ、調べるという行為を取り上げられたというのにか?」
「だから、ですよ。
私は警察の能力は低いとは思ってません、ですが、こんな解決の仕方は誰も望んでませんよ。
私も、ここで待ち構えている治安部も、ロウファ君、多分、ミクモ君も…。
でも、それでも治安部の在り方を子供達に見せてあげなければいけない。
それは貴女にしか出来ない」
屋上にある柵に手を掛けながら、この建物の入り口を見ると、セルフィが見えた。
もう少しすると彼女は自分の能力で、ここまで上がってくると思った。
「ここまでよ!!」
そんな叫びが聞こえた瞬間、自分は闇の法衣を思い切り広げた。
完全な目くらましに、セルフィは視界を奪われ。
彼女は驚愕をした。
忽然といなくなったのだ、魔法使いも、自分の姉も…。
「どうやって?」
建物が騒がしくなり、治安部の駆け回る足音が響き渡っていた。
だが、ここは見つけられるはずがなかった。
ヨウが特別に用意してくれた、自分の隠れ部屋なのだから…。
闇で床の石畳をめくり上げて入り、一見では、壁にしか見えない出入り口の構造の部屋の中で、レフィーユが飲み物を持って来てやってきた。
「ふっ、そういえば、初等部の生徒に何も教えてやれなかったな…」
床に座り込んでいた自分の隣に座り、
「…が、私が納得できると思ったら大間違いだ」
何故か、睨み付けれてしまった。
「すまんな、私は子供達のために、活躍すればいいのかも知れない。
しかし、お前は子供達のために何をするつもりだ?」
沈黙が足音と掛け声を響き渡せてしまったがレフィーユは呆れを、答える羽目となった。
「長い付き合いというのは、嫌なモノですね」
するとレフィーユは、グラスに飲み物を注ぎ、こちらに寄越して言った。
「だが忘れないでほしい。
私はお前のその正しさを知っている…」
もう一つのグラスに注ぎ、彼女は誓った。
「そして、この戦いは、お前のために捧げたい」
辺りは騒がしく、治安部の声も響き渡る。
そんな中での誓いは、普段の彼女から格好の付くモノではなかった。
でも、そんな誓いに自分は、しばらくここにいようと思った。