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第五十四話

 

 「き、さまぁぁぁ!」


 レフィーユが感情任せにサーベルを作り上げて、ペイン目掛けて突っ込んで行った。


 「おい、人質の確保を急げ!!」


 ファミリーの幹部が指示を出し始めるが、


 「どけぇ!!」


 レフィーユはファミリー達に突っ込んだ様を見た途端…。


 「おいおい、冗談だろ…。


 あの女を止めるのが先だ、急げ!!」


 人質を取ろうとした行為が判断ミスとなるほどの猛攻が、ペインに指示を変えさせた。


 そんな中、ロウファは未だに状況が掴めてないのか呆然としていた。


 ペインは視線を向ける事無く、ファミリー達に指示を出した。


 「おい、退くぞ?」


 「はあ、何を言ってるんだ?


 人質はどうするんだよ?」


 「レフィーユを見ろ、このままじゃ、アイツ一人に怪我人が出るぞ?」


 「だがな!!」


 幹部がペインの釈然としない態度に、理由を聞こうとしたが…。


 多節鞭を突きつけられて、これ以上は聞けなかった。


 「不愉快なんだよ…」


 そう呟いて、さっさと車に乗ってクラクションを鳴らした。


 するとそれが合図だったのか、ファミリー達は倒された仲間を回収して、レフィーユの前から逃走を図っていった。


 そこでようやく冷静になれたロウファは、彼女の名前を呼んだ。


 「レフィーユさん」


 こっちに駆け寄ってきたので、彼の顔に笑顔が見えたが、レフィーユはそのまま彼を通り過ぎて、倒れたミクモの様子を見てすぐさま通信を入れた。


 「私だ、ミクモがやられた。


 …そうだ、急いでくれ!!」


 「レフィーユさん、ミクモに構わず、ボク達でペインを追いましょう」


 通信の途中、レフィーユに向かってロウファは言うが、レフィーユは構わず通信を続けるので苛立つようにロウファは言う。


 「レフィーユさんは知らないのかも知れませんが、ミクモの付加能力は『キズの再生』です。


 この程度のキズは、すぐに治りま…」


 レフィーユはロウファをずっと睨み付けているのに気が付き、ロウファは一旦黙った。


 そんな中、救急車のサイレンが聞こえていた。


 彼女も搬送を手伝い一緒に車両に乗り込んで、そこにはロウファだけが残された。


 集中治療室に入る事になるのに時間は掛かる事はなく、病院に着いても揺さぶられたせいか、


 「……」


 ミクモがゆっくりと目を開けて気が付く。


 「気が付いたか?」


 「ここは?」


 「救急車の中だペインの一撃をくらったお前は気絶して、今、搬送中だ」


 「気絶…そうだ、ロウファは?」


 「お前が庇ったおかげで大丈夫だ。


 よく頑張ったな」


 それを聞くとミクモは心底、安心したのだろう。


 「よかった」


 そう呟くように言って、ミクモはレフィーユの感情に気が付いたのかこう言った。


 「ロウファの事は、あまり怒らないで下さい。


 ロ、ロウファは焦っているだけだから」


 「だからと言って…」


 そんな態度にレフィーユは、正直、納得が出来ずにいた。


 しかし、ミクモは手を添えてレフィーユを見つめてレフィーユに言った。


 「怒らないでほしいんだ」


 『患者に障ります』とナースに言われて、ミクモを見送ると深夜の病院が騒がしくなった。


 「てめえ、何様だ!?」


 ロウファは、レオナに胸倉を掴まれていた。


 「こんな事になるくらいわかってただろうが、何で守ってやれなかったんだ!?」


 子供相手に怒りをぶつけようとするので、イワトが軽くなだめに入る。


 しかし、イワトも同じ気持ちなのだろう、あくまで『軽く』である。


 そのためかロウファは言い返した。


 「ボクは間違ってないと思います」


 「お前が現場に出なけりゃ、ミクモってのが、こんな目に会わなかったんだろうが!?」


 「ボクは治安部に入り、治安維持を目指す身です。


 多少の覚悟は出来てます。


 ボクにからしてみれば問題があったのは、先輩達の方だと思いますが?」


 ロウファはガトウの年上の睨みに怯む事無く、こう言った。


 「どうしてボク達の能力(ちから)を信じてくれないのですか、人手が足りないのなら、僕たちだって協力したのに。


 貴方達がいつまでもそんな事だから、レフィーユさんの足を引っ張っていると思いますよ?」


 「ああ、何が言いたいんだよ!!


 俺たちは出来る限りやってるだろうが!!」


 「じゃあ、言わせてもらいますが、どうしてレフィーユさんは情報封鎖をしなければならなかったのですか?


 貴方達がしっかりしないから、レフィーユさんはご自分の経歴にキズが付くようなマネするんですよ!!」


 この時、ここにはロウファの味方はいなかった。


 「ふっ、ここは病院だ、少し静かにしてもらえんだろうか?」


 そして、この騒ぎはおそらく聞いていたであろうレフィーユがそこにやって来た。


 するとロウファは彼女の前にやって来たので、レフィーユはロウファに聞いて来た。


 「…無事のようだな?」


 「はい、日頃の訓練の成果です。


 残念ながらスーパーペインを逃がしてしまいましたが、ボクは勇気を持って頑張りました!!」


 基本どおり、敬礼を一つしてロウファは胸を張って答える。


 まるで言わされてるかのような雰囲気がイワト達にも感じ取れたのだろう。


 いつもならレフィーユの怒りが飛ぶ。


 誰しもが思った。


 「…よく頑張ったな」


 だがレフィーユが言った台詞に、誰しもが驚きを隠せなかった。


 「はい!!」


 それを知らずロウファは喜びを隠せない様子だった。


 「では、私も報告をしなければならないようだな」


 「ちょい、レフィーユさん!!」


 まるでいつもの警察関係者、目上の者に『報告』を思わせるようなレフィーユの態度にイワトが迫るが、レフィーユは構わず口を開いた。


 「…以上をもって、今回は配備は問題がなかったと思うが、ミスが原因でスーパーペインを逃がしてしまったのは、悪い展開だと思っても良いだろう…。


 しかし、大下学園の協力もあり、大した怪我人も出す事は無く…」


 それを聞いたロウファはまるで自信に満ちていた。


 「……」


 しかし、次に彼女が言葉を言った時、場の空気が凍りついた。


 というより、一瞬、彼女が何を言ったのかわからなかったのが多かった。


 ロウファも『は?』とキョトンとしていた。


 それがわかったのか、彼女はもう一度『報告』をした。


 「本日、アイサカ・ミクモの死亡が確認された」


 間違いなく彼女は、そう言うが、ここにいる全員の思考が止まっていた。


 「ミクモは…そこにいる…」


 レフィーユはロウファにミクモのいる場所を教えると、ロウファだけではなくイワト達も後を追うように駆け出していた。


 だがレフィーユがそこに辿り着くと、ロウファは笑顔だった。


 「レフィーユさん、これは一体…?」


 イワトが思わず、掴みかかるがロウファは言った。


 「だって、ミクモの付加能力って、キズの再生なんですよ。


 死ぬ訳ないじゃないですか!!」


 ロウファはミクモを指を差して言う。


 「また、そうやって、ボクをミクモと騙す気なんですか?」


 一人、現実を受け止められずにいるロウファを見て、ガトウがイワトをなだめに入るのを見てレフィーユは言った。


 「急に容態が悪くなってな。


 私が戻った時には…」


 ロウファは、また馬鹿にしているのかと思いもしたのだろうか途中で遮って叫んだ。


 「だって、ペインの攻撃はボクだって耐えれたんですよ!!」


 まだ顔に笑みがあった。


 そんな時、駆け込むような足音が聞こえた。


 「アラバ、どうしてここに!?」


 先に反応していたのはイワトだった。


 突然の登場だったため、様々な勘繰りをされる瞬間でもあったが、


 「私が呼んだ」


 そうレフィーユは言うと誰しもが信じる瞬間でもあった。


 それはロウファにとっても救いでもあったのだろう。


 「ほら、やっぱりこの人が絡んでいたんじゃないですか」


 ロウファは笑っていたが、アラバはここがどんな状態なのか理解するのに時間は掛からなかった。


 「この…」


 誰かが掴みかかろうとしたが、アラバはただロウファ肩を掴んで引き寄せたので、それは出来なかった。


 ロウファには後ろ、周りのみんなには俯いた状態のため、誰もアラバの顔を見る事は無かった。


 「人は死ぬのですよ…」


 しかし、最も彼は残酷な事を言おうとしているのだと誰しもが思った。


 レフィーユは天井を見て落ち着こうとしている。


 「また、そんな事を簡単に言うんですか?」


 肩を掴まれたままのロウファは、まだ笑顔だったが、明らかに動きが止まる。


 「そうですね、簡単にですね。


 ですが人は、簡単に死ぬんですよ。


 例えそれが『痛み』でも…」


 誰も動こうとしなかった…。


 おかげで、ようやくロウファは気が付いたのだ。


 あの『プー』という音が…。


 言うまでも無く、病院によくある機器、心電図である。


 「あ、ああ…」


 それを見たアラバはただ黙ったまま、


 「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 絶叫に耳を傾けていた。 

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