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第五十話

 「馬鹿にして…」


 「人に致命的なダメージを与えれば、人間、馬鹿にも出来るモンだ」


 あからさまに嫌味を言われたのが、ロウファの癪にさわったが確かに言われた通りだったのだろう。


 先ほどの激痛でどこか痛めてないかと、ロウファは自分の身体を確かめていたのでペインは言った。


 「痛かっただろ?」


 はっとしながらロウファは構え直すが、ペインは爆破された橋を眺めていたので言い返した。


 「今度、来てみろ。


 ボクはそれに耐えて、お前を討ち取ってやる」


 「威勢だけは良いな。やめとけ、お前じゃ、俺には勝てねえよ」


 「何を証拠に…っ!!」 


 ロウファは再度、挑みかかろうとしたのか姿勢を低くした。


 だが、それっきりだった。


 ペインがただ自分の武器、多節鞭を突きつけただけ。


 それだけで動けなくなってしまったのだ。


 「俺の能力を知った人間は、敵味方だろうが、みんな同じような顔をするもんでな。


 『痛み与えるなんて大した事じゃない』


 誰だって、最初は思うんだろうな。


 お前のように…。


 『痛みに負けない』


 何て言われた事もあったっけな。


 だが実際、痛みってのはどうにも出来ないモンだ。


 例え訓練したトコロでな」


 ロウファの表情は不思議と、さっきファミリー達が彼を警戒した表情に似ていた。


 しかし、当然、ロウファには解るわけが無く。


 「でも、訓練は無駄にはならないはずだ。


 ボクはそんな苦しい訓練を受けてきたんだ。


 お前なんかに負けるわけが…っ!!」


 「人間は『痛み』を、克服出来るように出来てない」


 ロウファの反論は、途中で遮られてしまった。


 「お前『苦しい訓練を受けてきた』と言ったな。


 訓練の過程で苦しい思いを確かにしただろうが、ここで成果を挙げれませんでした。


 それで、もう一度、その苦しい訓練を味わいたいと思うか?」


 「そ、それは…」


 ロウファの脳裏に、今までの訓練の様子が映ったのだろうか戸惑っていた。


 それを見たペインは、呆れていた。


 「そうだ、誰も辛い思いなんかしたくない。


 だが言っておくが治安部というのは、その繰り返しの連続だ」


 そして、ゆっくりとペインは身構えて、ロウファに言い放つ。


 「それに答えられないという事は、お前、治安部に向いてないよ」


 明らかな挑発だった、しかし、それを聞いたロウファは目を見開き。


 「知った口を言うな!!」


 怒り任せにロウファは、十手から衝撃波を…放ってしまった。


 「…さっき言ってなかったか、お前の優位なのは、お前が何をして来るかわからない事だって?」


 十分に警戒していたペインは、あっさりと衝撃波を避けて、しばらく観察した後にロウファに言った。


 「ベーシックだからか、どおりでお前は自分の実力を勘違いするわけだ」


 とうとうペインはロウファに興味をなくしファミリー達に命令した。


 「おい、コイツを捕まえろ」


 「大丈夫なのか?」


 「心配するなけん制、対空のベーシックだ。


 完成度だけが高いだけだ、全員で掛かれば怖くない」


 「待て、ペイン!!」


 屈辱的な事を言われたロウファは叫ぶが、ペインは冷徹に言った。


 「これ以上、時間を掛けるワケにはいかねえだろ。


 お前は大事な人質なんだからな」


 そこでロウファは、ようやくペインの役割に気付いた。


 彼は自分のために相手をしたのではなく、ロウファ自身の能力を見るために相手をしたのだ。


 自分なんか元々、眼中になかったのだ。


 興奮していたのは自分だけ、その事にようやく気付き、ロウファは怒りが込み上げていた。


 もう考える暇すらなく飛び掛る。


 「うわああ!!」


 止めようとしたファミリーの一人を叩き、ペインに至近距離まで近づく。


 しかし、ペインの顔は驚く様子も無く…。


 「一、二度の戦闘を経験しただけで、一人前と間違えるハンパ者が…」


 そのまま左手の平から防御本能独特の火花を軽く散らせながら、ロウファの十手を掴む。


 その様を見てロウファは驚きを隠せなかったが、すぐさま緊張したのは彼の右手にある多節鞭が見えたからだった。


 しっかりとロウファにその事を見せ付けたペインの一撃に、ロウファは目を見開いて防御本能を発動させる。


 まるで座禅をする相手に対しての一撃は、ロウファを倒すには十分だった。


 「防御本能は、目で追ってダメージを防ぐ。


 基本は出来ているようだな。


 タイミング次第で刃物が身体の上を走っても、切れる事を防いでくれる便利なモンだが、


 俺の付加能力は、その『痛み』に武器の威力分『痛み』を上乗せ出来る。


 だから『痛みを与えるモノ』なんてあだ名も付いたが…。


 まあ、聞こえてないか…」


 彼の左手からゆっくりと十手が消えていた。


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